建物は森の1割以下、生ごみは動物のえさに:ドミニカ島のシークレット・ベイが、崖の上でごみを減らす方法
カリブ海の島国ドミニカ。森が海に落ち込む崖の上に、ヴィラだけの宿「シークレット・ベイ」がある。公式サイトによると、ヴィラは27棟。どれも専用の小さなプールを備え、森と海を見下ろすように建っている。崖の下には、カリオ川が海に注ぐティベイの浜がある。
ヴィラの広さは、屋内と屋外を合わせて1,120〜4,083平方フィート。どのヴィラにも、本格的な台所、屋外のシャワー、屋根つきのテラスがあり、家のように暮らせる。ヴィラの形もさまざまだ。森に溶け込むように建つ「ティ・フェイ」は2〜3階建てで、床から天井までの窓が木々の上にそびえる。「イランイラン」は、一本の茎から花びらが開くこの花の姿に似ていることから名づけられた。
公式サイトは、ドミニカの自然を宿の一番の魅力として紹介している。島には365の川があり、マッコウクジラが島の近くに暮らし、この島にしかいないミカドボウシインコが森を飛ぶ。先住民カリナゴの人々も暮らしている。
たとえば、夕方。ヴィラの台所で、客が野菜の皮を小さな容器に入れる。部屋の中に、生ごみを堆肥にする入れ物が置かれている。
結婚の贈り物から始まった宿
宿の主、グレゴール・ナシーフは、子どものころから、ドミニカの森に覆われた崖に、自然を守りながら「もう一つの家」をつくることを夢見ていた。妻サンドラとの結婚を祝う席で、サンドラの父である建築家フルト・ビバスが、二人の家の設計図を贈った。ビバスはベネズエラの著名な建築家だ。宿は、この一枚の図から始まった。
ヴィラは、持続可能な形で伐り出されたガイアナ産の硬い木だけでつくられている。そして、重い機械を使わず、人の手で組み立てられた。一般に、大きな重機を使わない建て方なら、機械を通すための道を森に切り開く必要も少なくなる。
森を残すための設計
公式サイトによると、宿の計画は40エーカーを超える海沿いの土地に広がっている。建物を広く散らすことで、土地あたりの建物の密度を下げ、土地がもともと持つ美しさを残している。建物が覆っているのは敷地の10%未満で、残りは自然の森のままだ。拡張が終われば、この割合は7%未満に下がる。この設計の出発点にあるのは、木を守るという約束だ。
宿は、運営の土台として「持続可能性の約束」を定めている。水とエネルギーの節約、温室効果ガスの削減、ごみの削減、汚染の削減、生き物と景観の保全、地域の経済への参加、文化の継承。建てるときから運営するときまで、この約束に沿って進める。
ごみを出さない運営
ごみを減らす取り組みは、日々の運営に組み込まれている。使い捨てのプラスチックはなくした。ヴィラの中で生ごみを堆肥にし、リサイクルとごみを出さない取り組みを進めている。食べ残しや調理くずは、動物のえさとして生かす。敷地内の移動には電気自動車を使い、食材は地元から仕入れている。
料理の材料は、敷地の有機の畑でとれたものや、毎朝浜に魚を揚げる地元の漁師、近くの市場の農家から届く。カリオ川のほとりの畑「ボタニカ」では、週に3回、料理教室が開かれている。1回の客は6人だけで、シェフと一緒に畑で材料を摘み、屋外の台所で3皿のコースをつくる。ティベイの浜を見下ろすレストラン「ジンジン」は1晩20人だけの席で、揚がったばかりの魚など、その日に島でとれたものを中心に6皿のコースを出す。敷地内の小さな醸造所では、地元の材料でコンブチャ(発酵させたお茶)をつくっている。
海でも、自然を健やかにする体験がある。客は地元の漁師と一緒に潜り、サンゴ礁を荒らす外来の魚ミノカサゴを捕る。捕った魚は、宿の料理になる。サンゴを植える活動に、客が加わることもできる。運動する部屋の機械は、人がこぐ力で動くものだ。敷地の美術館には、カリブ海の作家の100点を超える作品が並ぶ。
島にお金と仕事を残す
公式サイトによると、宿で働く人の90%以上が地元の人で、売上の80%以上が地元の経済に戻っている。宿は、美食と洗練されたもてなしで知られる世界的な宿の団体「ルレ・エ・シャトー」に加盟し、持続可能な観光の認証「グリーン・グローブ」も受けている。宿は、教育、起業、環境の保全、芸術の分野で地域の活動を応援し、働く人の成長にも力を入れている。
日本の宿に置き換えると
シークレット・ベイのように、生ごみを「捨てるもの」ではなく「えさや堆肥になるもの」と考えることは、日本の宿でもできる。近くの農家と組めば、生ごみが畑や家畜を通じて、また食材になって戻ってくる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿で稼働率を70%とすると、年に5,110室泊。1室泊あたり0.5キロの生ごみが出るとすると、年に2,555キロになる。これを近くの農家の堆肥やえさに回し、処分の費用を1キロあたり40円とすると、年に10万2,200円の費用と、その分のごみがなくなる。
持ち帰れる知識
- 重機を使わない建て方は、森を残すことにつながる
- 建物を散らして建てれば、自然の割合を高く保てる
- 生ごみは、えさや堆肥として資源に戻せる
- 地元の人を雇い、地元から買えば、お金が地域に残る
宿で考えられること
- 1日に出る生ごみの量を、まず量ってみる
- 近くの農家と、生ごみを堆肥やえさに回せないか話してみる
- 使い捨てのプラスチックを、一つずつ別の物に替えてみる
事業・予約への接続
シークレット・ベイは、森の中の静かなヴィラと、自然を守る運営を一つの体験として伝えている。客は、手つかずの森に泊まれることそのものが、森を残す設計の結果だと知って、宿を選ぶ。
Sources / 参考情報
- Secret Bay(英文) - シークレット・ベイについて
裏付け: 森と海が出会う崖の上、365の川・マッコウクジラ・ほぼ手つかずの森、ルレ・エ・シャトー、グリーン・グローブ認証、27棟のヴィラと専用プール、ベネズエラの建築家フルト・ビバス、持続可能なガイアナ産の硬い木だけ、重機を使わず手で組み立て、ティベイの浜、カリオ川、グレゴール・ナシーフの夢、サンドラとの結婚の席でビバスが設計図を贈った - Secret Bay(英文) - サステナビリティ
裏付け: 40エーカー超の計画で密度を下げる、木を守る約束、建物は10%未満で拡張後は7%未満、持続可能性の約束(水・エネルギー・温室効果ガス・ごみ・汚染・生き物と景観・地域経済・文化)、使い捨てプラスチックの廃止、部屋での堆肥づくり、リサイクルとごみを出さない取り組み、食べ残しを動物のえさに、電気自動車、地元の食材、働く人の90%以上が地元、売上の80%以上が地元経済へ、漁師とのミノカサゴ捕り、サンゴを植える活動、人力で動く運動の機械、コンブチャの醸造所、美術館、教育・起業・環境・芸術の応援、働く人の成長 - Secret Bay(英文) - ヴィラ
裏付け: 27棟、1,120〜4,083平方フィート、台所・屋外のシャワー・屋根つきのテラス、ティ・フェイは森に溶け込む2〜3階建てで床から天井までの窓が木々の上に、イランイランは花の姿から名づけた - Secret Bay(英文) - トップページ
裏付け: ドミニカの紹介として、365の川、この島にしかいないミカドボウシインコ(シセルー)、先住民カリナゴの人々 - Secret Bay(英文) - 料理
裏付け: 敷地の有機の畑、毎朝魚を揚げる漁師、市場の農家、カリオ川のほとりの畑ボタニカ、敷地でつくるコンブチャ、ティベイの浜の上のジンジンは1晩20人で、その日に島でとれたものによる6皿のコース - Secret Bay(英文) - ボタニカの料理教室
裏付け: 月・水・金の週3回、1回6人、シェフと畑で材料を摘み、カリオ川のそばの屋外の台所で3皿のコースをつくる - Secret Bay(英文) - ミノカサゴ捕り
裏付け: ミノカサゴはサンゴ礁と在来の魚を脅かす外来種、地元の漁師と潜って捕る