1本の木も切らずに建てた森で、ジャガーを見守る:コスタリカのパクアレ・ロッジが、川の奥で野生動物を支える方法
中米コスタリカの大西洋側、パクアレ川が大きく曲がる場所に、「パクアレ・ロッジ」がある。運営するのは、コスタリカでいくつものロッジを営む「ボエナ」だ。340ヘクタールの守られた森の中に、建っているのはわずか20棟。
ロッジへは、車でも公共の交通でも直接たどり着けない。客は、ゴムボートで急流を下る「ラフティング」で川を進むか、陸路の車でロッジに向かう。川の水位が危険なときは、ラフティングをやめ、四輪駆動の車でおよそ45分かけて陸から入る。
たとえば、夜明けの森。木の幹に取り付けられた小さなカメラの前を、大きな影が静かに横切る。誰も見ていない時間の森の姿を、カメラだけが記録している。
1本の木も切らずに建てる
パクアレ・ロッジは、森と川への影響をできるだけ小さくして建てられた。公式サイトによると、建設のために木は1本も切られていない。使った木材は、小さな農家が営む植林の取り組みから買ったものだ。
建物は、この地に暮らす先住民「カベカル」の人々の文化から着想を得ている。1995年から、ロッジはボエナが掲げる自然の中のロッジの柱を守りながら、少しずつ姿を変えてきた。
2009年から、ジャガーを見守る
この森には、ジャガーが暮らしている。かつては広く見られたジャガーも、今はすみかが失われ、人の活動によって脅かされている。
パクアレ・ロッジは2009年から、コスタリカの国立大学と組んだ「ジャガー・プログラム」を支えてきた。研究者たちに食事と泊まる場所を用意し、カメラなどの調査に欠かせない機材や、森を知り尽くした地元のガイドも提供している。
近年は、自動で写真を撮る「カメラトラップ」が進歩し、野生動物の研究が大きく前に進んだ。国立大学は、ロッジの340ヘクタールの保護区と周辺の守られた地域にカメラを設置した。その結果、大型のほ乳類18種、およそ5,000枚の画像が記録された。その中には、この国にもともと暮らす5種のネコの仲間や、ベアードバクやアカマザマといった珍しい動物も含まれていた。
カメラは、5頭のジャガーを1頭ずつ見分けて記録した。その中には、とても珍しい黒いジャガーもいた。
公式サイトは、ジャガーを守る取り組みには、自分たちの環境への負担を減らすこと、地域の人たちの暮らしを支えること、そしてリサイクルや植林、環境に配慮した建設によって保全を支えることが含まれると説明している。
森を守る人を、地域で育てる
ジャガーのすみかを守るには、まわりで暮らす人たちの理解が欠かせない。公式サイトによると、パクアレのような自然の地域では、発展の機会が限られ、環境の教育が足りないことが、地域の人たちと自然の調和を脅かしている。観光は、こうした地域が生き残るために欠かせないものだという。
ロッジで働く人の多くは、カベカルの人々の保護区「ナイリ・アワリ」や、バホス・デル・ティグレ、リンダ・ビスタ、サンタ・マルタといった近くの村の出身だ。これらの地域の人たちは、以前は自給のための畑や牛の放牧に頼って暮らしていた。
ロッジは、地元の小学校で環境の教育を続けている。水を守ること、エネルギーを大切にすること、地元の植物と動物、ごみの管理、生き物の多様さについて、子どもたちに伝えている。カベカルの人々には、ガイドや英語、食べ物の扱い方の研修も行っている。
地域とのつながりは、仕入れにも表れている。ロッジは、卵、鶏肉、チーズ、新鮮な野菜などを近くの村から仕入れている。地元の一族の人たちが建てた「カベカルの小屋」では、客がカベカルの文化や習わしに触れられる。地元の人たちが使うケーブルカーの修理も支えた。
川を守り、電気をつくる
ロッジの電気は、3基の水力タービンと204枚の太陽光パネルからつくっている。つくった電気は蓄電池にためて、無駄なく使う。客室のお湯は太陽の熱で温め、排水は最新の浄化槽で処理して、川を汚さないようにしている。生ごみは堆肥にし、それ以外のごみは地元のリサイクルセンターで処理する。
パクアレ川は、川の流域を対象にしたコスタリカの「エコロジカル・ブルーフラッグ」の制度で、最も高い評価を受けた。地域の人たちと一緒に川を守り、流域に木を植えてきた。2024年には、コスタリカ観光局の持続可能な観光の認証で、最も高い「エリート」の段階を受けた。
日本の宿に置き換えると
パクアレ・ロッジのように、宿のまわりの森に暮らす生き物を、研究者と一緒に見守ることは、日本の宿でもできる。宿の敷地や近くの森に自動で撮影するカメラを置けば、客が寝ている間の森の姿を、翌朝の話題として伝えられる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、自動で撮影するカメラを1台3万円で5台そろえると、費用は15万円。20室の宿で稼働率を70%とすると、年に5,110室泊。1年で割ると、1室泊あたり約29円になる。地元の大学や研究者と組めば、記録は研究にも役立つ。
持ち帰れる知識
- 建て方の工夫で、森への影響は小さくできる
- 研究者に泊まる場所や道具を提供することも、保全の支え方になる
- 自動で撮影するカメラは、見えない生き物の姿を明らかにする
- 地域の人たちの理解と仕事が、野生動物のすみかを守る
宿で考えられること
- 宿のまわりに暮らす野生動物を調べている研究者を探してみる
- 改修のとき、地元で育てた木材を使えないか考えてみる
- 地元の小学校で、宿のまわりの自然の話をする機会をつくれないか考えてみる
事業・予約への接続
パクアレ・ロッジは、川を下って着く体験と、森でジャガーを見守る取り組みを、ひとつの旅として伝えている。守っている森そのものが、客がここを目指す理由になっている。
Sources / 参考情報
- Pacuare Lodge(英文) - サステナビリティ
裏付け: 開発の機会の不足と環境教育の不足、観光は地域に欠かせない、働く人の多くがナイリ・アワリの保護区・バホス・デル・ティグレ・リンダ・ビスタ・サンタ・マルタの出身、以前は自給の畑と牛の放牧、小学校の環境教育(水・エネルギー・動植物・ごみ・生物多様性)、カベカルの人々へのガイド・英語・食品の扱いの研修、卵・鶏肉・チーズ・野菜を近くの村から仕入れ、地元の一族が建てたカベカルの小屋、地元の人が使うケーブルカーの修理、木を1本も切らず小農の植林の木材、1995年から、3基の水力タービンと204枚の太陽光パネル、蓄電池、太陽熱のお湯、浄化槽、生ごみの堆肥と地元のリサイクルセンター、2009年から国立大学とジャガー・プログラム、食事・宿泊・カメラなどの機材・地元のガイド、ジャガーの脅威、340ヘクタールの保護区と周辺のカメラ、約5,000枚・大型ほ乳類18種・在来のネコ5種・ベアードバク・アカマザマ、5頭のジャガーと黒いジャガー、ブルーフラッグの流域の最高評価と植樹、2024年にCSTのエリート - Pacuare Lodge(英文) - ホーム
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裏付け: 大西洋側の地域、車や公共の交通では直接行けない、ラフティングか陸路、川の水位が危険なときは四輪駆動で約45分