GOAL 12 · TARGET 12.5 廃棄物・循環経済 4分 / 2109文字 引き算の発想から #006

使わないことをデザインする:ヤオノイがプラスチックを消した方法

タイ南部の島に立つシックスセンシズ・ヤオノイでは、水は敷地の井戸から汲んで自分たちで瓶に詰め、ストローはレモングラスの茎を使う。グループが掲げた「プラスチック・フリー2022」の中で、プラスチックを使わない厨房の試作を任されたのが、このリゾートだった。

たとえば、レストランで水を頼む。運ばれてくるのは、すりガラスの瓶だ。黒い点で描いた三角形の下に、「SENSES」の文字がある。グラスに添えられたストローは、レモングラスの茎。プラスチックは、テーブルのどこにも見当たらない。

石灰岩の島の、56棟

シックスセンシズ・ヤオノイは、2007年に開業した56棟のプールヴィラのリゾートだ。プーケットとクラビの間、パンガー湾に浮かぶヤオノイ島にあり、そびえ立つ石灰岩の島々に囲まれている。島の暮らしの中心は、田んぼ、ゴム園、小さな農園、そして湾での漁だ。

リゾートには、日々の運営に関わる専任のサステナビリティ・マネージャーがいる。

代わりを探す前に、問い直す

多くのホテルは、プラスチックの代わりを探す。プラスチックのストローを紙のストローに替える、というように。ヤオノイの考え方は一歩手前から始まる。リゾートの信条は、6つのRだ。考え直す(Rethink)、責任を持つ(Responsible)、敬意を払う(Respect)、断る(Refuse)、繰り返し使う(Reuse)、リサイクルする(Recycle)。

水は、敷地にある12本の深井戸から汲み、敷地内で、炭酸なしと炭酸入りの水にして、繰り返し使えるガラス瓶に詰める。買ってくるのではなく、つくる。だから、ペットボトルを運び込む必要がない。

食材も同じ考え方だ。有機菜園、キノコ小屋、ヤギ、鶏、アヒルの小さな農場があり、客は朝食用の卵を自分で集めることもできる。リゾートは多くのものを敷地内でつくるか、近くの業者と組むことで、プラスチックの包装と配送の排出を減らしている。厨房の生ゴミは動物のえさか堆肥になり、ガラス瓶は砕いて舗装の材料や植木鉢に変える。排水は、自然の力を使って処理している。

グループの「プラスチック・フリー2022」

シックスセンシズのプラスチックとの付き合いは長い。1990年代には、浴室のアメニティを詰め替え式の陶器の容器にした。2003年からは、自社の水をガラス瓶で出している。2016年には、プラスチックのストローと配達用の容器をやめた。2019〜2020年だけで、グループ全体で240万本を超える使い捨てのペットボトルを置き換えた。

2021年、グループは「プラスチック・フリー2022」を掲げた。ホテルとスパの運営から、新しくつくられたプラスチックをなくす計画だ。まず使い捨てのプラスチックから始め、最終的には、客と地域の人たちがプラスチックに触れる機会そのものを取り除くという。そのためには、包装材から布、家具まで、あらゆるところで新しい工夫がいる。

サプライヤーとつながる場として、シックスセンシズはホテルブランドとして初めて、米国サステナビリティ連合とSustainChainと手を組んだ。2020年には、観光業でプラスチック汚染の根本原因に取り組む国際的な枠組みにも加わっている。

そして、同じ時期に進められていたのが、プラスチックを使わない厨房の試作だ。サステナビリティ担当副社長のジェフ・スミスとヤオノイのチームがつくり、その方法をすべてのシックスセンシズに広げることを目指した。スミスは「サプライチェーン全体で協力し、新しい工夫を生み出す道が開ける。すでに大きな工夫が生まれている」と語っている。

島の生きものと、島の人へ

ヤオノイの「使わない」は、島の自然を守る取り組みにもつながっている。島では、サイチョウの仲間が数を減らしている。巣になるのは古い木にできる自然の穴だが、古い木は倒れやすく、穴ができるのにも時間がかかる。そこでリゾートは、実のなる木を育て、自然の巣に似せた人工の巣箱を取り付けている。タイのサイチョウ保護プロジェクトとも手を組んでいる。

水の取り組みは、敷地の外にも広がる。リゾートは地元の団体と協力し、学校、病院、公園、モスク、寺、警察署など35か所に浄水設備を置いた。いまでは10万4,000人を超える人が、毎日きれいな水を飲めるようになっている。

日本の宿に置き換えると

ヤオノイの順番は、「代わりを探す」より先に「本当に要るか」を問うことだ。客室の飲み水、ストロー、アメニティの小分け容器。一つずつ、なくせるか、繰り返し使えるものにできるかを考える。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、30室・稼働率70%の宿で、使用中の客室に1日2本ずつペットボトルの水を置いているとする。1日42本、年に1万5,330本だ。1本20gとすると、プラスチックは年に約307kgになる。仕入れ値が1本40円なら、年に約61万円。この金額を、浄水器や繰り返し使える瓶にかかる費用と並べてみると、判断の材料になる。

使わないことをデザインすると、テーブルの上から、包装を剥がす音が消えていく。

持ち帰れる知識

  • シックスセンシズは2019〜2020年だけで、グループ全体で240万本超の使い捨てペットボトルを置き換えた
  • 1990年代に詰め替え式の陶器のアメニティ、2003年からガラス瓶の水、2016年にストローと配達容器を廃止
  • 信条は6つのR:考え直す、責任を持つ、敬意を払う、断る、繰り返し使う、リサイクルする
  • 地域の35か所に浄水設備を置き、10万4,000人超がきれいな水を利用

宿で考えられること

  • 客室に置いているペットボトルの本数と仕入れ値を1か月記録する
  • ストローや小分け容器が本当に要るか、一つずつ問い直す
  • 空き瓶や生ゴミの、敷地の中での行き先を一つ決める

事業・予約への接続

ヤオノイでは、井戸の水を詰めた瓶、レモングラスのストロー、朝の卵集めが、それ自体で泊まる体験になっている。「使わない」工夫は、客に見える形にすると、宿の魅力として伝わる。

Sources / 参考情報

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