GOAL 12 · TARGET 12.2 水・衛生・循環 4分 / 2113文字 素材から考える #031

農家の石積みから屋根を考える:バリ南端のアリラ・ヴィラズ・ウルワツが、乾いた土地で水を使い回す設計

インドネシア・バリ島の南、ブキット半島。乾いたサバンナの続く崖の上に、「アリラ・ヴィラズ・ウルワツ」は2009年6月1日に開業した。設計はシンガポールの建築事務所WOHA。建物は、最初から「環境に持続可能な開発」として計画された。

たとえば、乾季の朝。客室の庭の塀の向こうで、低く平らな屋根の上のシダが、朝日を浴びている。足元の池の水は、昨日どこかで使われ、きれいにされて戻ってきた水だ。

景色をふさがない屋根

建築の専門サイトが紹介した設計の説明によると、開業時の計画は、50室のスイートのホテルと、35棟の住宅用ヴィラだった。

最初に決めたのは、屋根の形だ。バリでよく見る急な勾配の屋根は、ゆるやかな斜面では海の眺めをふさいでしまう。しかも、この地域にもともとあった形ではない。そこで設計者は、地元の農家が石灰岩の石をゆるく積み上げてつくる段々の石積みに目を向けた。屋根は、段々になった低い勾配の形にし、バリの火山の軽石で覆った。軽石は、それ自体が熱を伝えにくい材料で、地元のシダや多肉植物も根を張れる。段々の屋根は景色にとけこみ、この土地ならではの広い眺めが残った。

客室は、「部屋」ではなく「人が住む庭」として設計された。庭の塀が部屋の壁になり、眠る、食べる、くつろぐ、湯を浴びる、という時間を庭の中で過ごす。ホテルのヴィラには、それぞれ海を見下ろすプールがある。斜面の住宅用ヴィラは、水の庭に架けた橋でつながる建物の集まりとして、段々に配置された。プールには塩素ではなく塩水を使っている。

土地を削らず、木を残す

設計は、敷地の性質を守るところから始まった。地形の起伏に沿って建物を配置し、土を削ったり盛ったりすることを避けた。大きな木はすべて残すか、植え替えた。

敷地の植物は調べて記録し、標本を英国のキュー王立植物園に送って種類を確かめた。敷地の中に苗床をつくり、外の園芸店の外来の植物ではなく、在来の植物を育てて庭に使った。この土地の植物は、乾季には休眠し、季節が来ると一斉に花を咲かせる。在来の植物の庭は、使う水がずっと少なくて済み、地元の鳥や動物もとどまりやすい。

材料も、できるだけ近くから集めた。石の壁には、敷地の道路を切り開いたときに出た石を使った。ほかの材料も、すべてバリか、隣のジャワ島のものだ。ココナッツや竹など、持続可能な木材を選び、家具や照明、小物はジャワとバリの職人がつくった。設計の説明では、地元の材料の価値を高め、高価な輸入品にあこがれるのではなく、地元の人が自分たちの材料を使うきっかけになると説明している。

水を、二度三度使う

乾いた半島で、とくに工夫したのが水だ。設計の説明に挙げられた環境の工夫は、次のようなものだ。

雨水を集め、貯める池で水を循環させる。浸透ますや、雨水を地面にしみこませる溝や庭を通して、地下の水をふやす。排水はすべて、植物の水やりとトイレの洗浄に使う「中水」の仕組みに送る。汚水もすべて処理し、中水として使い直す。建築を紹介する別のサイトは、ヴィラの下に雨水を貯めるタンクがあると紹介している。

水をあまり使わない仕組みは、ほかにもある。乾いた気候の在来の植物で庭をつくるので、水やりが少なくて済む。大きな庇で日差しをさえぎり、建物を自然に冷やす。共用の場所は自然の風で換気し、お湯はヒートポンプで沸かす。シロアリの対策には化学薬品を使わず、木材や竹には毒性のない防腐処理をした。

計画の段階から、運営まで

設計の説明によると、計画は最初から、観光の環境認証「グリーン・グローブ21」の基準を上回るように進められた。環境のコンサルタントが設計の段階から環境の計画を書き、施工会社は工事中の環境の品質計画を、ホテルの運営会社は運営での環境の取り組みを約束した。

設計の説明は、地域とのつながりにも触れている。宿のある一帯は、貧しく乾いた農村だった。収穫の少ない農業に代わって、観光が雇用と収入を生む。周りの村の人を雇い、宿の外の地域の活動にも関わる。設計の説明は、ぜいたくとは、ものを多く使うことではなく、その土地の自然の美しさを楽しむことだとも書いている。宿の客には、自然を知るためのプログラムも用意した。地元の技術や材料を見せることで、ここは大切に守るべき、すばらしい場所だという地元の人の思いを確かめることにもなる、と説明は結んでいる。

日本の宿に置き換えると

新築でなくても、雨水を使い直すことはできる。屋根の雨どいから雨水を集め、タンクに貯めて、庭の水やりやトイレの洗浄に回す。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、屋根の面積が300平方メートル、年間の雨量が1,500ミリの土地なら、屋根に降る雨は年に450立方メートル。その8割を集められれば、年に360立方メートル。上下水道の料金を1立方メートルあたり400円とすると、年に約14万円分の水道水を使わずに済む。庭の植物を在来のものに替えていけば、水やりの量そのものも減らせる。

軽石の屋根のシダは、水をたくさん使わなくても育つ。その足元で、雨と排水は、何度も使い回されている。

持ち帰れる知識

  • 景色をふさがない形を、地元の農家の知恵から考える
  • 在来の植物の庭は、水をあまり使わない
  • 排水は捨てずに、水やりとトイレに回す
  • 設計・工事・運営のそれぞれに、環境の約束をつくる

宿で考えられること

  • 屋根の面積から、集められる雨水の量を計算してみる
  • 庭の植物を、少しずつ在来のものに替えてみる
  • 館内の家具や小物を、地元の職人に頼めないか考えてみる

事業・予約への接続

アリラ・ヴィラズ・ウルワツは、崖の上の景色と、庭の中で過ごす客室そのものを、泊まる理由にしている。環境の工夫は、景色を守るための設計として、客の体験に溶けこんでいる。

Sources / 参考情報

  • ArchDaily(英文) - アリラ・ヴィラズ・ウルワツ / WOHA(2010年5月12日)
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  • RobAid(英文) - 緑の建築:アリラ・ヴィラズ・ウルワツ(2011年2月2日)
    裏付け: ヴィラの下の雨水タンクと中水の仕組み

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