GOAL 15 · TARGET 15.2 水・衛生・循環 3分 / 2017文字 植生を預けて建てる #059

植物を温室に預けてから建てた:チリのティエラ・パタゴニアが、国立公園に木を植え直す取り組みを支える理由

南米チリの南の果て、パタゴニア。トーレス・デル・パイネ国立公園のそばのサルミエント湖のほとりに、「ティエラ・パタゴニア」がある。40室のホテルだ。

建物は、地元の森から持続可能な方法で切り出した「レンガ」という木で建てられている。風に削られたような形で、湖のほとりに寝そべる大昔の動物のようにも見える。

このホテルは、建てる前に、敷地の植物をすべて掘り上げ、温室に預けた。

たとえば、朝食の時間。大きな窓の外、ホテルのまわりの低い茂みを、野生の動物がゆっくりと横切っていく。その足元の植物は、建物ができるまで、温室で待っていたものだ。

公園の入り口に建つということ

ホテルの公式サイトによると、トーレス・デル・パイネ国立公園は、ユネスコの生物圏保護区で、広さは2,400平方キロメートルに及ぶ。氷河が削った大地に、草原、青い湖、氷河、森、花こう岩の峰が連なり、グアナコ、コンドル、ピューマ、レアといった野生の生き物が暮らす。公園には、グレイ、ピンゴ、フレンチ、ディクソンという四つの大きな氷河もある。

こうした場所に宿を建てれば、どうしても土地を削り、植物を傷つける。ティエラ・パタゴニアは、その影響をできるだけ小さくする方法を選んだ。

掘り上げ、預け、植え戻す

公式サイトによると、建設のあいだの環境への影響を抑えるため、ランドスケープの専門家たちは、敷地の植物をすべて取り除き、温室で一時的に育てた。そして建物が完成すると、それらをホテルのまわりに植え戻した。

その結果、ホテルのまわりには、この土地で暮らす野生の動物がたびたび訪れるようになった、とホテルは説明している。もともとの植物が戻れば、それを頼りにする生き物も戻ってくる。

建物もまた、風景を乱さないように考えられている。設計したのはチリの建築家カスー・セゲールスと、ロドリゴ・フェレール、ロベルト・ベナベンテ。レンガの木でつくった建物は、厳しい風雨から人を守りながら、風景に溶け込み、目立ちすぎないように設計された。館内でも、曲線を描くレンガの天井が、あたたかい光に包まれている。

エネルギーの使い方も工夫している。太陽光パネル、LEDの照明を使い、建物の熱の出入りをきめ細かく管理して、使うエネルギーを減らす。使い捨てのプラスチックをなくし、環境に配慮した外出のプログラムを組んでいる。

100万本を植える取り組みを支える

ティエラ・パタゴニアは、チリ・パタゴニアの国立公園に100万本の木を植える植林の取り組みを、積極的に支援している。

パタゴニアの森は、一度失われると、元に戻るまでに長い時間がかかる。チリのニュースサイト「エル・モストラドール」によると、トーレス・デル・パイネ国立公園では、2011年12月の山火事が、チリで記録された最大級の生態系の災害の一つとなった。チリの国の森林機関CONAFは、2012年から、この公園で燃えた場所を回復させる計画を進めている。そこで植えられている木の一つが、チリの南の寒い地方の森を代表する在来の木、レンガである。

同じ記事によると、CONAFと、この山火事をきっかけに生まれた団体「レフォレステモス」は、2026年に協力の約束を更新した。2027年10月までに、レンガの苗1万500本を植え、山火事の被害を受けた3.5ヘクタールを回復させる計画だ。レフォレステモスは資金、苗づくり、現地での作業を支える。山火事から10年以上たっても、森を戻す作業は続いている。

ホテルを建てた木と、公園で植え直されている木は、同じ種類だ。木を使って建てた宿が、木を植える取り組みを支える。そう考えると、この二つは一本の線でつながる。

食事にも、土地とのつながりがある。料理には、ホテルを囲む近くの牧場「エスタンシア」の食材を使う。ホテルはこうした牧場と協力し、地元のカウボーイ「ガウチョ」と馬で草原を進む体験も用意している。この地方を移動しながら暮らした先住民アオニケンクの狩りの道をたどり、昔の洞窟の壁画を見る散策もある。

ホテルは地元で育った食材をできるだけ仕入れ、地元の農家を支えている。名物の「カラファテ・サワー」には、チリとアルゼンチンのパタゴニアにしか育たない低木カラファテの実を使う。

日本の宿に置き換えると

ティエラ・パタゴニアのように、宿を建てるときや改装するときに、もともとの植物を残すこと、地域の森を育てる活動を支えることは、日本の宿でも考えられる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿で稼働率を70%とすると、年に5,110室泊。1室泊につき100円を、地域の森づくりの団体に寄付するとする。年に51万1,000円になり、苗木1本を500円とすると、1,022本分にあたる。どこに、どんな木が植えられたかを客室やウェブサイトで伝えれば、泊まった人が、その森を見に戻ってくるきっかけにもなる。

持ち帰れる知識

  • 建てる前に植物を掘り上げて預ければ、工事のあとに元の植物を戻せる
  • もともとの植物が戻ると、それを頼りにする生き物も戻ってくる
  • 木を使う宿は、木を植える取り組みを支えることで、森との関係を循環させられる
  • 近くの牧場や農家と組めば、食事と体験の両方で土地とつながれる

宿で考えられること

  • 改装の計画があれば、残せる木や草花がないか、工事の前に調べてみる
  • 地域で森を育てている団体を探し、宿として支えられることを相談してみる
  • 宿の建物や家具に使われている木が、どこから来たのかを調べて、客に伝えてみる

事業・予約への接続

ティエラ・パタゴニアは、植物を植え戻した結果、野生の動物がたびたび訪れるようになったと説明している。窓の外に生き物が現れる宿であることが、そのまま宿の魅力になっている。

Sources / 参考情報

  • Tierra Patagonia(英文) - ロッジ
    裏付け: 建設中の影響を抑えるため敷地の植物をすべて取り除き温室で育て完成後に植え戻した、野生の動物がたびたび訪れる、太陽光パネル・LEDの照明・熱の効率の管理、環境に配慮した外出と使い捨てのプラスチックの廃止、チリ・パタゴニアの国立公園に100万本の木を植える植林の取り組みの支援、カスー・セゲールスとロドリゴ・フェレール、ロベルト・ベナベンテ、地元の森から持続可能な方法で切り出したレンガの木、風に削られたような形と湖のほとりの大昔の動物、風雨から守り風景に溶け込む設計、曲線を描くレンガの天井、40室、サルミエント湖、近くのエスタンシアの食材
  • Tierra Patagonia(英文) - 目的地
    裏付け: ユネスコの生物圏保護区、2,400平方キロメートル、氷河が削った大地、グアナコ・コンドル・ピューマ・レア、グレイ・ピンゴ・フレンチ・ディクソンの四つの氷河、エスタンシアと協力したガウチョとの乗馬、アオニケンクの狩りの道と洞窟の壁画、地元で育った食材をできるだけ仕入れ地元の農家を支える、カラファテ・サワーとチリとアルゼンチンのパタゴニアにしか育たないカラファテの実
  • エル・モストラドール(スペイン語) - レフォレステモスとCONAF、トーレス・デル・パイネ国立公園の回復で協力を更新(2026年6月28日)
    裏付け: 2011年12月の山火事がチリで記録された最大級の生態系の災害の一つ、CONAFが2012年から公園で回復の計画を進めている、植えられている木の一つが南の寒い地方の森を代表する在来の木レンガ、レフォレステモスは山火事をきっかけに生まれた、2026年の更新、2027年10月までに1万500本と3.5ヘクタール、資金・苗づくり・現地での作業の支援

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