ゴミ捨て場が収益を生む島:ソネバ・フシが90%を捨てない理由
モルディブの離島リゾート、ソネバ・フシには、ゴミ捨て場の代わりに「エコ・セントロ」がある。ソネバは廃棄物の扱いを利益を生む部門と位置づけ、グループ全体でリサイクル率を27%から90%に上げた。ただ、本人たちがいちばんの教訓に挙げたのは、リサイクルではなく、そもそも捨てないことだった。
たとえば、夕方のガラス工房。砕かれた空き瓶が炉の中で溶け、職人の吹く息で、ゆっくりと器の形になっていく。数日前まで、どこかのリゾートのテーブルに置かれていた瓶だ。
海が、ゴミ捨て場だった
ソネバは、3つのリゾートで計400室を運営する会社だ。ソネバ・フシは、創業者のソヌとエヴァ・シヴダサニ夫妻が1995年に開いた最初のリゾートで、バア環礁の島にある。
離島では、地元で手に入る食材が限られ、ゴミを処理する仕組みもほとんどない。そのため、食材は輸入し、食べ残しは海に捨てるのが当たり前だった。ソヌは、モルディブの島々では海が昔からゴミ捨て場だったと語る。ゴミのほとんどが生ゴミだった時代はまだよかった。いまは、それがペットボトルやプラスチックの包装、アルミ缶になっている。
「ゴミの部門」を、利益の部門に
ソネバは、廃棄物を資源とみなし、2025年までに埋め立てゼロと、すべての生ゴミの堆肥化を目標に掲げた。そのための仕組みが「ウェイスト・トゥ・ウェルス(廃棄物を富に)」で、各リゾートに廃棄物の拠点「エコ・セントロ」を置いている。
関わるのは、3つのチームだ。
- シェフは、菜園でとれるものに合わせて献立を変え、植物性のメニューを増やした
- エコ・セントロのチームは、パーマカルチャーの考え方を学び、できるだけ多くを再生に回す。固形廃棄物の最大70%は、生ゴミと庭のゴミだ
- 菜園のチームは、堆肥や段ボールを土づくりに使い、木のゴミは炭(バイオ炭)に変える
菜園の中には、植物性の料理を出すレストランもつくった。客は、野菜が育つ様子を見ながら食事をする。
結果は、ソネバ全体でこうなった。リサイクル率は2009年の27%から2021年には90%へ。生ゴミは100%堆肥にし、2009年からの累計は4,200トン。野菜の生産額は、2011年の年1万6,000ドルから、2021年には年20万ドルに増えた。ウェイスト・トゥ・ウェルスが生み出した価値は、累計で300万ドルになる。
成功の理由として、ソネバは廃棄物の扱いを「利益を生む部門」と位置づけたことを挙げる。ゴミの部門が稼ぐ部門になると、機械を入れるための投資を説明しやすくなった。
いちばんの教訓は「捨てない」こと
ただ、ソネバが学んだいちばんの教訓は別のところにあった。堆肥化ばかりに目を向けると、生ゴミを出すことに鈍感になってしまう。だから、食べ物を必要もなく捨てることは許されない、という考えに立ち返り、まず減らすことに力を入れた。
生ゴミを調べ、重点を絞った。傷ませないこと、一皿の量を調整すること、ビュッフェに並べる量を減らし、必要になってから追加すること。その結果、生ゴミは2019年と比べて半分になり、堆肥づくりもずっと楽になった。植物性の料理はメニューの50%まで増え、牛肉はメニューから外した。
ソネバで社会・環境を担当するアーンフィン・オイネスは、こう助言する。「まず、ゴミを量ること。次に、なぜ出るのか、どうすればそもそも減らせるのかに目を向ける。そのうえで、できるだけリサイクルや堆肥化に回す。最後に、ゴミから価値を生む方法を探す。そのほうがずっと面白くなる」。
瓶を、器に
ガラスの空き瓶は、2015年にソネバ・フシに開いたアートとガラスの工房で生まれ変わる。材料は、ソネバのほか、モルディブの他のリゾートから出た廃ガラスだけだ。ソヌによれば、バア環礁のリゾートだけで、毎月5トンを超えるガラスのゴミが出ると見積もられている。
工房では、ガラスを砕き、炉で溶かし、吹きガラスや鋳造などの技法で作品にする。もとの瓶よりずっと美しく、価値のあるものに変えるのがねらいだ。ソヌは「ソネバ・フシでは、廃棄物の約90%を再利用している」と語る。
輸入したボトル入りの水は、2008年に全リゾートでやめた。いまは水をろ過し、ミネラルを加えて、繰り返し使えるガラス瓶に詰めている。
島の外へ
2019年1月、ソネバは近くの島々とともに「ソネバ・ナムーナ」を立ち上げた。ナムーナは、モルディブの言葉で「模範」を意味する。
近くのマールホス島には、海水を淡水にしてミネラルを加え、ガラス瓶に詰める施設をつくった。島の議会を支援して、リゾートと同じ方式を入れたものだ。さらに、ソネバが資金を出したエコ・セントロを開き、圧縮機、木材粉砕機、ガラス粉砕機をそろえた。2020年2月、マールホスはモルディブで初めて、ゴミの野焼きをやめた島になった。同じ年、近くのダーラヴァンドゥー島とキハードゥー島も後に続いた。
日本の宿に置き換えると
オイネスの順番は、そのまま小さな宿でも使える。まず量る。次に減らす。それから堆肥や再利用に回し、最後に価値に変える。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿で生ゴミが1日20kg出るとする。年に7.3トンだ。ソネバが使った換算(生ゴミ1kgを堆肥にすると、CO2が0.12kg減る)を当てはめると、堆肥化で年に約0.9トンのCO2が減る。一方、処理費を1kgあたり40円とすれば、生ゴミの処理に年約29万円かかっている。ソネバのように生ゴミを半分にできれば、堆肥にする量も処理費も半分になる。最初の一歩は、ビュッフェの大皿を一回り小さくすることかもしれない。
ゴミ捨て場が収益を生む島で、いちばん大事にされていたのは、ゴミを出さないことだった。
持ち帰れる知識
- 廃棄物の扱いを「利益を生む部門」にすると、設備投資を説明しやすくなる
- 堆肥化に頼ると、生ゴミを出すことに鈍感になる。先に減らす
- 生ゴミの堆肥化によるCO2の削減は、ソネバの換算で1kgあたり0.12kg(2009年からの累計で500トン、全廃棄物で1,220トン)
- ウェイスト・トゥ・ウェルスが生んだ価値は累計300万ドル
宿で考えられること
- 1週間、生ゴミを量って記録する
- ビュッフェの盛り付け量を減らし、必要になってから追加する
- 残った生ゴミの行き先(堆肥、菜園)を一つ決める
事業・予約への接続
ゴミの部門を、稼ぐ部門として扱う。ソネバでは、野菜の生産額が年1万6,000ドルから20万ドルに増え、菜園の中のレストランやガラス工房が、泊まる理由そのものになっている。
Sources / 参考情報
- One Planet Network(英文) - ソネバの事例:ウェイスト・トゥ・ウェルス 宿泊業の食品廃棄物を減らし、行き先を変える(2023年5月9日、ソネバ提供)
裏付け: 3リゾート400室、離島の背景、2025年の目標、3チームの取り組み、固形廃棄物の最大70%が有機物、菜園の中のレストラン、生ゴミ2019年比50%減、植物性50%、堆肥4,200トン、0.12kgの換算と500トン・1,220トン、27%→90%、野菜1万6,000ドル→20万ドル、累計300万ドル、利益を生む部門、予防の教訓、牛肉の撤去、オイネス氏の発言 - itmustbeNOW(英文) - エヴァとソヌ・シヴダサニへの15分インタビュー(2022年10月)
裏付け: 1995年開業、2008年の輸入ボトル水の廃止、マールホスの瓶詰め施設とエコ・セントロ(圧縮機・木材粉砕機・ガラス粉砕機)、2020年2月の野焼き終了と2島の追随、2015年のガラス工房、毎月5トン超のガラスごみ、約90%の再利用、2019年1月のソネバ・ナムーナ、ナムーナの意味、海がゴミ捨て場だった