木を1本も切らずに、砂の森に建てる:南アフリカのアンドビヨンド・プンダ・フォレスト・ロッジが、森とサイを守る方法
南アフリカの東の端、クワズール・ナタール州の北部に、「プンダ私営動物保護区」がある。インド洋の海岸や、世界遺産の湿地公園イシマンガリソにも近い場所だ。その保護区の中の、背の高い木が天井のようにおおう森に、宿「アンドビヨンド・プンダ・フォレスト・ロッジ」が建っている。
この森は「砂の森(サンドフォレスト)」と呼ばれる、乾いた砂の土地に育つ珍しい森だ。運営会社アンドビヨンドは、アフリカに残るわずかな乾いた砂の森のひとつだと説明している。森には、「スニ」と呼ばれる体の小さなレイヨウや、めったに見られないアカダイカーがすむ。
たとえば、朝。ガラスの壁の部屋で目を覚ました客が、ベッドの上から森を見る。木々の足元を、小さなレイヨウが静かに歩いていく。部屋は森の中にあるというより、森の一部になっている。
1本の木も切らずに建てた
宿の資料によると、客室は16室。ガラスで囲まれた15のスイートと、2つの寝室を持つ家族用のスイートが1つだ。どの部屋も杭の上に建てられ、森の地面と高い木々の間に浮かんでいるように見える。
そして、宿を建てる時には、森の木を1本も切らず、傷つけることもなかった。運営会社は、宿を「これ以上ないほど環境にやさしい」と紹介している。部屋と部屋は、森の中を通る高い通路でつながれている。地面に直接建てず、木を避けて杭を立てれば、森の床とそこにすむ生き物への影響は小さくなる。ガラスの壁は、客が森を「外から見る」のではなく、「中から感じる」ための工夫でもある。
畑だった土地を、動物の土地に戻した
プンダは、宿の森だけでなく、保護区そのものが「よみがえった土地」だ。運営会社アンドビヨンドは、1991年にこの保護区をつくることから始まった。クワズール・ナタール州で最初の私営の動物保護区だった。
最初に選ばれた1万3,076ヘクタールの土地は、もともと野生の動物がすんでいた場所だった。しかし100年近くの間、パイナップルや牛、サイザル麻の畑などとして使われ、草が食べつくされて荒れていた。ズールー語で「プンダ」は「帰ってくること」を意味する。荒れた土地を回復させ、かつてこの地域にいた大きな動物を、すべて呼び戻すことを目指した。
そのために、動物を少しずつ戻していった。1991年に、私営の保護区として初めてゾウを戻した。1992年と1993年には、別々の群れから集めた13頭のライオンを戻し、今では南アフリカで最も遺伝的に多様なライオンの集団のひとつになった。ナミビアのチーター12頭を2つのグループに分けて戻し、ライオンと同じ土地にこの2つの種を戻すことに初めて成功した。2004年には、世界自然保護基金(WWF)などのクロサイの生息域を広げる計画に選ばれ、15頭のクロサイを受け入れた。翌年には、計画で最初の子どもが生まれた。2019年6月には、地域で何十年もいなくなっていたセンザンコウを戻す取り組みも始めた。
今では、周りの土地の持ち主との協力によって、保護区は2万9,866ヘクタールに広がった。7つの異なる環境があり、特にチーターとクロサイが多いことで知られる。
サイの耳に印をつける
宿の客は、保護の仕事に加わることもできる。そのひとつが、サイの保護の体験だ。獣医のチームが、麻酔で眠らせたクロサイやシロサイの耳に、切れ込みの印をつける。この印は、研究と、密猟から守るための見守りに使われる。客は、その作業に立ち会う。または、密猟者から守るために、サイの角を痛みなく切り取る作業を手伝うこともできる。
ほかにも、ゾウの首輪の付け替えや、センザンコウの研究者と一緒に健康を確かめる体験がある。体験に参加した客は、ただ動物を見るだけでなく、なぜ守る必要があるのかを、目の前で知ることになる。
土地を、村に返す
プンダの取り組みは、動物だけではない。1992年には、地域の村の発展を支える基金をつくった。今の「ワイルド・インパクト」(旧アフリカ財団)だ。この基金が1995年に建物の費用を出した村の診療所は、今では24時間開いている地域の医療の拠点として、年に5,000人を超える人を支えている。
2007年には、土地をめぐる話し合いがまとまり、9,032ヘクタールの土地が、もともとの持ち主である2つの村に返された。2つの村は、土地を畑に戻すのではなく、野生の動物と自然を守るために使い続けることを選んだ。
日本の宿に置き換えると
プンダの工夫は、「木を切らない」ことを最初に決め、そのために建物の形を考えたことにある。日本の宿でも、庭や裏山の古い木を残して増築を計画したり、木の根を傷めないように通路を浮かせたりすることができる。地域の自然を守る人の仕事を、客が体験できる場をつくることもできる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%の宿を考える。年に5,110室泊のうち10%、511室の客が、地元の案内人と歩く森の体験に参加するとする。参加費のうち1室500円を地域の森を守る活動に寄付すれば、年に25万5,500円になる。客が楽しむ時間が、そのまま森を守るお金になる。
持ち帰れる知識
- 木を切らないと先に決めれば、建物の形と置き方が変わる
- 杭の上に建てると、森の地面への影響を小さくできる
- 荒れた土地も、時間をかけて動物の土地に戻すことができる
- 保護の仕事を客の体験にすると、守る理由が伝わる
宿で考えられること
- 敷地の中で、残したい木を地図に書き出してみる
- 地域で自然を守っている人に、客を案内してもらえないか相談する
- 体験の参加費の一部を、地域の自然を守る活動に回せないか考える
事業・予約への接続
プンダ・フォレスト・ロッジは、木を切らずに建てた森の中の部屋と、保護の仕事にふれる体験を、宿の魅力にしている。客は、泊まることが森と動物を守ることにつながると知って、宿を選ぶ。
Sources / 参考情報
- andBeyond(英文) - プンダ・フォレスト・ロッジの案内資料(PDF)
裏付け: 16室(ガラスのスイート15室と2寝室の家族用1室)、杭の上で森の地面と木々の間に浮かぶ、木を1本も切らず傷つけずに建てた、珍しい砂の森、スニとアカダイカー、2万9,866ヘクタールと7つの環境、チーターとクロサイが多い、1991年に保護区とともに会社が始まり州で最初の私営保護区、最初の1万3,076ヘクタールはパイナップル・牛・サイザル麻などで荒れていた、プンダは「帰ってくること」、ゾウ(1991年)・ライオン13頭(1992〜93年)・ナミビアのチーター12頭・クロサイ15頭(2004年)と翌年の子ども・センザンコウ(2019年6月)、サイの耳の印づけと角の除去の体験、ゾウの首輪とセンザンコウの体験、1992年の基金(現ワイルド・インパクト、旧アフリカ財団)、1995年の診療所で年5,000人超、2007年に9,032ヘクタールを2つの村に返還、イシマンガリソに近い - andBeyond(英文) - プンダ・フォレスト・ロッジ
裏付け: アフリカに残るわずかな乾いた砂の森のひとつ、杭の上の部屋、ガラスの壁、森の中の高い通路、保護区は畑から回復した2万9,866ヘクタール