GOAL 12 · TARGET 12.2 水・衛生・循環 3分 / 2002文字 森で水力を作って庭で自給する #076

電気の85%は、目の前の川から:ベリーズのブランカノー・ロッジが、森の水と土を無駄なく使う方法

中米ベリーズの西部、カヨ地区。10万7,000エーカー(約4万3,000ヘクタール)の「マウンテン・パイン・リッジ森林保護区」の中を、プリヴァション川が流れている。その川岸に、20室の「ブランカノー・ロッジ」がある。

1980年代の初め、映画監督のフランシス・フォード・コッポラはベリーズを訪れ、この場所にすぐに心を奪われた。そして、使われなくなっていたロッジを買い取った。10年以上、家族の隠れ家として使ったあと、1993年に一般の客に開いた。

たとえば、昼下がり。客室の天井で、大きな羽根の扇風機がゆっくり回っている。その電気をつくっているのは、窓の外を流れる川だ。

川が、ほとんどすべてを動かす

公式サイトは、このロッジでは「一日が水を中心に回る」と書いている。

ブランカノーは、送電網から離れて運営されている。1990年代から、プリヴァション川に設けた水力発電所が電気を生んできた。今、ロッジの電気のおよそ85%は、この水力発電所から来ている。発電所は、10年以上にわたって自分たちで動かし、手入れをしてきた。残りの電気は、ブタンという燃料でまかなう。

川は、水も届けてくれる。川の水は、処理してから客室に送られる。客は、無料で水力発電の仕組みを見学することもできる。

公式サイトは、川が電気、プール、そして食卓を支える庭と、ほとんどすべてを動かしていると説明している。そして、森と水を大切にすることは、特別な取り組みというより、この場所がずっと続けてきたやり方そのものだと書いている。ロッジは、環境の基準を満たしていることを示す「レインフォレスト・アライアンス」の確認を受けている。

冷房に頼らず、電気を節約する

ロッジの客室には、冷房がない。代わりに、普通の扇風機の3分の1の電力で動く省エネ型の天井の扇風機を使っている。標高が高いため、夜はたいてい涼しくなる。照明の95%はLEDだ。

プールは、塩素ではなく塩水できれいにしている。使った生活の水は、ろ過して庭の水やりに使い直す。厨房の生ごみと使い終わった調理用の油は、堆肥と燃料に生まれ変わる。木材は、伐採に合わせて植林をする業者から仕入れ、家具はロッジで自分たちでつくっている。

4エーカーの庭が、食卓を支える

ロッジには、4エーカー(約1.6ヘクタール)の有機の庭がある。公式サイトによると、厨房で出すものの多くはこの庭で育てたもので、ロッジで使う有機の野菜のすべてと、果物の多くをまかなっている。

ジャングルでの畑づくりは簡単ではない。それでもコッポラ夫妻は、新鮮で味のよい作物には、その手間をかける価値があると考えている。「自分たちで育てれば、品質を保証できる。それに、新鮮なバジルなしで、おいしい石窯のピザができるだろうか」と、コッポラは語っている。

ロッジの標高と夜の涼しさのおかげで、さまざまなレタス、ラディッシュ、豆、ニンジン、ビーツ、そしてバジル、オレガノ、コリアンダー、ディルといったハーブが育つ。庭師と料理長は毎日相談して、その日の献立に使えるものを決める。

庭を支える工夫もある。ロッジで飼っているミツバチは、庭とまわりの森の花粉を運ぶ。ミミズを使った堆肥づくりは、農業省と協力して4ポンド(約1.8キロ)のミミズから始め、今では苗のための堆肥を1,000ポンド(約450キロ)近く生み出している。

松の森を、植え直す

2000年、マウンテン・パイン・リッジの松の森は、キクイムシの被害で大きく傷ついた。ロッジは、その後から植林を始めた。客は、自分の名前を付けた松やマホガニーの苗を植えることができる。苗が育つと、ロッジがその写真を送ってくれる。

ロッジは、地域も支えている。サン・イグナシオの学生の授業料や教科書を、卒業まで支える奨学金を出している。客の宿泊料金には、ベリーズの地域のための基金として、1泊ごとの料金の5%が加えられる。経費を除いた全額が、毎年、地元の団体に寄付される。毎年、地球の日の前には、働く人たちが森の中の道のごみ拾いを行い、集めた量を量って記録してきた。この習慣は、15年以上続いている。

日本の宿に置き換えると

ブランカノーのように、宿のまわりにある水や土の恵みを生かし、電気や食べ物の一部を自分たちでまかなうことは、日本の宿でもできる。小さな水力発電は難しくても、省エネ型の扇風機や庭の畑なら始めやすい。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿で稼働率を70%とすると、年に5,110室泊。客室で60ワットの扇風機を1日10時間使うと、1室泊あたり0.6キロワット時。これを3分の1の電力で動く扇風機に替えると0.2キロワット時になり、差は0.4キロワット時。年に2,044キロワット時の節約で、電気代を1キロワット時30円とすると、年に6万1,320円になる。

持ち帰れる知識

  • 身近な自然の力で、電気の多くをまかなえることがある
  • 使った水や生ごみは、庭や燃料として生かせる
  • 庭の畑は、食卓と客の体験の両方を支える
  • 客が植えた苗の成長を伝えれば、再び訪れる理由になる

宿で考えられること

  • 客室の扇風機や照明を、省エネ型に替えられないか調べてみる
  • 宿の庭で、料理に使えるハーブや野菜を育ててみる
  • 使った水を庭の水やりに使えないか考えてみる

事業・予約への接続

ブランカノー・ロッジは、川が動かす電気と、庭が支える食卓を、ロッジの物語として客に伝えている。宿の仕組みを見せることが、そのまま宿の魅力になっている。

Sources / 参考情報

  • The Coppola Hideaways(英文) - ブランカノー・ロッジ
    裏付け: 1980年代初めにコッポラがベリーズを訪れ使われていなかったロッジを購入、10年以上家族の隠れ家、1993年に一般公開、20室、マウンテン・パイン・リッジ保護区
  • The Coppola Hideaways(英文) - アクセス
    裏付け: カヨ地区、10万7,000エーカーの森林保護区、プリヴァション川の岸
  • The Coppola Hideaways(英文) - サービスと設備
    裏付け: 一日が水を中心に回る、送電網から離れて運営、1990年代から川の水力発電、川が電気・プール・庭を動かす、森と水を大切にするのはずっと続けてきたやり方、レインフォレスト・アライアンスの確認
  • The Coppola Hideaways(英文) - サステナビリティと保全
    裏付け: 電気の約85%を水力、10年以上自前で運転と手入れ、残りはブタン、川の水を処理して客室へ、無料の見学、塩水のプール、3分の1の電力の扇風機、照明の95%がLED、生活の水をろ過して水やり、生ごみと油を堆肥と燃料に、植林する業者の木材と自前の家具、4エーカーの庭が厨房の多くを育てる、ミツバチ、農業省と4ポンドのミミズから1,000ポンド近い堆肥、2000年のキクイムシ被害後の植林と名前付きの苗と写真、サン・イグナシオの奨学金、15年以上続く道のごみ拾い、ベリーズの地域のための基金
  • The Coppola Hideaways(英文) - 有機の庭
    裏付け: 有機の野菜のすべてと果物の多く、ジャングルの畑の難しさ、コッポラの言葉、レタス・ラディッシュ・豆・ニンジン・ビーツ・ハーブ、庭師と料理長の毎日の相談
  • The Coppola Hideaways(英文) - よくある質問
    裏付け: 客室に冷房はなく扇風機、標高で夜は涼しい、1泊ごとの料金に5%の地域の基金を加え寄付

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