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サステナブルARTICLE 182

リジェネラティブツーリズムを宿に取り入れる — 訪れることで地域が良くなる滞在アイデア

サステナブルが「害を減らす旅」なら、リジェネラティブは「訪れることで地域が良くなる旅」。パラオは入国スタンプを誓いの書に変え、フランダースは観光の目標を「成長」から「繁栄」に変えました。宿でできる5つの設計を集めました。

リジェネラティブツーリズムを宿に取り入れる — 訪れることで地域が良くなる滞在アイデア
2025.01.30Sustainable5分で読めます

サステナブル(持続可能)とリジェネラティブ(再生)は、似ていて方向が違います。サステナブルが「できる限り害を減らす」ことなら、リジェネラティブは「訪れることで、その場所が前より良くなる」こと。足跡を小さくするのではなく、足跡が土を肥やします。この記事は、宿がその発想に移行するための、2つの国の発明と5つの小さな設計の話です。

パラオ — 入国スタンプを「誓いの書」にした国

太平洋の島国パラオは、2017年12月、世界で初めて入国スタンプを「誓いの書」に変えました。すべての入国者は、パラオの子どもたちに宛てた約束 — 「優しく歩き、慎ましく探検し、与えられないものは受け取らず、波に消える足跡だけを残します」— に署名してから入国します。人口2万人ほどの国に年間16万人以上の観光客が訪れる中、観光の害から国を守る仕組みです。誓いの背景には、資源の取りすぎを禁じる休止の慣習「ブル」というパラオの伝統があり、違反には罰則も定められました。

注目すべきは、その書きぶりです。禁止のリストではなく、子どもたちへの約束。パラオはハウスルールを「誓い」に書き換えたのです。宿にもそのまま使えます。禁煙・静粛・持ち出し禁止の注意書きを、「この集落に滞在する私たちの約束」という形に書き直しましょう。守らせる看板が、参加の挨拶に変わります。

CASEパラオは2017年12月、世界で初めて入国スタンプを「誓いの書」に変え、全入国者がパラオの子どもたちへの約束に署名して入国する仕組みを作った — 背景には資源の取りすぎを禁じる伝統的な慣習「ブル」。禁止の規則を「約束」に書き換えた発明である。

フランダース — 「成長」をやめた観光局

もう一つ、方向の違う発明があります。ベルギーのフランダース地方政府の観光局は2018年、「Travel to Tomorrow」というビジョンに舵を切りました。観光の目的を、到着者数を増やすことから「住民も事業者も訪問者も、共に繁栄すること」へ移す転換です。案内役を務めたのは、リジェネラティブ観光の先駆者アンナ・ポロック。フラマン語ではこの転換を「成長から繁栄へ(van groeien naar bloeien)」と呼びます。観光の成功を、人数ではなく地域のしなやかさで測ります。世界の観光局がまだ数を数えていた時代に、数を数えることをやめた地域があるのです。

CASEベルギーのフランダース観光局は2018年「Travel to Tomorrow」で、観光の目標を到着数の成長から「住民・事業者・訪問者の共通の繁栄」へ転換した — リジェネラティブ観光の先駆者アンナ・ポロックが案内。「成長から繁栄へ」が合言葉。

宿の翻訳はこうなります。宿の成功を稼働率だけで測らず、「地域に残った金額」「地域との顔の見える関係」でも数えます。その二つを増やす判断が、リジェネラティブな経営です。

「泊まるだけで地域が良くなる」5つの設計

  • 仕入れの地元化と公開 — 朝食・備品の仕入れ先の顔ぶれを、月に一度でも公開しましょう。「今月の仕入れは〇〇から」の一行が、地域への回し方を変えます。
  • 手伝う滞在 — 祭りの準備や農繁期に、希望者だけが参加する「手伝う午後」を日程表に載せましょう(ボランツーリズムの記事で詳しく扱います)。
  • 朝15分の清掃 — 浜や集落の清掃に、朝の15分だけ参加できる時間を作ります。義務ではなく、選択の形で。
  • 売上の一部を地域へ — 宿の売上の一部を地域の祭りや保全の基金に回しましょう。ただし額と使途を公開する透明性が条件です。
  • 「世話する木」 — 記念植樹の木は、植えて終わりではなく、次に来たゲストが様子を見る「世話する木」にします。訪れるたびに地域の木が増え、育っていきます。

再生を語る責任

  • 貢献の押し付け禁止 — ゲストは義務を買いに来ません。清掃も手伝いも「参加できる」という情報として置きましょう。リジェネラティブは強制と相性が悪いのです。
  • 「地域のため」の名乗りの条件 — 地域の合意がないまま「地域のため」とは名乗りません。祭りや基金への関わりは、先に地域と話すのが順番です。
  • 数字の誇張 — 「宿泊費の全額が地域に残る」のような書き方は、嘘でなくても誇張です。割合は概算として明示しましょう。
  • 帳消しにしない — 貢献があるからといって、観光の負の側面が消えるわけではありません。パラオが罰則まで用意した誠実さが、誓いの信用を支えています。

InnBuddy VIEW

パラオは入国を約束に変え、フランダースは成長を手放して繁栄を目指しました。リジェネラティブとは、宿が地域に残すものを「金額と関係」で数え直すこと。まず小さく、今月の仕入れの地元の顔ぶれを一行で公開することから。泊まるだけで地域が良くなる宿は、そういう一行の積み重ねでできています。

この記事はアイデア共有を目的としています。地域との関わりや基金の設定は、地域の合意と透明性が前提です。収益の使途を公開できない場合は、対外向けの数値は書かないでください。

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