牛の牧場だった丘に、ナマケモノが帰ってきた:アレナル火山のナヤラ・テンテッド・キャンプが、森を植え直した方法
中米コスタリカの北部、円すい形の美しいアレナル火山のふもとに、ラ・フォルトゥナという町がある。その近くの丘の上に、テントの宿「ナヤラ・テンテッド・キャンプ」が建っている。火山を望む崖の上のテントからは、眼下に熱帯の森が広がる。
だが、この森は、もともとここにあったものではない。公式サイトによると、テントが建つ丘の森は、かつて牛を放牧するために切り払われた。今の緑は、ナヤラが長い年月をかけて植え直したものだ。
たとえば、朝。テントのテラスで朝食をとっていると、ガイドが木の上を指さす。葉の間に、丸い毛のかたまりがぶら下がっている。ナマケモノだ。
切り払われた丘を、森に戻す
ナヤラは、木を植え直すことを、熱帯雨林とそこに暮らす野生の生き物を守るために取れる、最も大切な行動だと考えている。新しく植えた木は、空気中の温室効果ガスを減らす。そして何より、木が育つにつれて、失われかけた生き物のすみかが再び築かれる。公式サイトは、すみかが失われることが、動物の種が生き残るうえで最大の脅威だと説明している。
ナヤラは、何千本もの木と、この地にもともとある低木を植えてきた。もとの土地の持ち主が牧草地にするためにすべての木を切り倒した場所に、在来の種を、ゆっくりと、手間をかけて植え直した。公式サイトは、森を元の美しさに戻すまでに長い年月がかかり、自然が土地を取り戻すには、さらに長い時間がかかると書いている。
テントの建て方にも工夫がある。テントは支柱の上に建てられ、テントとテントの間には、木やヤシを植えるための十分な空間が残された。古くから立つ大きな木は切らずに、その木を避けて建物をつくった。
ナマケモノのための木
ナマケモノは、一生の多くを「グアルモ(セクロピア)」と呼ばれる木の上で過ごし、眠ったり、敵から身を隠したりしている。ナヤラは、ナマケモノが好むこのグアルモの木を、何千本も植えてきた。
公式サイトは、熱帯雨林を守り、育て、健やかな数のナマケモノが暮らせる安全なすみかを用意することを、自分たちの使命だと書いている。植林を続けるにつれて、森には、これまで以上に多くのナマケモノ、サル、チョウ、鳥が訪れるようになったという。ナヤラは、ナマケモノやホエザルの安息の場となるとともに、アレナル火山国立公園の植林も手伝っている。
2023年7月から2024年7月までの、ナヤラのコスタリカの三つのリゾートをまとめた報告書によると、リゾート全体で2,000本を超える在来のセクロピアの木を植えた。カエルのための庭もつくり、生物学者と相談して、カエルが隠れ、卵を産める植物を選んで植えた。客は、植林を紹介する案内を通じて、リゾート全体で育つ3万本の観賞用の植物と在来の木を見て学ぶことができる。
地元の人が、地元を案内する
ナヤラで働く人の多くは、近くの町ラ・フォルトゥナ・デ・サン・カルロスの出身だ。公式サイトによると、ナヤラは働く人たちに、無料の送迎、持続可能な観光の教育、そして医療の支えを提供している。働く人の子どもたちが無料で通える幼児教育の場を設け、地元の児童養護施設や地元の芸術家も支えている。
報告書によると、ナヤラは地元の生物学者と組んで、自然を案内するガイドを育てている。働く人も客も、地元の野生の生き物と、その保全について学べるようにするためだ。働く人たちは、地元の野生動物の保護施設で、すみかづくりなどのボランティアもしている。
公式サイトは、働く人を「ナヤラの魂」と呼ぶ。地元の人たちが、自分たちの目を通してコスタリカを客に見せることに誇りを持っている、と書いている。
光と風を生かし、プラスチックを減らす
テントは、土地の地形を生かして向きが決められている。日の光の温かさと風通しを最大限に生かし、冷房や暖房の必要を減らすためだ。照明には省エネ型の電球を使い、蛇口やタオルの使い方でも水を節約している。
ナヤラは、使い捨てのプラスチックをなくすことを目指している。客室では、プラスチックの水のボトルを繰り返し使えるガラスのボトルに替え、プラスチックのストローもやめた。報告書によると、厨房の生ごみは地元の農家と協力して家畜のえさとして生かしている。
日本の宿に置き換えると
ナヤラのように、かつて切り開かれた土地に、その土地にもともとある木を植え直すことは、日本の宿でもできる。特定の生き物が好む木を選んで植えれば、その生き物が戻ってくる姿を、客と一緒に見守ることができる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿で稼働率を70%とすると、年に5,110室泊。1回の滞在を平均2泊とすると、年に2,555組の客が訪れる。1組ごとに在来の木の苗を1本植えると、年に2,555本になる。苗1本を500円とすると、費用は年に127万7,500円。苗に客の名前の札を付ければ、再び訪れる理由にもなる。
持ち帰れる知識
- すみかが失われることが、生き物にとって最大の脅威になる
- 生き物が好む木を選んで植えると、その生き物が戻ってくる
- 建物の間に木を植える空間を残せば、宿そのものが森の一部になる
- 地元の人がガイドになると、客は土地を地元の目で見られる
宿で考えられること
- 宿の敷地や近くで、木を植え直せる場所がないか探してみる
- 地域の生き物が好む在来の木を、専門家に聞いてみる
- 客が苗木を植えられる仕組みをつくれないか考えてみる
事業・予約への接続
ナヤラは、植え直した森に戻ってきたナマケモノを、客を迎える宿の顔にしている。宿が育てた森で生き物に出会う体験は、写真や口コミで広がっていく。
Sources / 参考情報
- Nayara Tented Camp(英文) - 私たちについて
裏付け: 働く人の多くがラ・フォルトゥナ・デ・サン・カルロス出身、無料の送迎・持続可能な観光の教育・医療、働く人の子の無料の幼児教育、児童養護施設と地元の芸術家の支援、支柱の上のテントと木やヤシを植える空間、牛の牧場主が切り払った森に何千本もの木と在来の低木、ナマケモノはグアルモの木で暮らす、安全なすみかの使命、ナマケモノ・サル・チョウ・鳥が増えた、植林は最も大切な行動、温室効果ガス、すみかの喪失が最大の脅威、もとの持ち主が牧草地にするため木をすべて切った、古い大きな木を避けて建てる、国立公園の植林を手伝う、ナマケモノとホエザルの安息の場、地形を生かした向きで冷暖房を減らす、省エネの照明、節水の蛇口とタオル、ガラスのボトル、プラスチックのストローをやめた、働く人はナヤラの魂 - Nayara Tented Camp(英文) - 発見
裏付け: テントが建つ丘の森は放牧地のために切り払われた、長い年月の植林、自然が土地を取り戻すにはさらに時間がかかる、何千本ものセクロピア(グアルモ)を植えた - Nayara Tented Camp(英文) - 宿泊
裏付け: 植え直した熱帯雨林の中、支柱の上のテント - Nayara Resorts(英文) - ESG・サステナビリティ報告書と管理計画(2023年7月〜2024年7月)
裏付け: 三つのリゾートで2,000本を超える在来のセクロピア、カエルの庭と生物学者への相談、3万本の観賞用の植物と在来の木と案内、地元の生物学者とガイドの育成、働く人の野生動物保護施設でのボランティア、生ごみを地元の農家の家畜のえさに