GOAL 6 · TARGET 6.4 水・衛生・循環 3分 / 2003文字 2回使うことから #049

下水に、流さない:ザンジバルのホテル・ヴェルデが、シャワーの水でトイレを流し、トイレの水で庭を潤す仕組み

タンザニアの沖、インド洋に浮かぶザンジバル島。インド洋を望む場所に、「ホテル・ヴェルデ・ザンジバル」がある。古い街並みで知られるストーンタウンの散策にも出かけられる。プールや遊具のある家族向けのリゾートで、ホテルは自らを「ザンジバルで最も緑のホテル」と呼んでいる。

このホテルでは、使った水を下水に流さない。シャワーの水も、トイレの水も、形を変えて、もう一度ホテルの中で使われる。

たとえば、ジムの朝。客が自転車型の機械をこいでいる。こいだ力は電気に変わる。運動を終えた客には、ホテルの中だけで使える「お金」がたまっていく。

水を、2回使う

ホテルの公式サイトによると、水の仕組みの柱は三つある。逆浸透膜で水をきれいにする設備、シャワーなどの使ったあとの水を集める仕組み、そしてトイレの排水を処理する設備だ。

運営会社によると、シャワーから出た水は、処理してトイレのタンクに回す。トイレから出た水も処理して、庭の水やりに使う。トイレの水を水やりに使うのは、同じ会社が運営するホテルの中でも、ザンジバルだけの取り組みだという。こうして節約できる水は、数千リットルにのぼる。

再生した水は、水やりやトイレの洗浄、掃除に使われる。その結果、ホテルから下水に流す水はゼロになった。島の上で、水を外から運び込み、外へ流し出す量を、できる限り小さくしている。

水を使う量そのものも減らしている。蛇口とシャワーは水の量をおさえたものにし、トイレは大と小で流す量を分けた。洗濯や食器洗いの設備も、水を少なく使うものを選んだ。庭の水やりは、自動で量を調整する仕組みで無駄をなくしている。

電気も、ごみも

水だけではない。太陽光の発電設備で電気をつくり、エレベーターは、動くときに生まれる力を電気に戻す仕組みを使う。照明はすべてLEDで、外の光を取り込み、人がいないときは消える。窓は二重のガラスにし、日よけをつけ、空調の熱を回収して使う。電気の使い道を細かく測り、使いすぎている場所を見つけて直している。

生ごみは分けて堆肥にし、ほかのごみはリサイクルの設備で処理する。包装を減らす工夫もしている。近くの川にはごみを受け止める仕掛けを置き、清掃も続けている。

庭づくりでも、自然を残した。工事で掘った表土を使い直し、マングローブを守り、池や林をつくった。受付には植物の壁があり、スパとジムの屋根は緑で覆われ、建物を暑さから守っている。

客も、スタッフも、一緒に

このホテルの仕組みを支えるのは、設備だけではない。部署を超えた50人から70人のスタッフが「グリーンチーム」をつくり、毎週集まって、ごみを減らし、資源を大切にする方法を話し合っている。近くの地域の清掃活動にも参加している。スタッフや客に環境に優しい行動を広める「グリーン・ガーディアン」の仕組みや、環境の取り組みを学ぶツアーもある。洗剤は環境に優しいものを選び、食材や物資は地元から責任をもって仕入れている。会議の会場には、リサイクルできるものを分けるごみ箱を置き、文房具には再生紙を使う。

客にも、参加する理由がある。運営会社のホテルでは、客が環境に良い行動をとると、館内だけで使えるお金「ヴェルディーノ」がたまる。エレベーターの代わりに階段を使う、客室でごみを正しく分ける、タオルやシーツを続けて使う、ジムの発電する機械で運動する、敷地を歩いたり走ったりする。たまったヴェルディーノは、レストランや宿泊の支払いにあてられる。

ホテルの持ち主は、タンザニアの企業グループ「バクレサ・グループ」だ。1975年に小さな飲食店から始まり、2018年に宿泊とレジャーの事業に進出した。建設の段階から、南アフリカのグリーンビルディング協議会の基準に沿って計画された。ホテルは、ザンジバルの人々に働く場を生み、地域の成長を支えることも掲げている。運営会社は、第三者のグリーンビルディング認証の基準を満たし、経済的にも環境的にも続けられる宿泊の仕組みをつくることを使命としていて、南アフリカのケープタウンでも同じ名前のホテルを手がけている。

日本の宿に置き換えると

日本の宿でも、水の使い方を見直すことはできる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿で稼働率を70%とすると、年に5,110室泊。1室泊あたり300リットルの水を使うとすると、年に約1,533立方メートルになる。上下水道の料金を1立方メートルあたり500円とすれば、年に約77万円。水の量をおさえたシャワーや蛇口に替え、使う水を2割減らせれば、年に約15万円が浮く。使ったあとの水を再生する設備は費用が大きいが、まずは使う量を毎月記録し、減らすところから始められる。

ホテル・ヴェルデ・ザンジバルは、水を一度で終わらせない。そして、客とスタッフにも、その仕組みに加わる理由を用意している。

持ち帰れる知識

  • 使ったあとの水は、汚れの度合いに合わせて別の用途に回せる
  • 設備と合わせて、使う量そのものを減らす工夫が要る
  • スタッフが定期的に集まる場があると、取り組みが続く
  • 客の行動に小さな見返りをつけると、参加が広がる

宿で考えられること

  • 宿の水道の使用量を、1か月ごとに記録してみる
  • 節水型のシャワーや蛇口に替えたときの効果を試算してみる
  • 客が参加できる環境の取り組みに、小さな特典をつけてみる

事業・予約への接続

このホテルは、環境への配慮と、5つ星の快適さを両立させることを掲げている。客は豪華な滞在を楽しみながら、地球に優しい選択に加わることができる。

Sources / 参考情報

  • Hotel Verde Zanzibar(英文) - グリーン・ストーリー
    裏付け: グリーン・ガーディアンと学びのツアー、環境に優しい洗剤と地元からの仕入れ、逆浸透膜・使ったあとの水の回収・トイレの排水の処理、水やり・トイレ・掃除への再利用と下水への排出ゼロ、節水型の器具、洗濯と食器洗い、自動の水やり、太陽光・エレベーター・LED・外の光・人感センサー・二重ガラス・日よけ・熱の回収・細かい計測、堆肥とリサイクル、包装の削減、川のごみの仕掛けと清掃、表土・マングローブ・池・林・植物の壁・緑の屋根、50〜70人のグリーンチーム
  • Hotel Verde Zanzibar(英文) - ホテルについて
    裏付け: 「ザンジバルで最も緑のホテル」、バクレサ・グループ(1975年の小さな飲食店、2018年の宿泊とレジャーへの進出)、南アフリカのグリーンビルディング協議会の基準、プールと遊具、ザンジバルの人々の雇用と地域の成長
  • Verde Hotels(英文) - グリーン・ストーリー
    裏付け: シャワーの水をトイレのタンクへ、トイレの水を水やりへ(ザンジバルだけ)、数千リットルの節約、運営会社の使命、ヴェルディーノのため方と使い方、会議の会場の分別のごみ箱と再生紙、5つ星の快適さと環境への配慮の両立
  • Hotel Verde Zanzibar(英文) - 公式サイト
    裏付け: 豪華さと環境への配慮の両立、インド洋の眺め、ストーンタウンの散策

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