GOAL 12 · TARGET 12.5 自然・生物多様性・保全 3分 / 2006文字 禁止から始める #047

島の外のごみまで引き受ける:インドネシアのバワ・リザーブと財団が、近くの村に「ごみ銀行」を開く理由

インドネシアの北の端、南シナ海に浮かぶアナンバス諸島。その一角に、六つの島からなる私有のリゾート「バワ・リザーブ」がある。いちばん近い島まで30海里離れていて、島々には独自の生き物の世界が残っている。

この海で、2026年9月29日、近くのバヤット村に「ごみ銀行」が開いた。村と、リゾートの理念に沿って生まれた財団が組んでつくったものだ。

たとえば、開業の日の朝。村の人たちが、家で分けておいたペットボトルや缶を袋に詰めて持ってくる。係の人が重さを量り、帳面に書き込む。捨てるはずだったものが、少しのお金に変わる。

島に、使い捨てを持ち込まない

まず、リゾートの中の取り組みから見てみよう。バワ・リザーブは、使い捨てのプラスチックを島に持ち込まないことを決めている。公式サイトによると、客は到着すると銅の水筒を受け取り、滞在中に補充して使い、帰るときに持ち帰ることができる。日焼け止めや虫よけも、サンゴ礁に優しい自然の素材のものを用意した。

水も大切に扱う。スタッフの宿舎などの屋根に降った雨を集めてためておき、飲み水は海水から塩分や不純物を取り除く設備でつくる。使ったあとの水はすべて集めて処理の場所に送り、固形のごみは分けて、できる限りリサイクルに回している。

建て方も、島を傷めないように選んだ。岸辺の木はできるだけ切らず、工事は重機を使わずに手作業で進めた。鏡や洗面台、浴槽は、インドネシアのほかの地域から集めた再生の銅を使って島でつくった。階段や小道、基礎には島で切り出した石を使っている。桟橋が左右対称でないのは、潜水の専門家が工事を見守り、二つのラグーンの間のサンゴ礁を傷めないように位置を決めたからだ。ラグーンには、水に浮かぶ太陽光のパネルも並ぶ。

島の浜は、アオウミガメやタイマイが卵を産む大切な場所でもある。卵は人やトカゲに狙われやすいため、リゾートの海洋生物学者が巣や卵を安全な場所に移し、ふ化の成功率を大きく高めている。陸には、樹齢2,000年とされる木も見つかっている。

買うものも選んでいる。島の売店では、捨てられたタイヤからつくったインドネシアの靴や、海から回収したプラスチックを再生した水着を扱う。水着は1着ごとに、海から1キログラムのプラスチックを取り除く仕組みだ。客室のアメニティは、利益を働く人たちと分け合う協同組合として始まった、バリの自然派の化粧品の会社から仕入れている。

島の外では、ごみが海に流れ出す

ところが、リゾートの外の島々では事情が違う。財団によると、アナンバス諸島のような小さな島の地域では、土地が限られ、運ぶ費用が高く、ごみを処理する仕組みも足りない。そのため、ごみが海辺や海に流れ出し、自然と人々の暮らしの両方をおびやかしている。

そこで動いているのが、2018年に独立した非営利の団体として生まれた「アナンバス財団」だ。財団は、周りのサンゴ礁や魚を守る海の保全と、地域の暮らしを良くする陸の取り組みの両方を進めている。

ごみの取り組みでは、村や学校、地元の行政と協力し、家庭でごみを分けることから始める。分けたごみを村の人が持ち込む「ごみ銀行」、周りの村を定期的に回ってリサイクルできるものを集める移動式のごみ銀行、捨てられたものを製品に変えるアップサイクルの3つが柱だ。アップサイクルには、とくに女性のグループが加わり、技術を身につけて収入を得る機会にしている。財団の集計では、これまでに766トンを超えるごみを集め、27の村に届き、8つのごみ処理の施設をつくった。海から取り除いたごみも12トンを超える。海の中では、5,000の人工の礁を置き、2万7,000のサンゴの断片を植えた。ウミガメの卵は10万個以上を守り、4万5,000匹を超える子ガメを海に放している。

バヤット村のごみ銀行では、財団が運営に必要な道具を用意し、村が運搬用の車を出した。開業の初日には25人がごみを持ち込み、20人が会員として登録した。村長は、ごみ銀行が村の暮らしと環境の両方に役立ち、清潔で健康な村につながってほしいと話している。

日本の宿に置き換えると

宿の中で使い捨てを減らすことは、日本でもすぐに始められる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿で稼働率を70%とすると、年に5,110室泊。使い捨てのアメニティを1室泊あたり30円分置いていれば、年に約15万円になる。代わりに、各客室に詰め替え式のボトルを4本ずつ、1本1,500円で置くと、最初に12万円かかる。中身を大きな容器で買うと年に8万円とすれば、1年目は約5万円多くかかるが、2年目からは年に約7万円が浮く。年に5,000を超える小さな容器のごみも出なくなる。

バワ・リザーブは、島に使い捨てを持ち込まないところから始めた。財団の取り組みは、その考え方を島の外の村へ広げている。

持ち帰れる知識

  • 使い捨てを持ち込まないと決めれば、出るごみそのものが減る
  • 小さな島では、ごみの仕組みの不足が海の汚れにつながる
  • 家庭で分けたごみを持ち込める場所があると、ごみが資源に変わる
  • 宿の考え方は、財団を通じて地域へ広げられる

宿で考えられること

  • 客室で使い捨てになっているものを書き出してみる
  • 詰め替え式に替えたときの費用を比べてみる
  • 地域の資源回収の仕組みに、宿が協力できることを探してみる

事業・予約への接続

バワ・リザーブは、客に島の自然の美しさを体験してもらいながら、島をおびやかす環境や社会の課題についても学んでもらうことを目指している。

Sources / 参考情報

  • Bawah Reserve(英文) - サステナビリティ
    裏付け: 使い捨てのプラスチックを持ち込まない、銅の水筒、サンゴ礁に優しい日焼け止めや虫よけ、雨水の利用、海水からの飲み水、使ったあとの水の処理、ごみの分別とリサイクル、木をできるだけ切らない・重機を使わない・自然の素材、再生の銅の鏡や洗面台や浴槽、島の石、潜水の専門家が見守った桟橋、浮かぶ太陽光のパネル、アオウミガメとタイマイの産卵と巣の移動、樹齢2,000年の木、タイヤからつくった靴と再生プラスチックの水着(1着ごとに1キログラム)、協同組合として始まった会社のアメニティ、いちばん近い島まで30海里、2018年のアナンバス財団、客に課題を学んでもらう
  • Bawah Reserve(英文) - 私たちについて
    裏付け: 六つの島からなる私有のリゾート、重機を使わない手作業の建設
  • Anambas Foundation(英文) - 統合的なごみの管理
    裏付け: 小さな島の地域の課題(土地、運ぶ費用、仕組みの不足、海への流出)、村・学校・行政との協力、ごみ銀行、移動式のごみ銀行、アップサイクルと女性のグループ
  • Anambas Foundation(英文) - 公式サイト
    裏付け: 766トンを超えるごみ、27の村、8つの施設、12トンを超える海のごみ、5,000の人工の礁、2万7,000のサンゴの断片、10万個以上の卵、4万5,000匹を超える子ガメ
  • Anambas Foundation(インドネシア語) - バヤット村のごみ銀行が運営開始(2026年10月1日)
    裏付け: 2026年9月29日の開業、財団の道具と村の車、初日に25人が持ち込み20人が登録、村長の言葉

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