GOAL 15 · TARGET 15.5 自然・生物多様性・保全 3分 / 2042文字 支柱で浮かせて森と共生する #066

森の床に触れずに建てる:イグアスのアワシが、消えゆく大西洋岸森林を守る理由

アルゼンチン北部、ブラジルとパラグアイとの国境に近いミシオネス州。世界有数の滝、イグアスの滝から車で15分ほどのイグアス川のほとりに、「アワシ・イグアス」がある。

まわりに広がるのは、「大西洋岸森林」と呼ばれる熱帯の森だ。アワシによると、ロッジはこの森の最後に残された場所のひとつにあり、アルゼンチンで最も生き物が豊かな地域のひとつ。鳥やチョウを観察するには、世界でも指折りの場所だという。まわりでは、オオハシ、オウム、ハチドリ、チョウ、サル、ハナグマなどに出会える。見られる生き物は、季節や自然の状態によって変わる。

その森が、いま減っている。アワシは、まわりの地域では森林の伐採によって森が急速に減っていると説明している。

たとえば、朝。ヴィラのテラスに出ると、足元の下に、しっとりとした森の地面が見える。木々の間をオオハシが横切り、どこかでサルの声がする。客が立っているのは、地面ではなく、森の中に浮かんだ床の上だ。

支柱の上に建てる

アワシ・イグアスのヴィラは14棟。広さ100平方メートルの標準のヴィラが13棟と、寝室が二つある120平方メートルの「マスター・ヴィラ」が1棟だ。どのヴィラにも、広い居間と、デッキと、小さなプールがある。

ヴィラは、森の中に離れて点在し、それぞれが支柱の上に建てられている。公式サイトによると、環境への影響を最小限にするためだ。ヴィラと本館は石の小道でつながり、まわりは深い森の葉に包まれている。

昼食を楽しむ屋外のテラスも、森の地面の上に支柱で持ち上げられている。イグアス川を見下ろす木々のてっぺんには、網を張った「ツリーネット」があり、客は寝転がって森の上の方を眺められる。

なぜ支柱の上に建てるのか。一般に、建物を支柱で持ち上げれば、建物が森の地面に触れる部分は小さくなる。森の土や、木の根や、小さな生き物の暮らしを、それだけ傷めずにすむ。森の中に泊まりながら、森をできるだけそのままにしておく。そのための建て方だ。

森の生き物を、地元の人たちと守る

アワシは、この森を守ることに力を注いでいる。その方法は、地元の団体と直接手を組むことだ。

公式サイトによると、アワシは、野生の動物を保護し、けがや病気から回復させ、自然に帰す活動をしている地元の団体に寄付をし、協力している。さらに、地元の生き物の様子を見守り、追跡する活動を手伝い、狩りや密猟をする人たちを森から遠ざけるために、当局にも協力している。

客は、こうした保護された場所を訪ね、在来の生き物を自然の中に戻す活動に加わることもできる。

森を知る外出

客は、森とそこで続く保全の取り組みに、さまざまな形で触れられる。外出はすべて、ヴィラごとに専属のガイドがつく、その客だけのものだ。ロッジの専用の桟橋からボートで川へ出て、人目につかない「ヤシの滝」を訪ねることもできる。

ロッジから10分ほどの「ハチドリの庭」では、在来の植物と給餌器に集まる何種類ものハチドリを、すぐ近くで観察できる。「ギラ・オガ」は、ミシオネス州の在来の動物を保護し、回復させるための施設だ。ここを訪ねると、地元で続く保全の取り組みを知り、在来の生き物を間近に見られる。プエルト・ペニンスラ州立公園では、森の中を歩きながら生き物の痕跡を探し、自動で撮影するカメラがとらえた、ふだんは人目につかない動物たちの姿も見られる。

この土地にもともと暮らしてきたムビャ・グアラニーの人々の村も訪ねられる。アワシは、彼らを「イグアスの守り手」と紹介している。地元のガイドの案内で、彼らの世界の見方、伝統的な狩りの技、薬になる植物、森の素材でつくる工芸を学ぶ。

食卓にも、この土地が映る。ミシオネス州で生まれたシェフ、マウリシオ・アルベスは、地域の食材と、この地方の料理の伝統を生かした料理をつくる。

アワシは地域とのつながりも大切にしている。ロッジから10分ほどのプエルト・イグアスにある、障がいのある子どもや若者のための教育施設「インスティトゥト・エスペランサ」とは、ともに歩む取り組みを進めている。

アワシの名は、南米の先住民の言葉ケチュア語で「家」を意味する「ワシ」に由来する。古い友人の家に招かれたように過ごしてほしい、という思いが込められている。アワシは、自然への深い敬意を土台に、環境への影響が小さい外出と、環境に配慮した運営を進めてきたという。

日本の宿に置き換えると

アワシのように、宿のまわりの自然を守る地元の団体と組み、客をその活動につなぐことは、日本の宿でもできる。野鳥の会、里山を守る団体、川の清掃を続ける人たち。宿の近くにも、仲間はいるはずだ。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、地元の自然保護団体の施設を訪ねる外出を宿で用意し、参加者1人あたり1,000円を団体に寄付するとする。年に600人が参加すれば、寄付は年に60万円になる。客は地域の自然を深く知り、団体は活動の資金を得られる。

持ち帰れる知識

  • 建て方を工夫すれば、森の地面を傷めずに泊まる場所をつくれる
  • 宿だけで守ろうとせず、地元の団体と組む方法がある
  • 保全の現場を訪ねることが、客にとって忘れられない体験になる
  • 土地にもともと暮らしてきた人々の知恵も、森を知る大切な入り口になる

宿で考えられること

  • 宿の近くで自然を守っている団体を調べてみる
  • その活動を客に紹介したり、一緒に訪ねたりできないか相談してみる
  • 増築や改修のとき、地面や木々を傷めない建て方を考えてみる

事業・予約への接続

アワシ・イグアスは、森の中に浮かぶヴィラと、森を守る人たちに会う外出を組み合わせている。守っている自然そのものが、客をこの宿に呼ぶ理由になっている。

Sources / 参考情報

  • Awasi(英文) - 自然を育む
    裏付け: アワシ・イグアスは大西洋岸森林の最後に残された場所のひとつ、アルゼンチンで最も生き物が豊かな地域のひとつ、鳥とチョウの観察で世界有数、まわりの地域では伐採で森が急速に減っている、保護・回復・野生復帰を行う地元の団体への寄付と協力、生き物の見守りと追跡、狩りや密猟をする人を遠ざけるための当局への協力、客が保護された場所を訪ね在来種を戻す活動に加われる
  • Awasi Iguazú(英文) - 客室
    裏付け: イグアス川のほとり、標準のヴィラ13棟(100平方メートル)と寝室二つのマスター・ヴィラ(120平方メートル)、居間・デッキ・プール、石の小道で本館とつながる、深い森の葉、支柱で森の地面の上に持ち上げた屋外テラス、木々のてっぺんのツリーネット
  • Awasi Iguazú(英文) - 標準のヴィラ
    裏付け: 環境への影響を最小限にするため支柱の上に建て、森の中に点在させた
  • Awasi Iguazú(英文) - よくある質問
    裏付け: 保護された大西洋岸森林の中、国立公園の中ではない、イグアスの滝から15分、オオハシ・オウム・ハチドリ・チョウ・サル・ハナグマなど、見られる生き物は季節や自然の状態で変わる、ヴィラは14棟(標準13棟とマスター・ヴィラ1棟)、外出はすべてその客だけのもので、ヴィラごとに専属のガイドと四輪駆動車
  • Awasi Iguazú(英文) - 体験
    裏付け: ロッジから10分のハチドリの庭、ギラ・オガはミシオネス州の在来の動物の保護と回復の施設で地元の保全の取り組みを知れる、プエルト・ペニンスラ州立公園の生き物の痕跡と自動撮影カメラの写真、ロッジの桟橋からボートでパラナ川へ出てヤシの滝へ、ムビャ・グアラニーの人々は土地にもともと暮らしイグアスの守り手、地元のガイド・世界の見方・伝統的な狩りの技・薬になる植物・森の素材の工芸
  • Awasi Iguazú(英文) - ホーム
    裏付け: ミシオネス州生まれのシェフ、マウリシオ・アルベスと地域の料理の伝統
  • Awasi(英文) - 私たちの歩み
    裏付け: プエルト・イグアス(アワシ・イグアスから10分)の、障がいのある子どもや若者のための教育施設インスティトゥト・エスペランサとの取り組み、名前はケチュア語の「ワシ(家)」から、古い友人の家のように感じられる宿、自然への敬意と環境への影響が小さい外出・環境に配慮した運営

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