GOAL 12 · TARGET 12.2 水・衛生・循環 3分 / 2047文字 火山に建てて水を回す #067

牛の牧場を、ゾウガメの森に戻す:ガラパゴスのピカイア・ロッジが、雨水と太陽で暮らす理由

南米エクアドルの沖、およそ1,000キロ。太平洋に浮かぶガラパゴス諸島は、ここにしかいない生き物が暮らす島々として知られる。その中心にあるサンタクルス島の、すでに活動を終えた火山の火口のふちに、「ピカイア・ロッジ」が建っている。

客室は14室。どの部屋からも、太平洋と、ガラパゴス国立公園の草原と、火山の峰が見渡せる。床は竹、浴室はトラバーチンという石でつくられ、床から天井までの大きな窓が景色を切り取る。ピカイアによると、諸島で唯一の「ルレ・エ・シャトー」の加盟ホテルだ。設計者たちは、建物が景色の中に消えるように溶け込み、同時に客からは景色がすべて見えるようにすることを目指したという。

ピカイアは、ガラパゴスの未来は、注意深く管理された観光にかかっていると考えている。長いあいだ、自然を守ることと経済の発展は両立しないと思われてきた。しかし、きちんと決まりのもとで行われる観光は、自然を守る最も強い動機のひとつになる、とピカイアは説明する。

たとえば、雨の日の午後。屋根を打つ雨の音を聞きながら、客はラウンジで本を開く。その雨は、屋根から集められ、きれいにされて、夜には客室のシャワーから流れ出す。

水は、島でいちばん限られた資源

ガラパゴスで暮らすとき、最初に向き合うのは水だ。ピカイアは、真水は諸島で最も限られた資源のひとつであり、水を上手に使うことを最優先にしていると説明する。

ロッジの屋根は、雨水を集めるように設計されている。集めた雨水は、ごく細かい膜で不純物をこし取る「逆浸透」、紫外線、オゾンの三つの方法できれいにされ、ロッジ全体で使われる。これによって、ペットボトルの水に頼ることを減らし、余計なプラスチックのごみも減らしている。さらに、水を節約する設備を取り入れ、客の快適さを損なわずに、使う量を減らしている。

赤道の太陽と風を生かす

ロッジは、赤道の自然と調和して働くように設計された。建物は、自然の光と風をできるだけ取り込むようにつくられ、照明や機械による冷房の必要を減らしている。

さらに、太陽の熱でお湯をつくる設備と、太陽の光で発電するパネルを使う。日差しや風を考えて建物の向きを決め、機械に頼らずに涼しくする工夫と組み合わせることで、ロッジ全体のエネルギー使用量を大きく減らしているという。

設計は、エクアドルの建築家ウンベルト・「コロ」・プラサ。建物の中には、生き物の進化と、島々の成り立ちの歴史がさりげなく表現されている。ラウンジには、科学とガラパゴスについての本を集めた図書室があり、滞在の始まりには支配人が島々について紹介する。

牧場を、もとの森に戻す

ピカイアの土地には、もうひとつの物語がある。ここは、かつて牛の牧場だった。在来の植物は、牧草と外から持ち込まれた植物にほとんど置き換えられていた。

ピカイアは、土地を手に入れてから、大がかりな自然の回復に取り組んできた。ガラパゴスにしか生えない木を1万本以上植え直し、外から入ってきた植物を取り除いた。景色は少しずつ、もとの姿に戻りつつある。その結果はすでに目に見えている。野生のゾウガメと在来の鳥が戻ってきたのだ。

島の人と、島の食べ物で

ピカイアは、島の暮らしとも深くつながっている。ピカイアが取り入れているのは、島の宿に泊まりながら島々を巡る「陸を拠点にした観光」だ。客はロッジ専用の船で、一日に二つの島を、自然を案内するガイドと訪ね、夜はロッジに戻る。この形なら、客の使うお金が、地元の店、ガイド、交通の業者、そして家族へと広く行き渡る。ピカイアは、できるだけ地元のサービスを使い、すでにある業者と組むことで、観光の収入が地域に残るようにしている。ロッジは50人を超える人を常勤で雇い、その大半はサンタクルス島、とくに隣の農村エル・カスカホの出身だ。地元の学校に先生を1人増やすための費用を数年にわたって出し、道路の補修や村の教会の修復にも資材を提供してきた。地元の子どもたちを、ロッジの船で国立公園への学びの外出に招いてもいる。

料理も島のものだ。島の高地にある三つの農場と直接、継続して仕入れる約束を結び、魚介はプエルト・アヨラの二つの漁業協同組合から仕入れる。絶滅のおそれのある生き物は使わず、輸入品より地元の食材を優先し、食べ物を無駄にしない方針を守っている。料理長のクリスティアン・プエンテは、その日にとれた魚と地元の食材で、季節ごとに変わる料理をつくる。

日本の宿に置き換えると

ピカイアのように、屋根に降る雨を資源として使うことは、日本の宿でもできる。庭の水やりや、トイレを流す水に雨水を使う宿もある。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、屋根の面積を100平方メートル、年間の降水量を1,600ミリとすると、屋根には年に160立方メートルの雨が降る。その8割を集められれば、年に128立方メートル。庭の水やりやトイレに使えば、それだけ水道の水を使わずにすむ。

持ち帰れる知識

  • 水が限られた場所では、雨水が大切な資源になる
  • 建物の向きや窓の工夫で、エネルギーの使用を減らせる
  • 使われなくなった土地を、もとの自然に戻すことができる
  • 地元の人を雇い、地元の食材を使うことで、観光の利益が地域に残る

宿で考えられること

  • 宿の屋根に、年にどれくらいの雨が降るか計算してみる
  • 雨水を使える場所(庭、トイレ、清掃など)を考えてみる
  • 宿の敷地で、在来の植物を植えられる場所を探してみる

事業・予約への接続

ピカイア・ロッジは、雨水と太陽で暮らす建物と、森に戻りつつある土地を、客に伝えている。宿の仕組みそのものが、ガラパゴスを学ぶ体験の一部になっている。

Sources / 参考情報

  • Pikaia Lodge(英文) - サステナビリティ
    裏付け: 14室、建築家ウンベルト・「コロ」・プラサ、内装に種の進化と島の地質の歴史、真水は諸島で最も限られた資源のひとつで水の管理を優先、屋根で雨水を集め逆浸透・紫外線・オゾンで浄化しロッジ全体で使う、ペットボトルとプラスチックのごみを減らす、節水の設備、自然の光と風で照明と機械の冷房の必要を減らす、太陽熱の給湯と太陽光パネル、機械に頼らない冷却と建物の向きでエネルギー使用を大きく減らす、もとは在来の植物が牧草と外来の植物にほぼ置き換えられた牛の牧場、1万本以上の固有の木を植え直し外来種を除去、野生のゾウガメと在来の鳥が戻った、地元のサービスを優先する循環の考え方、陸を拠点にした観光で地元の店・ガイド・交通の業者・家族に利益が届く、観光の収入を地域に残す、ガラパゴスの未来は管理された観光にかかる、保全と経済は両立しないと思われてきたが決まりのもとの観光は保全の強い動機になる
  • Pikaia Lodge(英文) - ホーム
    裏付け: すでに活動を終えた火山の火口のふち、14室・4種類、太平洋・国立公園の草原・火山の峰の眺め、専用の船で一日に二つの島を自然を案内するガイドと訪ね夜はロッジへ、竹の床・トラバーチンの浴室・床から天井までの窓、エクアドルの沖1,000キロ
  • Pikaia Lodge(英文) - 客室と館内
    裏付け: サンタクルス島、諸島で唯一のルレ・エ・シャトー、科学とガラパゴスの本を集めた図書室、支配人による紹介、建物が景色に溶け込み客には景色がすべて見える設計、料理長クリスティアン・プエンテがその日の魚と地元の食材で変わる料理
  • Pikaia Lodge(英文) - 社会への責任
    裏付け: 50人を超える常勤の雇用、大半がサンタクルス島、とくに隣の農村エル・カスカホの出身、数年にわたり地元の学校の先生を1人増やす費用、道路の補修と村の教会の修復の資材、地元の子どもたちを船で国立公園へ、地元の農家の作物
  • Pikaia Lodge(英文) - 料理
    裏付け: 高地の三つの農場と直接継続して仕入れる約束、プエルト・アヨラの二つの漁業協同組合、絶滅のおそれのある生き物は使わない、輸入品より地元の食材を優先、食べ物を無駄にしない方針

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