GOAL 14 · TARGET 14.5 自然・生物多様性・保全 3分 / 2063文字 漁場を閉じて増やす #054

サメのヒレを切る場所だった島が、海を守る拠点に:インドネシアのミスールが、1,220平方キロの海を自分たちで見回る理由

インドネシアの東の端、ラジャ・アンパットの南に、バトビティムという小さな島がある。2005年、ダイビングに親しんでいたアンドリュー・マイナーズとマリット・マイナーズは、この島で、使われなくなったばかりのサメ漁のキャンプを見つけた。サメを捕ってヒレだけを切り取るための場所だった。

二人は地元の氏族に、島に保全の拠点をつくらせてほしいと願い出た。長老たちの許しを得て、建設が始まった。2008年、島はリゾート「ミスール」として最初の客を迎えた。

たとえば、夕方の桟橋。日に焼けたレンジャーが巡回の船から降りてきて、その日の海の様子を伝える。ここでは、海を見回る人たちも宿の物語の一部だ。

海を借りて、漁を止める

ミスールの中心にあるのは、宿の前に広がる海だ。財団の公式サイトによると、2005年、地元の人たちとリゾートが組み、この地域で初めての「禁漁区」が生まれた。

その後、保護区は広がり、今では30万エーカー、1,220平方キロの海を覆う。二つの禁漁区と、それをつなぐ、使える漁具を限った外洋の回廊からできていて、すべて地元の村から直接借りている。禁漁区の中では、魚を捕ること、ウミガメの卵を集めること、爆薬や毒を使う漁、網を使う漁、サメのヒレを切ることが禁じられている。例外は、貝を素潜りで定期的にとる、地元に伝わる慣習だけだ。保護区は、政府が管理するラジャ・アンパットの海洋保護区の網の中にある。

ルールを守らせるのは、18人の地元のレンジャーだ。3つの基地を5隻の船で行き来し、24時間、海を見張る。巡回は年に1,000回を超え、毎年およそ60隻の違法な漁船を止めている。浜ではウミガメの巣を守り、流れ着いたごみも拾う。リゾートの方針によると、レンジャーが見守る浜は保護区の中に41あり、その多くは絶滅のおそれのあるウミガメが卵を産む場所だ。子ガメがかえると、陸の捕食者から守り、無事に海へ送り出す。リゾートの紹介によると、レンジャーの多くは、かつてサメを捕っていた人たちだ。

魚もサメもマンタも増えた

守った海は、数字で応えている。財団は2007年から、保護区の中のいくつかの場所で魚の量を調べてきた。2007年から2021年の間に、魚の量は平均で248%増えた。水中にカメラを沈めて撮る調査では、保護区の中のサメの数は2012年から190%増えている。ミスールのマンタの群れは10年で2倍になり、財団の記録には1,730匹が登録されている。

海洋生物学者のマーク・アードマンは2017年、ミスールの海を、生き物の多様さが減るのではなく増えている、世界でも数少ない場所の一つだと評価した。2017年には、世界旅行ツーリズム協議会から「ツーリズム・フォー・トゥモロー賞」も受けている。

宿が財団を支える仕組み

この活動を支えるお金は、宿から生まれる。2011年、保護区とほかの保全の活動は、インドネシアの登録慈善団体「ミスール財団」にまとめられた。

リゾートの方針によると、宿は財団の運営費のおよそ30%を毎年出し、助成金が途切れたときの支えにもなっている。客1人あたり100ドルを財団に寄付し、客にも同じ額の寄付を呼びかける。客などからの寄付は、年に平均でおよそ35万ドルになる。宿に泊まれるのは最大40人で、スタッフは客の4倍。年に1,000人近い客を迎え、リゾートと財団で約200人が働いている。

宿は、ほかの船にも海の守り方を求めている。訪れる船のために、潜る場所の使い方や錨の下ろし方、ごみの扱いを定めた決まりをつくり、泊まりがけのダイビング船とは毎日の潜る予定を調整して、サンゴ礁に人が集まりすぎないようにしている。2018年にはサンゴに害があるとされる成分を含む日焼け止めを禁じ、保護区の中では水上バイクのような動力を使う遊びも認めていない。

宿の暮らしも、海に合わせている。建物は、島で自分たちで製材した再生の木だけで建て、建設の初めに木を切り倒すことも、材木を買うこともなかった。レストランで出す魚は、保護区の外で一本釣りされたものだけで、エビは出さず、パーム油も使わない。電気は2017年に入れた太陽光発電でまかない、シーズン中は大部分を再生可能エネルギーで、3か月の整備の期間は100%再生可能エネルギーで動かす。水のおよそ60%は雨水だ。

日本の宿に置き換えると

ミスールの仕組みは、客1人ごとの寄付と、客への呼びかけを組み合わせている。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、15室の宿で、1室に平均1.8人、稼働率を60%とする。年に3,285室泊で、客は約5,913人。宿が客1人あたり300円を地元の藻場や漁場の保全団体に寄付すると、年に約177万円になる。客にも同じ額を呼びかけ、3人に1人が応じれば、約59万円が加わり、合わせて約237万円になる。

ミスールは、海を閉じることで、海を豊かにした。宿の価値が海の健康にかかっているからこそ、宿は海を守るお金を出し続けている。

持ち帰れる知識

  • 海を地元から借りて守ると、地元と保全の利益がそろう
  • 見回る人を地元から雇うと、守る力と仕事が同時に生まれる
  • 調査を続けると、守った成果を数字で示せる
  • 宿の価値が自然にかかっているなら、保全は事業を守る投資になる

宿で考えられること

  • 宿の価値を支えている自然を書き出してみる
  • 客1人あたりの寄付と、客への呼びかけを組み合わせてみる
  • 地元の保全団体の活動を、客に紹介する場をつくってみる

事業・予約への接続

財団によると、リゾートは豊かなサンゴ礁を中心の資産とする営利の事業で、大型の生き物が増えるほどエコツーリズムの客と収入が増え、それが再び教育と保全に回る仕組みになっている。

Sources / 参考情報

  • Misool Foundation(英文) - ミスール海洋保護区
    裏付け: 2005年に地元とリゾートが組んで地域初の禁漁区、30万エーカー・1,220平方キロ、二つの禁漁区と回廊、村から直接借りる、禁止される行為、貝の素潜りの慣習の例外、政府の海洋保護区の網の中、18人のレンジャー・3つの基地・5隻の船・24時間、年1,000回超の巡回、年およそ60隻、ウミガメの巣とごみ、2007〜2021年で248%、2012年から190%、マンタが10年で2倍・1,730匹
  • Misool Foundation(英文) - ミスール・リゾートとの協力
    裏付け: 地元から借りた土地のサメ漁のキャンプ跡、年1,000人近い客、サンゴ礁を中心の資産とする営利の事業、大型の生き物と収入の循環
  • Misool(英文) - 私たちの物語
    裏付け: 2005年にサメ漁のキャンプを発見、氏族の許し、2008年の開業、レンジャーの多くがかつてサメを捕っていた、2011年の財団の設立、アードマンの2017年の評価、2017年のツーリズム・フォー・トゥモロー賞
  • Misool(英文) - 公式サイト
    裏付け: 最大40人、スタッフは客の4倍
  • Misool(英文) - 再生型の観光の方針 2026(PDF)
    裏付け: 運営費の約30%、客1人あたり100ドルと同額の呼びかけ、寄付は年平均約35万ドル、約200人が働く、再生の木を島で製材・木を切らず材木を買わない、保護区の外の一本釣り、エビとパーム油を使わない、2017年の太陽光発電、シーズン中は大部分・整備の3か月は100%再生可能エネルギー、水の約60%が雨水、レンジャーが見守る41の浜と子ガメの保護、訪れる船の決まり、ダイビング船との予定の調整、2018年の日焼け止めの禁止、動力を使う遊びを認めない

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