GOAL 12 · TARGET 12.2 自然・生物多様性・保全 3分 / 2063文字 土に還る宿 #033

いつか土に還る宿:バリのバンブー・インダが、竹と古い家で育ててきたもの

インドネシア・バリ島、ウブドの郊外。アユン川へ落ちこむ谷の尾根に、「バンブー・インダ」はある。名前は「美しい竹」という意味だ。宿の公式サイトは、自分たちを「偶然できたホテル」と呼ぶ。始まりは2005年。ジャワ島の古い婚礼の家を11棟、自宅の隣に置き、家族や友人の泊まる場所にしたことだった。

たとえば、朝の川沿いの道。客が先のとがった竹の棒を手に、岸に流れ着いたペットボトルを一つずつ刺していく。少し先の田んぼでは、アヒルが泥の中を歩き回っている。

古い家を、もう一度使う

ジョン・ハーディがバリに移り住んだのは1975年。当時のウブドには、レストランが一軒と、旅行者向けの安宿がいくつかあるだけだった。妻のシンシアは1982年にバリへ来て、島のかごや家具、工芸品をアメリカに輸出する仕事を始めた。

2005年、夫妻は旅先で集めてきたジャワの古い家を、ウブドの尾根に移した。ジャワで「グラダック」と呼ばれる、チークの木でできた家だ。中には、世界各地や近くの村で集めた布や品物を飾った。2012年、ジョンの娘エローラがここで結婚式を挙げたことをきっかけに、夫妻はホテルとしての可能性に気づき、16室に広げた。2008年には、アル・ゴアの映画「不都合な真実」に心を動かされ、未来の世代が地球を守る力を育てる学校「グリーン・スクール」を開いた。竹でつくったキャンパスは、世界で知られるようになった。2016年からは川辺に竹の家をつくり始め、2024年には24室になった。

広げ方は「ゆっくり、よく考えながら」だったと公式サイトは書く。新型コロナの時期の短い休業中には、古いチークの家を、使い直した家具や品物で整え直した。シンシアは、34年かけてアゼルバイジャンやペルシャ、モロッコ、チベットなどで100枚を超えるじゅうたんを集めてきたと話し、「どの部屋も、自分が住みたい場所として設計している」と語っている。夫妻は今も、宿の隣に住んでいる。

竹を選び、セメントを避ける

公式サイトは、宿を「再生型のおもてなしの実験」と呼ぶ。自然を守るだけでなく、取り戻すことを目指す。そのために、竹を選び、古い家と家具を使い直し、米と野菜を自分たちで育てる。セメント、プラスチック、化学薬品は避ける。夢は、宿のすべてが、いつか土に還ることだという。

竹を選ぶのは、強く、使い道が広く、すぐに育つからだ。宿は地元の竹を使い、もとの株を傷めずに切り出す。新しい竹の建物の多くは、エローラが立ち上げた設計事務所イブクの設計だ。

部屋は、扇風機を助けにして、自然の風で涼しくなるように設計した。暑い日のためにエアコンもあるが、冷やすのは部屋ではなくベッドだ。ベッドを囲む蚊帳が冷たい空気をとどめ、使うエネルギーを抑える。蛍光灯は使わず、明かりはLEDと油のランプでまかなう。

水も、ごみも、敷地の中で回す

20を超える天然のプールの水は、地下の水が火山の岩と砂でろ過され、泉となってわき出したものだ。蛇口の水も同じ泉から引き、浄水装置で飲めるようにしている。使ったあとの水はもう一度ろ過し、庭と田んぼにまく。尾根の上のプールは塩水の仕組みで、塩素を使わない。

庭は、刈りこんだ芝生ではなく、野菜とハーブ、地元の儀式に使う花を育てる畑だ。何百年も前からあった田んぼを再生し、客にも田植えと稲刈りを手伝ってもらう。客に出す米は、すべてこの田んぼでとれたものだ。マリーゴールドが虫を遠ざけ、アヒルと2頭の牛が土を肥やす。

食べ残しは豚のえさと堆肥になり、ニワトリが堆肥の山で虫をついばみながら土をかき混ぜる。その堆肥が、また畑を育てる。プラスチックは使わず、皿にはバナナの葉、ストローにはパパイヤの茎を使う。使い終わった食用油は、夜道を照らすランプの燃料になる。部屋の洗面用品は自然由来のものなので、流した水も害にならない。レストランの長いテーブルは、7万本の使い終わった箸からできている。蚊の対策も、薬をまくのではなく、敷地で蚊が育つ水たまりを見回って減らす方法をとる。

日本の宿に置き換えると

宿の周りの自然を、客と一緒に歩くことから始められる。バンブー・インダでは、川沿いの自然の散歩を、ごみを拾いながら歩く「トラッシュ・ウォーク」にすることもできる。鳥の専門家と一緒に、宿の周りにすむ約100種の鳥を探す散歩や、樹齢500年のバニヤンの木を見上げる散歩もある。参加は追加料金だ。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、宿の周りを1時間歩く体験を、1人1,500円で用意したとする。月に40人が参加すれば、年に480人で72万円。案内するスタッフの時間を月に20回、1回1時間、時給1,500円とすると、年に36万円。差し引き、年に36万円が残る。拾ったごみの量を記録して客に伝えれば、体験そのものが宿の取り組みを知ってもらう機会にもなる。

土に還る宿は、一度に建てたものではない。20年かけて、古い家と竹と田んぼを、少しずつ組み合わせてきた。

持ち帰れる知識

  • 古い建物と家具を使い直すことが、宿の個性になる
  • 冷やす範囲を小さくすれば、使うエネルギーも小さくなる
  • 食べ残し、排水、油を、敷地の中の別の用途に回す
  • ごみ拾いや田植えを、客の体験にする

宿で考えられること

  • 館内で使わなくなった家具や建具を、客室で使い直せないか見直す
  • 宿の周りの散歩とごみ拾いを、体験として用意してみる
  • 食べ残しと使い終わった油の行き先を、一つずつ書き出してみる

事業・予約への接続

バンブー・インダは、田植えやごみ拾い、竹の建物を見て回るツアーを、泊まる理由の一つにしている。日帰りでプールと食事を楽しむ利用もあり、宿の考え方を知ってもらう入り口になっている。

Sources / 参考情報

  • Bambu Indah(英文) - 私たちについて
    裏付け: 偶然できたホテル、2005年にジャワの古い婚礼の家11棟、尾根の木々と川、1975年のジョンの移住と当時のウブド、1982年のシンシアの来島と輸出の仕事、2008年のグリーン・スクール(不都合な真実、竹のキャンパス)、グラダック、2012年のエローラの結婚式と16室、2016年からの川辺の竹の家、2024年の24室とイブクの竹の家、休業中の改装、今も隣に住む、再生型のおもてなしの実験(竹・古い家と家具・米と野菜・セメントとプラスチックと化学薬品を避ける・土に還る夢)、地元の竹ともとの株、泉の水のプール・浄水・排水を庭と田んぼへ・塩水のプール、畑と儀式の花、田んぼの再生と田植え・稲刈り、自然換気と扇風機、エアコンのベッド、蛍光灯なし、食べ残しは豚と堆肥、プラスチックなし、バナナの葉、パパイヤの茎、食用油のランプ、自然由来の洗面用品、蚊の対策、地元出身のスタッフ
  • Bambu Indah(英文) - 体験
    裏付け: 約100種の鳥を探す散歩、樹齢500年のバニヤンの木、トラッシュ・ウォーク(竹の棒、川岸と道のごみ)、追加料金、客に出す米はすべて田んぼのもの、日帰り利用、竹の建物のツアー
  • Bambu Indah(英文) - 食事
    裏付け: マリーゴールド、アヒルと2頭の牛、7万本の使い終わった箸のテーブル
  • Room + Wild(英文) - 開かれた心と残る影響:ハーディ家の歩み(2025年)
    裏付け: 2023〜2024年の改装、シンシアの言葉(34年、100枚を超えるじゅうたん、自分が住みたい場所として設計)

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