GOAL 6 · TARGET 6.1 水・衛生・循環 3分 / 2003文字 水を掘って病を減らす #055

最初の仕事は、井戸を掘ることだった:スンバ島のリゾートNIHIから生まれた財団が、4万8,000人に水を届ける理由

インドネシアのスンバ島。1980年代の終わり、クロード・グレイヴスとペトラ・グレイヴスはこの島に移り住み、のちにリゾート「ニヒワトゥ」(現在のNIHI Sumba)となる宿をつくり始めた。

スンバ財団の公式サイトによると、宿づくりの初めのころ(1988〜1994年)、二人は周りの村の人たちとほとんど同じ暮らしをしていた。水道も電気もなく、近くに診療所もない。二人ともマラリアに何十回もかかった。

その経験から、二人は宿を、豪華な滞在の場であると同時に、地域の困りごとに応える手段にしようと考えた。そして最初に取り組んだのが、水だった。

たとえば、村の外れにできた給水所。以前は遠くまで水をくみに歩いていた女性が、桶を置いて、蛇口をひねる。浮いた時間は、機織りや子どもの世話に回せる。

宿の客が、財団の始まりをつくった

二人は開業のころから、宿の客に村の暮らしを良くする取り組みへの参加を呼びかけていた。2001年、客として訪れていたショーン・ダウンズが、クロードの書いた20年分の財団の事業計画を読み、手を貸すと申し出た。こうして、アメリカの非営利団体としてスンバ財団が生まれた。

財団のねらいは、スンバの人たちが抱える貧しさの重荷を軽くすることだ。最初の水の事業は、その年に始まった。NIHIの紹介によると、財団はまず、地下450フィートまで掘れる掘削機を買うところから始めた。

井戸と管と給水所で、毎日130万リットル

スンバ島では、水の確保が難しい。財団によると、土が水を通しやすく、雨の季節も短いため、真水が手に入りにくい。女性と子どもは毎日、遠くまで歩いて水を運んできた。

財団は2001年から、井戸を掘り、管を引き、村のすぐ外に給水所をつくってきた。新しい地域に入るときは、いつも水の事業から始める。財団の公式サイトによると、これまでに105の井戸、115のポンプ、392の給水所、1,300キロの管をつくった。269のタンクには毎日127万9,500リットルの水が満たされ、4万8,000人が毎日きれいな水を使えるようになっている。417の村の3,904の家が、この水の仕組みに支えられている。

水は学校や診療所にも届く。財団は、47の学校と9つの診療所に、合わせて123のトイレをつくった。水が近くにあれば、子どもは水くみのために学校を休まなくてよくなる。

水の次は、病気と食事と学び

水の上に、ほかの取り組みが積み重なっていった。2004年、医師のクラウス・ボーが加わり、マラリアを減らす事業が始まった。財団は、無料の検査と治療、村ごとの血液の検査、蚊帳の配布を進め、最初に取り組んだ地域でマラリアを94%減らした。島全体でマラリアが71%減ったことにも貢献したとしている。

財団は今、5つの診療所を運営している。医師や看護師、助産師など38人が働き、診察も治療もすべて無料だ。30キロ離れた地域から通ってくる患者もいる。これまでに48万5,283人を治療し、直接の手当てで535人の命を救ったとしている。2015年には、持ち運べる超音波の機械を買い、妊婦の検診を始めた。これまでに1,890人の妊婦を調べ、重い合併症に気づかれていなかった22人を病院へ送った。2022年からは、栄養が足りずに命の危険がある妊婦に、出産の前後6か月ずつ、たんぱく質の多い食べ物を届ける取り組みも始めた。遠い村を回って、助けが必要な母親を探し出している。目の治療にも力を入れ、1,186件の手術を行い、1万4,182本の眼鏡を届けている。

学校の昼食は、これまでに183万2,292食を配った。2017年11月には、NIHIの客の助けを借りて、小学生向けの最初の英語の教室を開いた。観光の仕事に就く力をつけるためだ。今では16人の英語の先生が、39の地元の学校で1万9,026人の子どもに英語を教えてきた。宿の近くのホバワウィには、竹で建てた学びの場もでき、放課後の英語やコンピューターの教室、健康と衛生の授業、図書館が一つの建物に集まっている。

NIHIは今も、財団の活動を見に行く体験を客に案内している。宿は、客と地域をつなぐ入り口になっている。

日本の宿に置き換えると

日本では、蛇口をひねれば水が出る。それでも、地域の困りごとの一つに、宿が長く関わることはできる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿で稼働率を70%とすると、年に5,110室泊。1室泊あたり500円を地域の基金に積み立てると、年に255万5,000円になる。10年続ければ2,555万円だ。たとえば、高齢者の買い物の足や、子どもの居場所づくりなど、一つのテーマに絞って使えば、変化を確かめやすい。

グレイヴス夫妻は、まず水から始めた。暮らしの土台を整えたことで、健康や学びの取り組みが根を張れるようになった。

持ち帰れる知識

  • 地域の暮らしの土台から始めると、ほかの取り組みが根を張りやすい
  • 創業者が地域と同じ暮らしを知っていると、本当に必要なものが見えてくる
  • 宿の客は、寄付や参加を通じて地域の支え手になりうる
  • 長い期間の計画を立てると、事業を順に積み上げられる

宿で考えられること

  • 地域で長く困っていることを、地元の人に聞いてみる
  • 宿の売上の一部を、一つのテーマに長く積み立ててみる
  • 地域の取り組みを客に紹介し、参加できる形をつくってみる

事業・予約への接続

財団によると、グレイヴス夫妻はニヒワトゥを、豪華な宿であると同時に、周りの地域の必要に応える手段として思い描いていた。

Sources / 参考情報

  • Sumba Foundation(英文) - 私たちについて
    裏付け: グレイヴス夫妻の移住とニヒワトゥ、開発のころの暮らし(水道・電気・診療所なし、マラリアに何十回も)、宿を地域の必要に応える手段と考えた、客への呼びかけ、2001年のショーン・ダウンズと20年の事業計画、アメリカの非営利団体としての設立、その年の最初の水の事業、貧しさの重荷を軽くする使命、2004年のクラウス・ボーとマラリア事業、2017年11月の英語の教室と観光の仕事、16人の先生・39の学校・1万9,026人、ホバワウィの竹の学びの場(英語・コンピューター・健康と衛生・図書館)
  • Sumba Foundation(英文) - 水の事業
    裏付け: 土が水を通しやすく雨の季節が短い、2001年から、水の事業から始める、105の井戸・115のポンプ・392の給水所・1,300キロの管、269のタンクと127万9,500リットル、4万8,000人、417の村の3,904の家、47の学校と9つの診療所に123のトイレ
  • Sumba Foundation(英文) - 健康の事業
    裏付け: 2004年からのマラリア事業、94%、島全体の71%への貢献、無料の検査・治療・蚊帳、5つの診療所、38人のスタッフ、すべて無料、30キロ離れた地域からの患者、2015年の超音波の機械と1,890人の妊婦、22人の合併症、2022年からの妊婦への食べ物(出産の前後6か月)、1万4,182本の眼鏡
  • Sumba Foundation(英文) - 活動の成果
    裏付け: 48万5,283人の治療、535人の命、5つの診療所、1,186件の目の手術
  • Sumba Foundation(英文) - 公式サイト
    裏付け: 183万2,292食の昼食
  • NIHI(英文) - スンバ財団
    裏付け: 開発の時期(1988〜1994年)、地下450フィートまで掘れる掘削機、NIHIの客の助けで最初の英語の教室(このページの水や医療の数値は、財団の公式サイトより古いものとみられるため、本文では財団の公式サイトの数値を使った)
  • NIHI(英文) - スンバ財団を訪ねる体験
    裏付け: 客に財団の活動を見に行く体験を案内

関連する記事