GOAL 14 · TARGET 14.5 廃棄物・循環経済 3分 / 2004文字 密度から考える #044

リゾートの海が、国の保全区域に数えられた:ソネバ・ジャニがモルディブで初めて「OECM」に認められた理由

モルディブの北部、ヌーヌ環礁。メドゥファル島と、その周りに広がるラグーンに、リゾート「ソネバ・ジャニ」がある。水の上に建つヴィラには、ラグーンへすべり降りる滑り台がつき、開け閉めできる屋根を備えたものもある。

2026年8月、このリゾートの島の一部が、モルディブの気候変動・環境・エネルギー省から「OECM」に認められた。モルディブ国内のリゾートとして、これが初めてのことだ。

たとえば、夜明け前の浜辺。調査の担当者がライトを手に、砂の上に残る跡をたどっている。ウミガメが上陸して卵を産んだ跡だ。担当者は巣の位置を記録し、ノートに日付を書き込む。

OECMとは何か

OECMは、英語の「その他の効果的な地域をもとにした保全の手段」の頭文字をとった言葉だ。国立公園のような正式な保護区ではないが、管理の仕方によって、生き物の豊かさが長く守られている場所を指す。

背景には、世界の約束がある。2022年12月の生物多様性条約の会議で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」だ。その中に、2030年までに世界の陸と淡水、海の30%を守るという目標があり、「30by30」と呼ばれる。保護区だけでは届かないぶんを、企業や地域が守る場所で補おうというのが、OECMの考え方だ。報道によると、ソネバ・ジャニの認定は、モルディブがこの目標に向かう道筋の先頭に立つものになった。

1年かけて、海と浜と森を調べた

認定されたのは、メドゥファル島の東側の0.41平方キロメートル。サンゴ礁と浜、マングローブの林を含む区域だ。

認定の前には、1年にわたる生態の調査や見守り、地図づくり、記録の作業があった。中心になったのは、ソネバの保全とサステナビリティの部門だ。この部門は、大規模なサンゴの再生や、現場に生かす科学の研究、長い期間の見守り、教育、地域の人たちへの研修をまとめて手がけている。アメリカの海洋保全の財団の支援を受け、リゾートのスタッフも運営面で深く協力した。

この区域には、絶滅のおそれのある海の生き物や鳥、植物が多く暮らしている。とくに、絶滅の危機にあるタイマイとアオウミガメにとって、大切な産卵の場所になっている。マングローブや湿地は、海岸を波から守り、炭素をため、水の流れを整え、生き物が行き来できるつながりをつくる。

認定は、ゴールではない

この認定には、続ける約束がついている。毎年見守りと報告を行い、5年後には認定が見直される。保全の部門の責任者は、保全は紙の上だけのものであってはならないとし、この区域の管理が生き物に本当の利益をもたらしていることを、毎年、測れる証拠で示し続けると話している。本当の成果は、その水準を長く保ち、観光が保全の成果を強められることをモルディブ全体に示すことだ、とも語った。

ソネバの最高経営責任者も、保全と宿泊業は対立するものと見られがちだが、取り組みが本物で続いていれば、両者は助け合う関係になれると語った。報道も、観光が正しく優先順位をつければ、保全と競うのではなく、長く続く保全の費用を生み出し支えられることを示す例だと伝えている。

客にとっても、この海は滞在の中心にある。リゾートでは、専門家と一緒にサンゴ礁を巡るシュノーケリングや、ウミガメやエイに出会えるラグーンでのシュノーケリングを用意している。グループ全体では、固形ごみの90%をリサイクルし、生ごみは島で堆肥にして菜園に戻している。取り組みはリゾートの外にも広がる。グループの「ソネバ・ナムーナ」は近くのモルディブの島々の人たちと組み、たとえばマールホス島では、ごみを分けて資源に戻す施設と飲み水をつくる設備を整え、ごみを燃やしてきたやり方からの転換を進めている。

日本の宿に置き換えると

日本にも、似た仕組みがある。環境省は2023年度から、企業の森や里山、都市の緑地など、民間の取り組みで生き物の豊かさが守られている場所を「自然共生サイト」として認定している。2025年2月の発表では、4回目の認定として33の都道府県の75か所が新たに選ばれ、認定は全国で328か所、合計の面積は約9.3万ヘクタールになった。認定された区域のうち、保護地域と重ならない部分は、OECMとして国際的なデータベースに登録される予定だ。宿の庭や裏山、海辺も、管理の仕方しだいで候補になりうる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、宿の敷地の生き物調査を、年に4回、地元の専門家に1回10万円で頼むとする。年に40万円。20室の宿で稼働率を70%とすると年に5,110室泊なので、1室1泊あたり約78円になる。調べた記録は、認定の申請に使えるだけでなく、客に宿の自然を伝える材料にもなる。

守ると宣言するだけでなく、守れていることを毎年確かめる。ソネバ・ジャニの認定は、その積み重ねを国が数えた結果だ。

持ち帰れる知識

  • 保護区でなくても、管理の仕方しだいで保全の場所として数えられる
  • 認定の前に、調査と記録を積み重ねる必要がある
  • 認定を続けるには、毎年の見守りと報告が欠かせない
  • 守っている海や森は、客の体験の中心にもなる

宿で考えられること

  • 宿の敷地や周りに、どんな生き物がいるかを調べてみる
  • 環境省の「自然共生サイト」の仕組みを調べてみる
  • 調査の記録を、客に伝える掲示や案内にしてみる

事業・予約への接続

ソネバ・ジャニの客は、ラグーンでウミガメやエイに出会う。その海が国の保全の目標に数えられることで、滞在そのものが、守られた自然に触れる体験になっている。

Sources / 参考情報

  • Hotelier Maldives(英文) - ソネバ・ジャニがモルディブで初めてOECMに認められたリゾートに(2026年8月11日)
    裏付け: 気候変動・環境・エネルギー省によるOECMの認定、国内のリゾートで初めて、昆明・モントリオール生物多様性枠組と30by30の目標、OECMの定義、メドゥファル島の東側の0.41平方キロメートル(サンゴ礁・浜・マングローブ)、1年の調査、保全の部門とWaitt財団の支援、絶滅のおそれのある種、タイマイとアオウミガメの産卵、マングローブと湿地の役割、毎年の見守りと報告、5年後の見直し、最高経営責任者と保全の責任者の言葉、観光が保全を支えられるという報道の見方
  • Island Chief(英文) - ソネバ・ジャニがモルディブで初めてOECMの地位を得たリゾートに(2026年8月11日)
    裏付け: 同上(同じ発表の内容)
  • Soneva(英文) - スチュワードシップ
    裏付け: 2026年のOECMの認定(受賞・認定の一覧)、保全とサステナビリティの部門の活動、ソネバ・ナムーナとマールホス島の施設、固形ごみの90%をリサイクル、生ごみの堆肥と菜園
  • Soneva(英文) - ソネバ・ジャニの体験
    裏付け: 専門家とのシュノーケリング、ラグーンでウミガメやエイ
  • 環境省 - 令和6年度後期「自然共生サイト」認定結果について(2025年2月27日)
    裏付け: 2022年12月の会議での昆明・モントリオール生物多様性枠組の採択、2023年度からの認定、企業の森・里地里山・都市の緑地、2025年2月の4回目の認定(33都道府県75か所)と認定総数328か所と約9.3万ヘクタール、保護地域と重ならない区域をOECMとして国際データベースに登録する予定

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