課題から書く報告書:ランカウイのダタイが固形ごみの96%を敷地で処理する方法
マレーシア北西部、ランカウイ島の北西の端。古い熱帯雨林とダタイ湾のあいだに、121の客室とヴィラを持つリゾート「ザ・ダタイ・ランカウイ」がある。2024年、このリゾートは、出た固形ごみの96%を敷地の中で処理した。その数字を、課題と一緒に毎年公開している。
たとえば、雨上がりの午後。宿泊客が、再生素材でつくられた学びの小屋「ザ・ラボ」に集まる。スタッフが、厨房から出た野菜くずの袋と、使い終わったろうそくの束を机に並べる。「これが、このあとどうなると思いますか」。
熱帯雨林と海のあいだで
リゾートは2020年、環境と地域のための取り組み「ザ・ダタイ・プレッジ」を始めた。柱は4つある。運営の中に持続可能性を組み込む「ピュア・フォー・ザ・フューチャー」、海の生き物を守る「フィッシュ」、森の生き物を守る「ワイルドライフ」、子どもたちを育てる「ユース」だ。プレッジで集めたお金は、すべてこの活動と地元の非営利団体に充てる。
海の柱では、マレーシアで唯一、海の哺乳類の保護に取り組む団体と組んでいる。湾の漁がサンゴ礁を傷めないよう、2019年から魚を集める浮き漁礁を5基置き、漁をする場所を礁から離した。2024年には、湾に253本のサンゴの苗を植えた。リゾートの海洋生物学者は、目の前の礁を23回調べ、捨てられた漁網も取り除いている。
ごみを担うのは、最初の柱だ。森と海に囲まれたリゾートにとって、出たごみをどこで、どう終わらせるかは、景色そのものを守ることにつながる。
分けて、敷地で終わらせる
認証機関アースチェックの事例紹介によると、仕組みの中心は、専用に建てた「仕分けセンター」だ。ここでごみを細かく分け、生ごみは敷地で堆肥にする。資源に戻せないものは、「アッシャー」という機械で、有害な物質を出さない灰に変える。こうして2024年、固形ごみの96%を埋め立てに回さなかった。2023年は94%だった。
2024年の報告書の数字を見ると、ごみの行き先が具体的にわかる。食べられない食品くずのうち147トンは、地元の農家に家畜のえさとして渡し、一部は犬の保護施設にも送った。食品くずからは、1万6,772kgの肥料をつくった。使い終わった食用油9,588kgは、バイオ燃料に変えた。浜辺の清掃では、8,404kgのごみを集めている。
ごみを減らす工夫は、仕入れや設備にも及ぶ。照明は85%をLEDに替え、牛肉を使う量を減らして、牛が出すメタンを抑えている。
ろうそくが、仕事になる
報告書は、解決できていない課題もはっきり書く。生ごみから出るメタン、堆肥にできないごみ、使い終わったシーツやスリッパ。そして、島の女性、とくにひとりで暮らす女性に働く場が少ないことだ。
この二つの課題を、一緒に解こうとしているのが、地元の社会的企業「カンシャライフ・プロジェクト」との協働だ。リゾートで使い終わったろうそくを溶かし、新しいろうそくにつくり直す。2024年には1万862本の再生ろうそくが生まれ、前の年の2倍を超えた。この仕事が、ひとりで暮らす女性や夫を亡くした女性の技術と収入になっている。創業者のスカイ・デ・ベガは「自然と社会を長く変えていくという目標を共有し、自ら手を動かしてくれる協力者だ」と話す。
課題・解決・成果の順に書く
ダタイの報告書は、「課題」「解決」「成果」の順に書かれている。2024年の報告書から、この形を「解決から語るストーリーテリング」と名付け、ほかのホテルや旅行者にも、同じように取り組むよう呼びかけている。
数字を自分たちだけで発表しているわけではない。アースチェックは、目標の設定や進み具合の比較を支え、監査で確かめている。品質管理の責任者は「信頼できる外の専門家に確かめてもらうことが、今まで以上に大切になっている」と話す。リゾートは2025年、アースチェックのゴールド認証を受けた。
事例紹介は、宿泊1泊あたりの数字も示している。埋め立てに回るごみは、1泊あたり1リットル。地域でいちばん少ない施設より81.95%少ないという。水道水の使用量は、1泊あたり1,000リットルで、前の年より37%減った。総量ではなく1泊あたりで見るから、客が増えた年でも、取り組みが進んだかどうかがわかる。
日本の宿に置き換えると
小さな宿でも、まねできるのは「1泊あたりで見る」ことと、「課題から書く」ことだ。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室で稼働率65%の宿なら、年に約4,750室泊になる。ごみの処理費が年に38万円なら、1室泊あたり約80円。客が増えれば総額は増えるが、1室泊あたりで見れば、分別や仕入れの工夫が効いているかがわかる。生ごみを分けて堆肥や飼料に回し、1室泊あたり64円まで2割下げられれば、年に約7万6,000円が減る。その結果を、うまくいかなかったことと一緒に、年に一度、客や取引先に伝えてみる。
ラボの机に並んだ野菜くずとろうそくは、やがて肥料と新しい明かりになる。ダタイは、その道筋を数字で示し続けている。
持ち帰れる知識
- ごみは、分ける場所をつくってから減らす
- 指標は総量ではなく、1泊あたりで見る
- 報告は「課題・解決・成果」の順に書く
- ごみの課題と地域の課題を、一緒に解く
宿で考えられること
- ごみの処理費を、1室泊あたりで計算してみる
- 使い終わったろうそくや石けんを、地域で生かせないか相談してみる
- 1年の取り組みを、うまくいかなかったことも含めて1枚にまとめてみる
事業・予約への接続
ザ・ダタイ・ランカウイは、ザ・ラボでの学びの時間や、自然観察、サンゴを守る体験を、滞在の楽しみとして用意している。取り組みの報告書も、リゾートを選ぶ理由の一つになっている。
Sources / 参考情報
- ザ・ダタイ・ランカウイ(英文) - アースチェックのゴールド認証を取得(プレスリリース、2025年9月2日)
裏付け: ゴールド認証、2020年にプレッジ開始、4つの柱、96%を敷地で処理、9,588kgの食用油をバイオ燃料に、147トンの食品くずを農家のえさに、再生ろうそく1万862本(前年比111%増)、ランカウイ島の北西の端、古い熱帯雨林とダタイ湾、121の客室・ヴィラ・スイート、プレッジの収益は活動と地元の非営利団体へ - アースチェック(英文) - ザ・ダタイ・ランカウイの事例(2025年)
裏付け: 2024年に固形ごみの96%を埋め立てに回さない、仕分けセンター・敷地での堆肥化・アッシャーの機械で無害な灰、カンシャライフ・プロジェクト、ザ・ラボでの客向けの説明会、LED85%、牛肉を減らす、食品くずを家畜のえさに、ろうそくの再利用、目標設定と比較の支援、品質管理の責任者と創業者の言葉、1泊あたりの埋め立てごみ1リットル(地域でいちばん少ない施設より81.95%少ない)、水道水1泊1,000リットル(前年比37%減) - Frog & Wolf PR(英文) - ザ・ダタイ・プレッジの報告書(リゾートの広報資料、2025年6月6日)
裏付け: 海の哺乳類の保護団体、2019年から浮き漁礁5基、サンゴの苗253本、礁の調査23回と捨てられた漁網の除去、2024年版の報告書、解決から語るストーリーテリング、課題・解決・成果の形、課題(生ごみのメタン、堆肥にできないごみ、シーツとスリッパ、女性の働く場)、えさと犬の保護施設、96%(2023年は94%)、肥料1万6,772kg、浜辺の清掃8,404kg、ひとりで暮らす女性と夫を亡くした女性の収入