ごみを埋めない宿を、村の人と続ける:東バリのアリラ・マンギスが、アースチェックのプラチナを得た方法
インドネシアのバリ島。にぎやかな南部の町から離れた東の海岸に、マンギスという土地がある。バリで最も高く、最も神聖な山とされるアグン山と、海との間。ココヤシの林の中に、リゾート「アリラ・マンギス」が建っている。空港からは車で90分ほどだ。
ハイアットの公式サイトによると、宿の部屋とスイートは55室。どの部屋も海に向いていて、海峡の向こうにはヌサ・ペニダ島が見える。建物は、バリの伝統的な建築を、今の形に置きかえたつくりだ。
たとえば、朝。客が部屋の前から、ココヤシの林ごしに海を見る。部屋の中には、繰り返し使える水のボトルが置かれている。ごみを出さない宿の一日は、この1本から始まる。
「ごみを出さない」という決まり
宿は、ごみを出さないという方針、「ゼロウェイスト」を掲げている。アリラのブランドは、バリにある宿で「埋め立てるごみをゼロにする」方針を取り入れ、島のごみの問題に、ごみを増やさないようにしてきたと説明している。
バリでは、観光客が増えるにつれて、ごみの問題が大きくなってきた。宿から出るごみを、そのまま埋め立て地に送らない。分けて、使い直し、資源に戻す。その仕組みを、宿の中だけで終わらせなかったことが、アリラ・マンギスの特徴だ。
村の人と、ごみを資源に変える
宿は、「グリーンバンク」という地域のリサイクルの取り組みを行っている。地元の村の人を育て、雇って、ごみを資源に変える仕事を担ってもらう取り組みだ。
ごみを分けて資源に戻すには、人の手がいる。プラスチック、紙、瓶、生ごみと、種類ごとに分けなければ、資源としては使えないからだ。その仕事を村の人が担えば、村に働く場所が生まれる。宿のごみを減らすことと、村の暮らしを支えることが、ひとつの取り組みの中でつながっている。客室に置く繰り返し使えるボトルや、宿の中を回るための自転車も、ごみや燃料を減らす小さな工夫だ。
宿の前の海のサンゴ礁を守る
東バリの海は、水が澄み、サンゴや海の生き物が豊かで、ダイバーの楽園と呼ばれる。宿は、地元のダイビングの事業者と組んで、サンゴ礁を守る取り組みを続けている。宿の前に広がる海は、客がシュノーケリングやダイビングを楽しむ場所でもある。海を守ることは、宿の魅力を守ることでもある。
2016年にゴールド、2023年にプラチナ
こうした取り組みを、宿は外からの評価で確かめてきた。「アースチェック」は、旅行や観光の業界のための、環境と社会への責任の認証だ。宿は、2016年にアースチェックのゴールドを、2023年にはその上のプラチナを受けた。
認証を受けるには、水やエネルギー、ごみなどを測り、続けて減らしていく必要がある。一度の取り組みではなく、何年も続けてきたことが、ゴールドからプラチナへの歩みに表れている。外からの評価は、取り組みを客に伝える時の、わかりやすい手がかりにもなる。
村の文化を、客と分け合う
宿の取り組みは、環境だけではない。宿のレストランでは、「メギブン」という食事を楽しめる。東バリの村の祭りや儀式の時に、家族や友人と料理を分け合って食べる、昔ながらの食べ方だ。
アグン山の斜面には、20を超える寺が集まるブサキ寺院がある。宿の近くには、古い暮らしと決まりを守り続ける「バリ・アガ」の人々の村、トゥンガナンがある。この村は、たて糸とよこ糸の両方を染めて織る、「グリンシン」と呼ばれる布で知られる。宿は、自転車でこの村を訪ねる体験や、近くのクサンバで昔ながらの塩づくりを見る体験、宿の菜園で材料をとってまきの火で料理する体験を用意している。客が村の文化にふれることが、村の暮らしを支えることにもつながる。
山の村スラットから、田んぼや、サラクという果物の畑、海沿いの道を抜けて、海辺まで自転車で下る6時間の体験もある。宿では、ハトマワンとブディという2人の案内役が、東バリの知られていない魅力を客に紹介している。地元をよく知る人が案内することで、客は観光地をめぐるだけでは見えない、東バリの暮らしにふれることができる。
日本の宿に置き換えると
アリラ・マンギスの工夫は、ごみを減らす仕事を、地域の人の仕事に変えたことにある。日本の宿でも、地域の福祉の作業所や、地元の団体と組んで、ごみの分別やリサイクルを一緒に進めることができる。地域の祭りの料理や食べ方を、宿の夕食で客と分け合うこともできる。ごみを減らす取り組みも、地域の文化を伝える取り組みも、地元の人と一緒に続けることで、宿だけではできない広がりが生まれる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%の宿を考える。年に5,110室泊で、1室1泊あたり1キロのごみが出るとすると、年に5,110キロになる。そのうち40%が生ごみだとすると、2,044キロ。これを地域の農家の堆肥にできれば、宿が出すごみの4割を、燃やさずに土に返せる計算になる。
持ち帰れる知識
- ごみを減らす仕事を、地域の人の仕事に変えることができる
- 宿の前の海を守ることは、宿の魅力を守ることにもなる
- 外からの認証で、取り組みを何年も続けて確かめられる
- 地域の食べ方や文化も、客と分け合う宿の魅力になる
宿で考えられること
- 宿から出るごみを、1週間分けて量ってみる
- ごみの分別やリサイクルを、地域の団体と一緒にできないか相談する
- 客室のペットボトルを、繰り返し使えるボトルに変えられないか考える
事業・予約への接続
アリラ・マンギスは、静かな東バリの海と、ごみを出さず村と海を守る取り組みを、宿の魅力として伝えている。客は、自分の滞在が村の仕事と海を支えていると知って、宿を選ぶ。
Sources / 参考情報
- Hyatt(英文) - アリラ・マンギス
裏付け: 東バリのマンギスの海辺の宿、ココヤシの林、海とアグン山(バリで最も神聖な山)の間、すべての部屋が海に向きヌサ・ペニダ島が見える、バリの伝統建築を今の形に、2016年にアースチェックのゴールド・2023年にプラチナ、ゼロウェイストの方針、地元のダイビングの事業者とサンゴ礁を守る、グリーンバンクで村の人を育て雇う、メギブン(東バリの村の祭りや儀式で分け合う食べ方)、トゥンガナンのグリンシン、東バリの澄んだ海とダイバーの楽園、空港から車で90分、客室の繰り返し使える水のボトル、自転車、トゥンガナンへの自転車の体験・クサンバの塩づくり・菜園とまきの火の料理の体験、スラットから田んぼとサラクの畑を抜けて海辺まで自転車で下る6時間の体験、ハトマワンとブディの2人の案内役、20を超える寺が集まるブサキ寺院 - Hyatt(英文) - アリラ・マンギスの客室
裏付け: 55の部屋とスイート - Hyatt(英文) - アリラ・ホテルズ・アンド・リゾーツ
裏付け: 多くの宿がアースチェックの基準で設計・建設、バリのアリラの宿で埋め立てるごみをゼロにする方針を取り入れ、島のごみの問題にごみを増やさない