GOAL 6 · TARGET 6.4 水・衛生・循環 3分 / 2042文字 山の砦で水を2回使ってGoldを取る #082

雨を集め、水を使い直す:オマーンの標高2,000メートルの宿アリラ・ジャバル・アクダルが、乾いた山で水を大切にする方法

アラビア半島の東の端、オマーン。首都マスカットの空港から174キロ、車で2時間半ほど走ると、ハジャル山脈の中に入っていく。標高2,000メートル。崖のふちに、石づくりの宿「アリラ・ジャバル・アクダル」が建っている。

「ジャバル・アクダル」は、アラビア語で「緑の山」という意味だ。公式の資料によると、宿の建物は、オマーンの古い砦や、山の伝統的な住まいから着想を得ている。84のスイートと2棟のヴィラがあり(広さはスイートが65〜140平方メートル、ヴィラが471平方メートル)、それぞれの部屋の壁には、地元の画家が手で描いたビャクシン(ジュニパー)の葉の絵がある。宿のレストランの名前も「ジュニパー」だ。オマーンの高地に育つこの木から名づけられた。アラビアの食文化の黄金時代から着想を得た料理を、地元の季節の食材で出している。

たとえば、夕方。客がテラスに出ると、谷の向こうの山肌が赤く染まっていく。足もとの庭の植物は、宿が集めた雨の水で育っている。

水が貴重な土地で

オマーンは、とても乾いた土地だ。この国には昔から、「ファラジ」と呼ばれる水路がある。ユネスコによると、地下の水や泉の水を、重力を使って畑や暮らしの場まで流す仕組みで、今もおよそ3,000の水路が使われている。その起源は西暦500年ごろとも考えられているが、遺跡の調査からは、紀元前2500年ごろにはすでに水路があったことがうかがえる。村や町では、限られた水を公平に分け合うしきたりが受け継がれ、水を分ける時は星の観察も手がかりにしてきた。水路を守るための見張りの塔も、各地に建てられている。そのうち五つの水路が、世界遺産に登録されている。ユネスコは、地下の水の水位が下がることで、この仕組みが脅かされているとも書いている。

山の上の宿にとっても、水は限りある資源だ。

雨を集め、水を自分でつくる

宿の公式の資料には、水についての取り組みが書かれている。雨を集めて、植物の水やりに使う。飲み水は、細かい膜で水をこす「逆浸透」という方法で、宿の中でつくっている。資料には、こうした緑の取り組みを、滞在のあらゆる面に取り入れることが、運営の柱だと書かれている。

2025年の宿の発表によると、宿は太陽の熱でお湯を沸かす仕組みを使っている。そして、使った生活の水を再生して使い直す仕組みで、水の使用量を大きく減らしている。電気の使い方を細かく管理する仕組みも入れて、快適さを保ちながら、使うエネルギーを抑えている。敷地には、電気自動車の充電設備もある。

雨の水を庭に回し、使った水をもう一度使う。一度きりで流さないことが、乾いた山で暮らす宿の工夫だ。

山の上の畑

宿には、土を使わずに水と養分で野菜を育てる「水耕栽培」の畑と、有機の畑がある。宿の発表によると、水耕栽培の畑は、オマーンの高級ホテルとして初めてのものだ。土の畑より少ない水で野菜を育てられるのが、水耕栽培の特徴とされている。水耕栽培の畑では、1年を通して野菜がとれる。有機の畑からは、季節の料理に使うハーブや香辛料が届く。

料理には、オマーンの地元の農家から仕入れた、新鮮な有機の食材も使っている。宿は、こうした仕入れが、地域の中で物とお金を回すことにつながると考えている。

客は、水耕栽培の畑を見学して、そこでとれた野菜で料理を習う体験に参加できる。山を下りて、古い町ニズワや、山のふもとの村ビルカット・アル・モーズを訪ねる案内もある。岩壁に取りつけた鉄の足場を伝って登る「ヴィア・フェラータ」や、昔ながらの山の村を歩くハイキングもできる。

5年続けて、ゴールドの認証

宿は、旅行業界の環境の認証「アースチェック」で、ゴールドの認証を受けている。2025年の宿の発表によると、これで5年続けてのゴールドになった。

宿には、アースチェックの取り組みを担当する人がいて、働く人たちに研修をしている。宿は、地域の植樹の活動に加わり、地元の職人も支えている。宿はこの認証を、環境と運営の成果を測り、管理していくための道具と位置づけている。

日本の宿に置き換えると

日本は雨の多い国だが、夏の渇水や、山の宿、島の宿では、水が限られることもある。雨を集めて庭に使う、使った水をもう一度使う。アリラ・ジャバル・アクダルの工夫は、日本の宿でも生かせる。大がかりな設備でなくても始められる。たとえば、雨どいの水をためるタンクを置いて、庭の水やりに使うだけでも、水道の水の使用量は減る。水を使う量が減れば、水を送ったり、お湯を沸かしたりするエネルギーも減る。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿で稼働率を70%とすると、年に5,110室泊。1室泊ごとに、風呂やシャワー、洗面で150リットルの水が流れるとする。そのうち3割をきれいにして、庭の水やりやトイレの水に使い直すとすると、年に約230トン(22万9,950リットル)の水を新しく使わずに済む。

持ち帰れる知識

  • 乾いた土地では、雨を集めることが大きな助けになる
  • 使った水を一度で流さず、もう一度使う仕組みがある
  • 水耕栽培は、少ない水で野菜を育てる方法の一つ
  • 地域の昔からの水の知恵は、客に伝えられる物語になる

宿で考えられること

  • 宿で使う水の量を、月ごとに調べてみる
  • 雨の水をためて、庭の水やりに使えないか考えてみる
  • 地域に伝わる水の歴史や知恵を、調べてみる

事業・予約への接続

アリラ・ジャバル・アクダルは、山の上の水と食の工夫を、宿での体験の一部として伝えている。客は、絶景の宿で過ごす時間が、乾いた土地の資源を大切にすることと両立していると知って、宿を選ぶ。

Sources / 参考情報

  • Hyatt(英文) - アリラ・ジャバル・アクダルのファクトシート
    裏付け: ハジャル山脈の標高2,000メートル、オマーンの古い砦と山の住まいから着想、地元の画家が手で描いたビャクシンの葉、84のスイートと2棟のヴィラ、スイート65〜140平方メートル・ヴィラ471平方メートル、マスカットの空港から174キロ・車で2時間半、オマーンの高地に育つ木から名づけたレストラン「ジュニパー」とアラビアの食文化の黄金時代から着想を得た料理、ヴィア・フェラータと山の村を歩くハイキング、電気自動車の充電設備、水耕栽培の畑と有機の畑、雨を集めて植物の水やり、逆浸透の飲み水、緑の取り組みを滞在のあらゆる面に取り入れることが運営の柱、アースチェックのゴールド
  • Hyatt(英文) - アリラ・ジャバル・アクダル
    裏付け: 「緑の山」という意味、水耕栽培の畑の見学と料理の体験、ニズワとビルカット・アル・モーズを訪ねる案内
  • Travel And Tour World(英文) - アリラ・ジャバル・アクダルが2025年のアースチェックのゴールドを受ける
    裏付け: 2025年の宿の発表、5年続けてのゴールド、太陽の熱でお湯を沸かす、生活の水を再生して水の使用量を大きく減らす、エネルギーを管理する仕組み、地元の農家の有機の食材と地域の中で回す考え、オマーンの高級ホテルで初めての水耕栽培の畑と有機の畑、地域の植樹と職人の支援、アースチェックの担当者が研修、認証を環境と運営の成果を管理する道具と位置づける
  • Travel And Tour World(英文) - アリラ・ジャバル・アクダルが2025年のアースチェックのゴールドを受ける(2)
    裏付け: 水耕栽培の畑で1年を通して野菜がとれる、有機の畑から季節の料理のハーブや香辛料
  • UNESCO(英文) - オマーンのアフラージ灌漑システム
    裏付け: 五つの水路が登録され今も約3,000の水路が使われる、起源は西暦500年ごろともされ紀元前2500年ごろの水路の証拠、地下の水や泉から重力で流す、公平に分け合う、星の観察、見張りの塔、乾いた土地、地下の水の水位低下で脅かされる

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