使った水を、畑と海に返す:オマーンの入り江の宿シックスセンシズ・ジギーベイが、村と海を育てる方法
アラビア半島の東の先、オマーンの北のムサンダム半島。けわしい岩山と海にはさまれた入り江に、リゾート「シックスセンシズ・ジギーベイ」がある。ドバイから車で120分ほど。片側には岩山がそびえ、もう片側には1.6キロの白い砂浜が続く。宿へは四輪駆動車で山道を下るか、海抜293メートルの山の上からパラグライダーで飛んで入ることもできる。
宿の資料によると、宿はオマーンの昔ながらの村をかたどってつくられた。ヤシの木陰の小道と、自転車で走りやすい道が宿の中をめぐる。客室は、自然の石と木で建てた82棟のヴィラで、どの棟にも専用のプールがある。宿の中には、湾岸の国々でただひとつという、海水のプールもある。
たとえば、夕方。客が自転車で、ヤシの小道を走っていく。石の壁の向こうに岩山が見え、道の先には海が光っている。宿の中を歩くことが、村の中を歩くような時間になる。
乾いた土地で、水をもう一度使う
ムサンダムは、雨の少ない乾いた土地だ。ここで宿を続けるには、水を大切に使う工夫が欠かせない。
宿の公式サイトによると、2025年には、宿で使った4,694万1,000リットルの排水をきれいにして、庭や畑の水やりに使った。一度使った水を捨てずに、もう一度土に返している。宿の中の緑や畑は、この水で育つ。乾いた土地では、水をよそから運んでくるほど、お金もエネルギーもかかる。使った水をその場で生かせば、運ぶ水も、捨てる水も減らせる。
飲み水も、変えた。宿は、詰め替えのできるガラスのびんに入れた自分たちの飲み水を用意している。2025年には、これで25万1,234本のペットボトルを使わずにすんだ。
宿の畑と、村の農家
宿の資料によると、宿には冬によく実る有機の菜園があり、近くの町ディッバには宿の農場がある。この農場では、宿で使う作物の多くと、地元の家畜を育てている。料理の材料の多くは、ディッバの町や、ジギーの村、そして宿の菜園と農場から来る。材料は、必要な分だけをとって使う。
公式サイトによると、2025年に農場がつくった果物と野菜は3,752キロ、牛乳は1,708リットルだった。宿から出た堆肥14トンは、地元の農家に贈られた。農業の省庁と協力して、7つの農場で410頭のヤギに予防接種も行った。宿の畑と、まわりの村の畑が、同じ土と水でつながっている。
海の生き物を見守る
宿の前の海も、宿が守る場所だ。宿は、ウミガメの保護団体「オリーブ・リドリー・プロジェクト」と協力して、アオウミガメを1匹ずつ見分けて記録している。ウミガメは、顔のうろこの模様が1匹ずつ違うため、写真に撮れば見分けることができる。2019年からこれまでに264匹を見分け、2025年には226回の出会いの中から、38匹を新しく見つけた。客が名前をつけて見守っているカメは、64匹になった。
海の中には、サンゴを育てる場所もある。1メートル四方の枠が13個あり、およそ600のサンゴが育っている。サンゴは、魚や小さな生き物のすみかになる。サンゴが育てば、海の生き物も戻ってくる。2025年には、環境の省庁もこの取り組みに加わった。また、地元の漁師や環境の省庁と一緒に、海の中で1.5トン、浜で1.8トンのごみを集めた。
村の女性と、子どもたち
宿は、売り上げ全体の0.5%を、地域と自然のための基金に積み立てている。公式サイトによると、2025年には、ディッバの男子と女子の学校に通う1,785人の子どもたちに、宿の支援が届いた。
2015年からは、ディッバの女性の会と一緒に、「オマーンの女性の目を通して」という体験を開いている。2025年には58人の客が参加した。また、使い終わった宿のカーテンやタオル850キロを、女性たちが手工芸品につくり変えた。宿で役目を終えた布が、村の女性の仕事になる。
ほかにも、ジギーの村の100人の暮らしをお金の面で支え、ラマダン(断食月)の時期には食料の袋を届けた。宿の「アースラボ」の担当者は学校に出かけ、およそ1,200人の生徒に自然と環境について伝えた。子どもたちには、249足の靴も贈った。宿は、自分たちの暮らす入り江だけでなく、まわりの町と村も支える場所になっている。
日本の宿に置き換えると
ジギーベイの工夫は、水も、食べ物も、布も、「一度使って終わり」にしないことにある。日本の宿でも、客室の飲み水を給水器と繰り返し使えるびんに変えたり、使い終わったシーツやタオルを地域の人の手仕事に生かしたりすることができる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%の宿を考える。年に5,110室泊で、1室1泊あたり2本のペットボトルの水を置いているとする。これを給水器とガラスのびんに変えれば、年に1万220本のペットボトルを使わずにすむ。飲み水を宿で詰めれば、ペットボトルを運ぶ手間も、捨てる手間も減る。客には、部屋の水の話から、宿の考え方を伝えることができる。
持ち帰れる知識
- 乾いた土地では、使った水をもう一度使うことが宿を支える
- 宿の畑と地域の農家を、堆肥と作物でつなぐことができる
- 海の生き物の記録に、客が加わることができる
- 役目を終えた布も、地域の人の仕事に変えられる
宿で考えられること
- 客室に置いているペットボトルの本数を、1か月数えてみる
- 使い終わったシーツやタオルを、地域で生かせないか相談する
- 宿から出る生ごみを、地域の農家の堆肥にできないか考える
事業・予約への接続
ジギーベイは、村のような宿で過ごす時間と、畑や海を守る取り組みを、宿の魅力として伝えている。客は、自分の泊まる宿が、水を返し、村と海を育てていると知って、宿を選ぶ。
Sources / 参考情報
- Six Senses(英文) - ジギーベイの持続可能性
裏付け: 売り上げ全体の0.5%の基金、2025年の数字(ガラスびんで25万1,234本のペットボトル削減、4,694万1,000リットルの排水を水やりに、ディッバの学校の1,785人、漁師と環境の省庁と海中1.5トン・浜1.8トンのごみ、堆肥14トンを農家へ、農業の省庁と7農場410頭のヤギの予防接種、農場の果物と野菜3,752キロと牛乳1,708リットル)、オリーブ・リドリー・プロジェクトと2019年から264匹、2025年に226回の出会いで38匹、名前をつけた64匹、1メートル四方の枠13個とおよそ600のサンゴ、2025年に環境の省庁が参加、2015年からのディッバの女性の会との体験と2025年の58人、カーテンとタオル850キロを手工芸品に、ジギーの村の100人の暮らしの支援とラマダンの食料の袋、アースラボが学校でおよそ1,200人の生徒に伝える、249足の靴 - Six Senses(英文) - ジギーベイ(宿の資料、PDF)
裏付け: ムサンダム半島、82棟の専用プール付きヴィラ、昔ながらのオマーンの村をかたどり、ヤシの木陰の小道と自転車の道、自然の石と木の建物、冬に実る有機の菜園とディッバの農場(作物の多くと地元の家畜)、材料はディッバの町・ジギーの村・宿の菜園と農場から、必要な分だけとる、宿の飲み水のびん、湾岸の国々でただひとつの海水のプール - Six Senses(英文) - ジギーベイの立地
裏付け: ドバイから120分、岩山と長い砂浜にはさまれる、1.6キロの白い砂浜、四輪駆動車かパラグライダーで到着、海抜293メートルから飛ぶ