宿泊料金の2%を、森とかまどへ:ソネバが2008年に自ら始めた「環境負担金」の行き先
モルディブとタイで高級リゾートを手がけてきたソネバは、2008年、客室の売上の2%を環境のために取り分ける仕組みを始めた。国に決められた税ではない。会社が自分で決めた負担金だ。
ソネバが国連グローバル・コンパクトに提出した2021年の報告書によると、この基金に集まったお金は1,000万ドルを超えた。お金はソネバ財団を通じて、北タイの森づくりや、ミャンマーとスーダンのダルフールで使われる燃料の少ないかまど、南インドの風力発電に回ってきた。
たとえば、滞在の最後に客が受け取る明細。宿泊料金の中に、森やかまどにつながるお金が含まれている。客がそれを知るのは、旅を終えたあとかもしれない。
飛行機の排出まで、自分の責任として数える
ソネバがこの仕組みを始めた理由は、排出の数え方にある。報告書によると、ソネバはリゾートの電気や水、ごみだけでなく、客が国際線の飛行機で移動するときの排出まで、自分たちが向き合うべきものとして数えてきた。客の飛行機による排出は、ソネバ全体の排出の65%を占める。
客の飛行機まで含めた2021年の排出量は、6万4,460トン。一方、財団を通じた事業がこれまでに減らした量は、累計で50万8,511トンにのぼる。ソネバは2012年から、客の飛行機まで含めてカーボンニュートラルだとしている。それを可能にしたのが、2008年に始めた2%の負担金だと報告書は書いている。
ソネバの創業者であるソヌ・シヴダサニとエヴァ・シヴダサニは、自社の環境の取り組みを支え、世界に影響を広げるためにソネバ財団を立ち上げた。会社の中では、持続可能性の最終的な責任を財務の責任者が負っている。報告書は、これを非公開の会社では珍しいことだとしている。
ソネバは、自社の影響を広く測る「トータル・インパクト・アセスメント」も、ホテル業界で初めてつくったとしている。リゾートの中の影響だけでなく、仕入れ先や客の飛行機を通じた影響まで、環境にかかる本当の費用として計算する。そのうえで、雇用や研修、地域の事業が生む社会への価値と比べ、全体として社会にプラスの影響を与えていると結論づけた。2021年の研修は約5万4,372時間で、そのうち38%が持続可能性の研修にあてられた。
お金はどこへ向かったのか
2021年の報告書は、負担金が向かった先を一つずつ挙げている。
一つ目は、ミャンマーのかまどだ。燃料の少ないかまどを広める取り組みは、ミャンマーで初めて、国際的な認証制度であるゴールド・スタンダードの炭素クレジットを得た事業になった。800の村で17万人がかまどを使い、800の販売者が育った。減らした二酸化炭素は32万トンになる。家計が助かり、森が守られ、家の中の煙が大きく減る。
二つ目は、北タイの森だ。2011年から、荒れた森の土地300エーカーで、90種類の地元の木を合わせて51万1,920本植えてきた。将来にわたって25万5,000トンの二酸化炭素を減らす見込みだ。
三つ目は、ダルフールのかまどだ。2012年の初めに始まり、2万7,000の家族に燃料の少ないかまどを届けた。薪を探しに危険な場所へ出かける時間が減り、家の中の空気も良くなる。
四つ目は、風だ。2008年、南インドのタミル・ナードゥ州に出力1.5メガワットの風車を建てた。減らす二酸化炭素は7万トンとされる。
ソネバは同じ2008年の10月、輸入のペットボトルの水をやめ、リゾートでつくった水を繰り返し使えるガラスの瓶で出すようにした。報告書によると、11年間で220万本のペットボトルが埋め立てに回らずにすんだ。水の売上の大きな部分も財団を通じて使われ、53か国の493の事業で、75万人を超える人が安全な水を使えるようになった。
報告書によると、財団の事業は30万人を超える人の暮らしを良くしてきた。報告の対象となった2021年、ソネバはモルディブとタイでリゾートを運営していた。北タイの森は、その足元の国での取り組みでもある。
日本の宿に置き換えると
ソネバの仕組みの要は、割合を先に決めたことにある。売上が増えれば、環境に回るお金も自然に増える。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、30室の宿で、1室1泊の平均の売上を2万円、稼働率を65%とする。年に約7,118室泊で、客室の売上は約1億4,235万円。その2%を取り分けると、年に約285万円になる。
このうち100万円を地元の里山の手入れと苗木に、100万円を町内の古い家の断熱の手伝いに、残りの約85万円を生ごみを堆肥にする機械に充てる、といった分け方が考えられる。使い道と結果を毎年、宿のサイトで報告すれば、客は自分の泊まったお金の行き先を確かめられる。
ソネバの報告書は、排出を数え、減らせない分を負担金で埋め、その結果を数字で示してきた。2%という小さな割合が、森やかまどという形で、遠い場所の暮らしに届いている。
持ち帰れる知識
- 客の移動による排出まで数えると、宿の責任の範囲が見えてくる
- 売上に対する割合で決めると、事業の成長とともに環境への資金も増える
- お金の行き先を事業ごとに示すと、客に説明しやすくなる
- 遠い場所の事業でも、暮らしの改善と排出の削減を同時にねらえる
宿で考えられること
- 宿の排出に、客の移動をどこまで含めるかを考えてみる
- 売上の何%なら無理なく取り分けられるかを試算してみる
- 使い道と結果を、毎年客に報告する方法を考えてみる
事業・予約への接続
ソネバは、自社の小さなやり方の工夫によって、社会に良い影響を与えながら、客に特別な体験を届け、利益も上げられることを示してきたとしている。
Sources / 参考情報
- UN Global Compact(英文) - ソネバ・リゾーツ 2021年の進捗報告(2022年12月公表、対象期間2021年1〜12月)
裏付け: 2008年の2%の負担金、基金1,000万ドル超、50万8,511トンの削減、2021年の排出6万4,460トン、客の飛行機が排出の65%、2012年からのカーボンニュートラル、創業者による財団の設立、財務の責任者が最終的な責任を負う、ミャンマーのかまど(ゴールド・スタンダード、800の村、17万人、800の販売者、32万トン)、北タイの森(2011年から、51万1,920本、90種類、300エーカー、25万5,000トン)、ダルフールのかまど(2012年初め、2万7,000家族)、タミル・ナードゥ州の1.5メガワットの風車(2008年、7万トン)、2008年10月のペットボトルの水の廃止、53か国493事業で75万人超、30万人超の暮らしの改善、モルディブとタイの拠点、トータル・インパクト・アセスメント(業界初、仕入れ先と客の飛行機を含む、社会にプラスの影響)、2021年の研修約5万4,372時間のうち38%が持続可能性、11年間で220万本のペットボトル - UN Global Compact(英文) - ソネバ・リゾーツの進捗報告(2018年の数値)
裏付け: 2008年に客室の売上の2%の負担金を導入(参考)