島の85%を、自然のまま残す:カンボジアの竹の島に建つアリラ・ヴィラズ・コー・ルッセイが、島と村の浜を守る方法
カンボジアの南の海岸、リアムの沖。船で10分足らずの場所に、小さな島が浮かんでいる。コー・ルッセイ、英語では「バンブー島」と呼ばれる島だ。クメール語の「ルッセイ」は竹を意味し、島をおおう竹の多さから名づけられた。
2019年当時の公式サイトによると、この島は長い間、カンボジア海軍の拠点として使われ、当時も海軍の管理のもとにあった。島には1.2キロの銅色の砂浜が続き、浜にはもともとこの土地に育つココヤシや、硬い木の木陰がある。島の中には、ジャングルの中を歩く道もあり、浜の前の澄んだ海ではシュノーケリングもできる。本土からは、空港まで20分ほどだ。この島に建てられたのが、リゾート「アリラ・ヴィラズ・コー・ルッセイ」だ。
たとえば、朝。客が浜を歩いて、ジャングルのような木立の中の小道に入る。濃い灰色の四角い建物は、緑の中に隠れるように建っていて、ほとんど目立たない。
開発は15%、自然は85%
宿の公式サイトによると、宿は「開発15%、自然85%」という基本計画にもとづいて設計された。島の自然の緑と、植栽された緑がたっぷりと残されている。
建物は、濃いガンメタルグレーに塗られた、平らな屋根の四角い形をしている。壁に入った縦の筋は、カンボジアの人々が使う格子柄の布「クロマー」をテーマにしたものだ。建物は、まわりの木々の中に、目立たずに溶け込んでいる。庭には、この土地にもともとある木や植物が植えられた。
室内には、堅い木の床、黒い火山岩のような石、鉄に、木の格子や明るい色の布、織りの絹、イカット織りのクッションが合わせられている。高い天井と大きな窓で、熱帯の明るく風通しのよい空間をつくっている。
客室は、50平方メートルのパビリオンと、プールのついた110〜560平方メートルのヴィラだ。海側のパビリオンも、海の上ではなく、浜から数歩の陸の上に建っている。
島の自然を、建物の置き方で守る
宿は、環境に配慮した設計の考え方を取り入れた。そして、旅行業界の環境の認証「アースチェック」で、建物の計画と設計についての認証の最も高い段階を、カンボジアのリゾートとして初めて受けた。
公式サイトによると、建物は、島の生態系への悪い影響をやわらげるように配置された。建物の密度を低くし、資源を節約できる材料で建て、生き物の豊かさを高めることを目指した。島の自然や、その姿、開けた土地を守ることが、宿の本質だと考えたからだ。
その結果、土地の70%以上が、緑の植栽にあてられた。土が雨で流れ出すのを防ぐ工夫をし、エネルギーをむだにしない配置で建物を設計した。島の土が海に流れ込めば、海の濁りにつながる。土を守ることは、島のまわりの海を守ることでもある。
村の浜のごみに向き合う
宿は、地元のリアム地区にあるオン村で、「リアム・アウトリーチ・イニシアチブ」という活動を始めた。村が抱えるごみの処理と、教育の問題に取り組むものだ。「アウトリーチ」は、宿の外へ手を伸ばすという意味である。
宿は、幼稚園から6年生までが通う村の学校や寺、そしてカンボジア海軍と組んで、村とリアムの浜でごみ拾いを行った。学校と寺のごみは、宿がお金を出して、ごみ回収の会社に集めてもらった。そして、プラスチックやポイ捨てが健康と環境にどう影響するかを、子どもたちや村の人に伝える研修や催しを開いてきた。
地域の文化にふれる
島から2時間以内で、田園の風景やのどかな町、地元の暮らしにふれることができる。宿は、まわりの地域を訪ねる体験も用意していた。海岸の景色を見渡すリアムの寺を訪ねて、僧侶から祝福を受ける。ミネラルの豊かな土がこしょうづくりに向き、こしょうの産地として知られるカンポットで、こしょう畑を訪ね、こしょうを使った昼食をとる。カニで有名な静かな海辺の町ケップの市場で、とれたてのカニを買い、その場で焼いたり蒸したりしてもらう。宿では、エンジンを使わない海のスポーツも楽しめ、乾季には浜で映画を上映する夜もあった。島の中だけでなく、地域の暮らしと文化を伝えることも、宿の役割と考えていた。
日本の宿に置き換えると
コー・ルッセイの工夫は、建物を建てる前に「どれだけの自然を残すか」を決めたことにある。日本の宿でも、増築や改装の時に、緑を残す割合や、雨の水が土を流さない工夫を考えることができる。クロマーのように、地域の布や模様を建物のデザインに取り入れることも、土地らしさを伝える方法になる。緑を残す割合を先に決めておけば、増築のたびに少しずつ緑が減っていくことも防げる。
浜や川のごみ拾いは、すぐに始められる取り組みだ。InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、毎月1回、働く人5人が1時間、宿の近くの浜を清掃し、1回に10キロのごみを集めるとする。年に12回で60人時間、集まるごみは年に120キロになる。客にも参加を呼びかければ、宿と客が一緒に浜を守る時間になる。
持ち帰れる知識
- 建てる前に、残す自然の割合を決めることができる
- 建物の密度と配置で、島の生態系への影響をやわらげられる
- 土の流出を防ぐことは、まわりの海を守ることにもつながる
- 村のごみの問題に、宿が地域の人と一緒に向き合うことができる
宿で考えられること
- 宿の敷地のうち、緑の部分がどれくらいあるか測ってみる
- 雨の日に、敷地から土や水がどこへ流れるか見てみる
- 地域の学校や寺社と、一緒にごみ拾いができないか話してみる
事業・予約への接続
アリラ・ヴィラズ・コー・ルッセイは、自然を大きく残した島での滞在と、地域の文化にふれる体験を、宿の魅力として伝えていた。客は、静かな島で過ごす時間が、島と村の浜を守ることにつながると知って、宿を選ぶ。
Sources / 参考情報
- Alila Hotels and Resorts(英文) - 持続可能な観光(2019年、Internet Archive)
裏付け: 環境に配慮した設計の考え方、アースチェックの建物の計画と設計の認証で最も高い段階をカンボジアのリゾートとして初めて、生態系への悪い影響をやわらげる配置、低い密度と資源を節約する材料、生き物の豊かさ、島の自然・姿・開けた土地を守ることが本質、土地の70%以上を植栽に、土の流出を防ぐ工夫、エネルギーをむだにしない配置、リアム地区オン村のリアム・アウトリーチ・イニシアチブ、ごみの処理と教育、幼稚園から6年生までの学校・寺・カンボジア海軍と村とリアムの浜でごみ拾い、学校と寺のごみ回収の費用、プラスチックとポイ捨ての害を伝える研修と催し - Alila Hotels and Resorts(英文) - 設計と施設(2019年、Internet Archive)
裏付け: 開発15%・自然85%の基本計画、自然と植栽の緑、ガンメタルグレーの平らな屋根の四角い建物、縦の筋はクロマーのテーマ、木々に溶け込む、在来の木と植物の庭、堅い木の床・火山岩のような石・鉄・木の格子・明るい布・織りの絹・イカットのクッション、高い天井と大きな窓、エンジンを使わない海のスポーツ、乾季の浜の映画 - Alila Hotels and Resorts(英文) - この土地について(2019年、Internet Archive)
裏付け: 長く海軍の拠点で今も海軍の管理下、ルッセイはクメール語で竹、1.2キロの銅色の砂浜、在来のココヤシと硬い木、ジャングルの散歩とシュノーケリング、船で10分足らず、本土から空港まで20分、2時間以内で田園や町や暮らし、海岸を見渡すリアムの寺の祝福、ミネラルの豊かな土のカンポットのこしょう畑と昼食、静かな町ケップのカニの市場でその場で調理 - Alila Hotels and Resorts(英文) - アリラ・ヴィラズ・コー・ルッセイ(2020年、Internet Archive)
裏付け: 50平方メートルのパビリオン、110・180・560平方メートルのヴィラとプール - Alila Hotels and Resorts(英文) - オーシャン・パビリオン(2019年、Internet Archive)
裏付け: 海側のパビリオンは浜から数歩の場所に建つ