土台は島の石で、島の人の手で:イースター島のエクスプローラが、世界で最も遠い島で資源を大切にする理由
南米大陸から西へ、およそ3,700キロ。太平洋にぽつんと浮かぶイースター島は、ラパ・ヌイとも呼ばれる。人が暮らす島としては、世界で最も遠く離れた場所のひとつだ。巨大な石像「モアイ」で知られるこの島の、唯一の町ハンガ・ロアの外れの草原に、「エクスプローラ・ラパ・ヌイ」がある。
客室は30室。木の内装の部屋から、太平洋や庭が見渡せる。設計したのは、チリの建築家ホセ・クルス・オバジェ。公式サイトによると、建物は火山の島の景色に溶け込むようにつくられ、いくつもの棟がつながる配置は、モアイの並び方を思わせるという。
たとえば、夕方。一日の山歩きから戻った客が、石の土台の上に立つ建物を見上げる。この土台は、島の人たちが、昔ながらのやり方で組んだものだ。
島の石と、島の人の手で
この建物は、どのように建てられたのか。アメリカの建築雑誌「アーキテクチュラル・ダイジェスト」の2009年の記事で、建築家のクルスは、設計を始める前に島を3回訪れ、モアイや考古学、島の人々を観察したと語っている。
建設には18か月かかった。クルスは仕事を二つに分けた。まず、島の約100人の職人を雇い、島の石を使って、昔ながらの方法で建物の土台を組んだ。次に、チリ本土から木材を運び、本土の約100人の職人が、大きな窓と空に向かって伸びる柱を持つ、軽やかな上の部分を建てた。記事によると、できるだけ島の素材を使い、屋根には「ハニハニ」と呼ばれる、赤い火山性の粘土が使われた。
ホテルは、建物が環境の基準を満たしていることを示す、アメリカの「LEED」という認証を受けた。記事はこれを、ラテンアメリカで初めてLEEDの認証を受けたホテルと紹介している。
遠い島だからこそ、資源を大切に
島は、本土から遠く離れている。物を運ぶのも、ごみを運び出すのも簡単ではない。
チリの専門誌「レビスタ・エレクトリシダ」の2012年の記事によると、エクスプローラ・ラパ・ヌイは、太陽の熱を集める装置と太陽光パネルでプールとジャクジーを温め、水を処理してきれいにする仕組みを備えていた。こうした仕組みによって、記事の前の12か月で、エネルギーの使用を13%減らしたという。
ごみも、かさを減らす工夫をしていた。ごみは分けて、圧縮する機械でまとめ、ガラスは専用の機械でかさを20%減らす。生ごみは堆肥に変えていた。
記事は、エクスプローラの三つのホテル全体の取り組みにも触れている。使い捨ての水のボトルを金属のボトルに替え、ホテルで水をきれいにする仕組みを整えたことで、前の12か月で、プラスチックとガラスのボトルの使用を80%減らした。
島の人が案内する、島の文化
客は、宿泊料金に含まれる30の外出から、毎日の行き先を選ぶ。モアイを切り出した石切り場ラノ・ララクへの山歩き、古い集落への自転車、海でのシュノーケリングやパドルボード、島の文化に触れる体験。毎晩、ガイドが客と話して、翌日の外出を客の関心と体力に合わせて決める。1つのグループは最大8人までだ。
ガイドは、エクスプローラが自前で持つガイドの学校で育てられ、スペイン語と英語を話す。公式サイトによると、ガイドたちはこの地域とその伝統をよく知り、島の自然や文化の壊れやすさを深く理解している。そして、ラパ・ヌイの多くの宝物を守ることを、エクスプローラとともに訴えている。
外出の中には、島の人々の今の暮らしに触れるものもある。公式サイトによると、海に網を投げる漁師、手で伝統を形にする職人、岸辺に集まる島の人たち。島の文化は、毎日の暮らしのリズムの中に生きている。先祖から受け継いだものが、語り伝えや信仰、儀式を通じて今も続いていることを、客は自分の目で見る。
公式サイトは、5泊ほどあれば島の隅々を巡り、地元の文化を楽しめると案内している。短く立ち寄るのではなく、ゆっくり滞在して島を深く知ってもらう旅だ。
エクスプローラは、毎日巡る自然と文化と遺産を守ることに深く関わっていると書いている。ロッジの建築のような保全のための取り組みや、意識して選んだ運営の方法が、その大切な一部だという。
料理も島の味だ。サツマイモ、タロイモ、太平洋の魚介、そして島の名物のパイナップルなど、地元の食材を使った料理を出している。
日本の宿に置き換えると
エクスプローラ・ラパ・ヌイのように、建物に地元の素材と職人の技を生かし、ごみを「運び出す前に減らす」ことは、日本の宿でもできる。離島や山あいの宿ほど、その効果は大きい。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿で稼働率を70%とすると、年に5,110室泊。1室泊あたり0.5キロの生ごみが出るとすると、年に2,555キロになる。これを堆肥にすれば、ごみとして出す量がその分減る。ごみの処理の費用を1キロ40円とすると、年に10万2,200円になる。できた堆肥は、宿の庭や地元の畑で使える。
持ち帰れる知識
- 地元の素材と職人の技を使うと、建物が土地の物語を語る
- 運び出すのが大変な場所ほど、ごみを「出す前に減らす」工夫が生きる
- 水をきれいにする仕組みと繰り返し使えるボトルで、ボトルのごみは大きく減らせる
- 土地をよく知るガイドが、客の意識を変える
宿で考えられること
- 改修のとき、地元の素材や職人を使えないか考えてみる
- 宿から出るごみを種類ごとに量ってみる
- 生ごみを堆肥にできる場所や協力先を探してみる
事業・予約への接続
エクスプローラ・ラパ・ヌイは、建物の成り立ちや資源の工夫を、島を知る旅の一部として伝えている。宿の裏側の工夫も、語れば客の記憶に残る体験になる。
Sources / 参考情報
- Explora(英文) - ラパ・ヌイ
裏付け: 南米から3,700キロ、ハンガ・ロアの外れの草原、30室(スイート4・バルア26)、木の内装、海や庭の眺め、ラノ・ララクへの山歩き・自転車・カヤック、料金に含まれる外出 - Explora(英文) - ロッジ
裏付け: 建築家ホセ・クルス・オバジェ、火山の景色に溶け込む、モアイの並び方を思わせる棟の配置、自然の素材と木 - Explora(英文) - 外出
裏付け: 30の外出、最大8人、毎晩ガイドと翌日を決める、自前のガイドの学校、スペイン語と英語、地域と伝統をよく知り壊れやすさを理解し保全を訴える、シュノーケリング・パドルボード・文化体験、網を投げる漁師・手で伝統を形にする職人・語り伝えと信仰と儀式 - Explora(スペイン語) - ラパ・ヌイ
裏付け: 自然・文化・遺産を守ることへの深い関わり、ロッジの建築などの保全のための取り組みと意識した運営の方法 - Explora(英文) - 旅の情報
裏付け: 5泊ほどで島の隅々と地元の文化を楽しめる - Explora(英文) - 料理
裏付け: サツマイモ・タロイモ・太平洋の魚介・ラパ・ヌイのパイナップル - アーキテクチュラル・ダイジェスト(英文) - ポサダ・デ・マイク・ラプ(2009年5月号)
裏付け: 建築家は設計前に島を3回訪れた、建設に18か月、島の職人約100人が島の石で昔ながらの方法で土台、本土の木材と本土の職人約100人で上の部分、できるだけ島の素材、屋根に赤い火山性の粘土ハニハニ、ラテンアメリカ初のLEED認証のホテル、30室 - レビスタ・エレクトリシダ(スペイン語) - ホテルと宿泊施設のよい取り組みを広げる(2012年9月25日)
裏付け: 南米初のLEED-NC認証、太陽の集熱器と太陽光パネルでプールとジャクジーを温める、水の処理と浄化、前の12か月でエネルギー13%削減、ごみを分けて圧縮、ガラスのかさを20%減らす機械、堆肥、三つのホテルで金属のボトルと水の浄化によりプラスチックとガラスのボトルを80%削減