浜のごみで、クジラをつくる:マイアミの1ホテル・サウスビーチが、捨てられるはずのものをロビーに飾る理由
アメリカ・フロリダ州のマイアミビーチ。アールデコの建物が並ぶ通りに、約600フィート(約180メートル)の白い砂浜に面したホテル「1ホテル・サウスビーチ」がある。2015年に開業した、自然をテーマにするホテルブランド「1ホテルズ」の最初のホテルだ。
ロビーには、大きなクジラの彫刻が置かれている。
たとえば、チェックインを待つ間。客がクジラに近づいて、思わず足を止める。体をつくっているのは、ペットボトルのふた、ライター、ストロー、ロープの切れ端。どれも、浜に流れ着いたものだ。
浜に打ち上げられたものが、作品になる
公式サイトによると、このクジラは、アーティストのシンディ・ピース・ロー氏の作品だ。材料はすべて、浜から拾い集めた、自然のものではない品々だ。タグボートの引き綱、塗装用のシート、釣りのえさ袋、穀物の袋、カーペット、ペットボトルとそのふた、ライター、ストロー、ボール、赤ちゃん用のスプーン、カミソリの柄、シャワーカーテンの輪。一つひとつは小さなごみでも、集まると巨大なクジラになる。
ホテルの外にある看板も、自然の素材を回収してつくった。7,500ポンド(約3.4トン)を超える、地元フロリダのサンゴ石の一つの塊でできている。ロビーには、本物のコケでつくった壁画「デイライフ・スイマー」もある。二人のアーティストが手がけた作品で、空気をきれいにし、音をやわらげる働きもある。
建物も、使い直したものでつくる
材料の選び方にも、同じ考え方がある。ロビーの天井には、アラスカの給水塔から回収した木材を使った。壁を覆うのは、害虫の被害で枯れたマツの木だ。家具には、南米の熱帯雨林で倒れた木を使ったものもある。グループの公式サイトによると、このホテルでは、浜辺の遊歩道やプールのデッキから7,000平方フィート(約650平方メートル)の堅い木材を回収して使い直した。新しい材料を買い、運ぶときに生まれる環境への負担を減らすためだ。
建てるときのごみも減らした。2019年の地元の報道によると、ホテルは、もとの建物を解体するときに出た建設のごみのうち、少なくとも75%をリサイクルし、埋め立てに回さなかった。2026年の雑誌の記事によると、建物は新築の建物の基準で環境認証LEEDのシルバーを取り、乾燥に強い植物の庭と効率のよい器具で、水道の水の使用量を55%以上減らした。エネルギーの使用量も、南フロリダの同じような建物に比べて16%以上少ない。客室のベッドの頭板には、コロラドの森で害虫に枯らされたマツが使われている。
運営でも、捨てるものを減らす
ホテルが開いたあとも、ごみを減らす取り組みは続く。客室の蛇口からは、ろ過した水が直接出る。客は使い捨てのペットボトルを使わずに済む。冷却塔で使った水は、排水に流さず、植物の水やりに使っている。建物には太陽光のパネルを備え、プールの水はオゾンと塩素を組み合わせて安全に保つ。レストランでは、持続可能な方法でとった魚介と、旬の有機の野菜を使う。
1ホテルズは、グループ全体で、ごみの90%以上を埋め立てや焼却に回さないことを目標にしている。協力する会社とともに、これまでに1,181トンを超えるごみを埋め立てから外した。食べ物が余れば、地域の団体を通じて必要な人に届ける仕組みもあり、マイアミでは救世軍の施設がその受け手の一つになっている。
宴会や会議でも、ごみを減らす。グループの「認証された持続可能な集まり」という仕組みでは、主催者や業者、参加者が一緒に、使い捨てのプラスチックをなくし、ごみの少なくとも90%を埋め立てや焼却に回さないことを目指す。
外壁には、1万2,000本近い植物が植えられた緑の壁がある。庭は、植物やハーブ、虫が育つ場所として整えられ、鳥やチョウが集まる。アメリカの野生生物の保護団体から、野生の生き物のすみかとしての認定も受けた。ホテルは、マイアミビーチで初めて、観光施設の環境認証「グリーンキー」で、最高の5つの評価も得ている。
日本の宿に置き換えると
日本の宿でも、宴会や集まりのごみは、減らす余地が大きい。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、宿で年に100回の宴会があり、1回あたり20キログラムのごみが出るとする。年に2,000キログラム。紙、瓶、缶、生ごみを分けて、9割をリサイクルや堆肥に回せれば、燃やすごみは200キログラムになる。処理を1キログラム40円で頼んでいれば、年に8万円が8,000円になり、約7万円が浮く。改修のときに出る古い木材も、同じように使い直せる。分ける手間はかかるが、主催者に「ごみの少ない宴会」として案内すれば、宿を選ぶ理由にもなる。
1ホテル・サウスビーチは、捨てられるはずのものを、ロビーの真ん中に置いた。浜のごみでできたクジラは、客に、目の前の海が何を受け止めているかを語りかけている。
持ち帰れる知識
- 捨てられるはずのものを作品にすると、客が海のごみについて考えるきっかけになる
- 解体や改修のときは、ごみを減らす大きな機会になる
- 宴会や会議は、主催者と組むとごみを減らしやすい
- 余った食べ物は、地域の団体を通じて届けられる
宿で考えられること
- 宴会1回あたりのごみの量を量ってみる
- 改修の前に、使い直せる材料がないか調べてみる
- 近くの浜や川のごみを、地域の作家と作品にできないか考えてみる
事業・予約への接続
ホテルの公式サイトは、このホテルを、豪華な宿泊と持続可能性が両立できることの生きた証拠だと説明している。
Sources / 参考情報
- 1 Hotel South Beach(英文) - サステナビリティ
裏付け: 600フィートの浜、サーファーへの敬意、マイアミビーチで初めてのグリーンキーの最高評価、LEEDシルバー・太陽光のパネル・プールのオゾンと塩素、持続可能な魚介と有機の野菜、コケの壁画の働き、1万2,000本近い植物の緑の壁、サンゴ石と枯れたマツ、アラスカの給水塔の天井、南米の倒木の家具、野生の生き物のすみかの認定、7,500ポンドを超えるサンゴ石の看板、コケの壁画、シンディ・ピース・ロー氏のクジラと材料、豪華さと持続可能性の両立 - 1 Hotels(英文) - サステナビリティ
裏付け: 遊歩道とプールのデッキからの7,000平方フィートの木材、90%以上の目標と1,181トン、食べ物の寄付とマイアミの救世軍の施設、認証された持続可能な集まり(使い捨てのプラスチックをなくし、90%以上) - NBC Miami(英文) - マイアミビーチのホテルが持続可能性の先端を進む方法(2019年9月)
裏付け: 解体で出た建設のごみの少なくとも75%をリサイクル、ろ過した水の蛇口、冷却塔の水を植物に - Haute Living(英文) - 1ホテル・サウスビーチが基準であり続ける理由(2026年5月)
裏付け: 2015年の開業、ブランド最初のホテル、新築の基準でのLEEDシルバー、水道の水55%以上の削減、エネルギー16%以上の削減、コロラドの枯れたマツの頭板