GOAL 14 · TARGET 14.2 自然・生物多様性・保全 4分 / 2100文字 巨石の間でサンゴを育てて移植する #081

白くなって死んだサンゴ礁を、もう一度育てる:セーシェルの島の宿シックスセンシズ・ジルパシオンが、海を見守る方法

インド洋に浮かぶセーシェルのフェリシテ島。大きな花崗岩の岩と、ひっそりとした浜と、熱帯の森の島だ。ここに建つのが、30棟のプールつきヴィラと3つの邸宅からなる「シックスセンシズ・ジルパシオン」である。本島のマヘ島からヘリコプターで20分、プララン島からは高速船で20分かかる。

公式の資料によると、宿が使っているのは島のおよそ3分の1だけだ。残りの土地は、保護されたラモス国立公園の一部になっている。島の隣には、イル・ココの海洋保護区も広がる。

たとえば、朝の浜。宿の海洋生物学者が、夜のうちに残されたウミガメの足跡をたどり、巣の位置と深さをノートに書き留めていく。

2016年、サンゴ礁が死んだ

島の北西にある入り江、アンス・ペニッシュ。セーシェルの自然保護団体ネイチャー・セーシェルによると、ここのサンゴ礁は、2016年に海水温が上がってサンゴが白くなる「白化」の現象で、広く死んでしまった。そして、自然に回復する兆しはなかった。

2017年10月、この団体のサンゴ礁を再生するチームが島に滞在し、宿と一緒に再生の計画を始めた。期間は18か月。最初の仕事は、海の中にサンゴの「苗床」をつくることだった。

苗床は、縦20メートル、横6メートルの、水中に浮かぶ骨組みだ。水深13メートルの海底に鉄の杭を打ち込み、ロープでパイプとつなぎ、空気を入れたポリタンクで浮かせる。このポリタンクは、宿の厨房で使い終わったものを使い直した。苗床を組み上げるのに、チームは4日間、潜り続けた。

弱ったサンゴを救って、苗に育てる

苗にするサンゴのかけらを、どこから取るか。すでに傷ついたサンゴ礁を、さらに傷つけるわけにはいかない。チームが目をつけたのは、サンゴを食べる巻き貝が増えて、弱っていたサンゴの群れだった。サンゴが減ったせいで、巻き貝とのつり合いが崩れていたのだ。

そこで、死にかけたサンゴを救い出して細かく分け、苗床に並べた。この時に用意したかけらは、3種類で1,863個。育ったサンゴの5%は、もとの場所に返す計画も立てた。サンゴを取らせてもらった場所の回復も助けるためだ。かけらは、苗床の穏やかな水の中で1年ほど育ち、サッカーボールほどの大きさになってから、入り江の花崗岩の岩に移される計画だった。

2019年の宿の発表によると、選ばれたのは、育つのが早く、生き残りやすく、海水温の変化に強い2種類のサンゴだった。2018年8月の時点で、苗床には1,750個のかけらがあった。2018年10月から、育ったサンゴを岩の海底や死んだサンゴの上に固定していった。3か月ほどで、移植したサンゴの組織が育ち始めた。2019年5月までに、1,339個のサンゴの移植が成功した。次の段階は、移植したサンゴの健康を見守り続けることだ。

ウミガメは、手を出さずに見守る

島の浜には、ウミガメもやってくる。アオウミガメと、絶滅の危険が極めて高いとされるタイマイだ。宿は2021年から、ウミガメを研究する団体「オリーブ・リドリー・プロジェクト」と組んでいる。

公式サイトによると、これまでに187の巣から、1万4,361匹を超える子ガメが海へ帰った。2025年だけで4,068匹だ。島のまわりでは、2025年に263匹のウミガメが見られた。

宿に住み込む生物学者は、巣の深さや位置、まわりの植物、海鳥やカニといった天敵を記録して、ふ化の成否を左右するものを探っている。目的は、人が手を出すことではなく、自然から学んで守ることだと、宿は書いている。

2025年には、この生物学者が、隣のラディーグ島の子どもたちのための海の学校を始めた。8回の授業に33人の生徒が参加し、ウミガメやサメ、サンゴ礁、プラスチックごみについて学んだ。最後に、生徒は一人ひとり、海を守るための約束を立てた。

島で使い、島で回す

離れた島では、物を運ぶだけでも負担が大きい。宿は、仕入れ先と一緒に包装を減らし、ごみを減らしている。2025年には、宿の畑で7,849キロの果物と野菜がとれた。宿の中の水のびん詰めの施設では、8万6,082本のガラスびんを洗って使い直した。

宿は、地元セーシェルの人をもっと雇い、地元の仕入れ先も増やそうとしている。地域の経済を支えるだけでなく、物が島に届くまでの距離も短くなるからだ。宿の中には、手を動かして学べる「アース・ラボ」もある。シックスセンシズは2024年から、持続可能な観光の国際的な基準「GSTC」のグループ認証を受けている。

日本の宿に置き換えると

海の再生は、一つの宿だけでは難しい。ジルパシオンも、専門の団体と組み、数を記録し続けることで、取り組みを形にしてきた。日本の宿も、地域の漁業者や研究者、保護団体と組むことから始められる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿で稼働率を70%とすると、年に5,110室泊。1室泊ごとに100円を、地域の海の保全活動に寄付するとすると、年に51万1,000円になる。宿が寄付の使い道と成果を客に伝えれば、客もその活動に加わることになる。

持ち帰れる知識

  • 傷ついたサンゴ礁は、苗床で育てたサンゴを移植して再生を助けられる
  • 苗にするサンゴは、すでに弱っている群れから救い出す工夫がある
  • 生き物を守るには、手を出す前に記録し、学ぶことが大切
  • 専門の団体と組めば、宿だけではできない取り組みができる

宿で考えられること

  • 宿のまわりの海や川で、活動している団体を調べてみる
  • 客が参加できる観察会や学びの場を、団体と一緒に考えてみる
  • 取り組みの数を毎年記録し、客に伝えてみる

事業・予約への接続

シックスセンシズ・ジルパシオンは、サンゴやウミガメを守る取り組みを、島での滞在の一部として伝えている。客は、泊まることがこの島の海を守ることにつながると知って、宿を選ぶ。

Sources / 参考情報

  • Six Senses(英文) - シックスセンシズ・ジルパシオンのサステナビリティ
    裏付け: フェリシテ島、ラモス国立公園とイル・ココの海洋保護区の隣、住み込みの生物学者、包装とごみを減らす、2021年からオリーブ・リドリー・プロジェクト、アオウミガメと絶滅の危険が極めて高いタイマイ、187の巣から1万4,361匹超、2025年に4,068匹、2025年に263匹、巣の深さ・位置・植物・天敵の記録、手を出さず自然から学ぶ、2025年にラディーグ島の33人に8回の授業と約束、畑で7,849キロ、8万6,082本のガラスびん、セーシェルの人の雇用と地元の仕入れ先で運ぶ距離を短く、アース・ラボ、2024年からGSTCのグループ認証
  • Six Senses(英文) - ファクトシート
    裏付け: 花崗岩の岩と浜と熱帯の森、30棟のプールつきヴィラと3つの邸宅、マヘ島からヘリコプターで20分・プララン島から高速船で20分、島の3分の1だけを使い残りはラモス国立公園の一部
  • Nature Seychelles(英文) - シックスセンシズでのサンゴ礁の再生
    裏付け: アンス・ペニッシュのサンゴ礁が2016年の白化で広く死に回復の兆しがない、2017年10月に開始した18か月の計画、20×6メートルの浮かぶ苗床、水深13メートル、厨房のポリタンクを使い直す、4日間潜って組み上げる、巻き貝で弱ったサンゴを救う、3種類1,863個、5%をもとの場所に返す、1年ほど育ててサッカーボールほどの大きさで花崗岩の岩に移す計画
  • Vacations & Travel(英文) - シックスセンシズのサンゴ再生計画
    裏付け: 2019年の宿の発表、育ちやすく生き残りやすく海水温の変化に強い2種類、2018年8月に1,750個、2018年10月から移植、3か月で組織が育ち始める、2019年5月までに1,339個、次の段階は移植したサンゴの健康を見守ること

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