谷の上に、村のように建つ:バリ島のアリラ・ウブドが、果物と野菜をすべて地元から買う理由
インドネシアのバリ島。島のまん中の山すその町ウブドは、100年以上にわたって、バリの絵や彫刻、踊りの中心であり続けてきた。そのウブドの町から5キロほど離れたパヤンガンの村に、リゾート「アリラ・ウブド」がある。
ヤシやバナナの木が並ぶ小道を抜けると、宿は、聖なる川とされるアユン川の深い谷の上に開ける。目の前には、緑の森がどこまでも広がる。公式サイトによると、宿の配置は、バリの昔ながらの「丘の村」にならっている。部屋やヴィラは、谷の急な斜面に柱を立てて建てられ、木の上の家のように谷に張り出している。設計は、世界的に知られる建築事務所ケリー・ヒル・アーキテクツだ。バリの伝統的な建物の形を、今の時代のすっきりした形に置き換えた。プールの水面は、段々になった森の中へ、どこまでも流れていくように見える。かつての公式サイトでは、部屋は、谷の眺めのヴィラやプール付きのヴィラなど、4つの種類に分かれていた。
たとえば、朝の市場。料理教室に参加した客が、地元の人に混じって、その日の野菜や香辛料を選んでいる。買った材料は宿に持ち帰り、宿の畑で料理する。
果物と野菜は、すべて地元から
公式サイトによると、宿は、新鮮な果物と野菜を、すべて地元から買っている。地元から買えば、そのお金は近くの農家に回る。運ぶ距離が短いので、トラックや船が出す温室効果ガスも少なくてすむ。
一般に、食べ物は、遠くから運ぶほど、途中で傷んだり、売れ残ったりしやすい。近くの畑から、必要な分だけ届けば、運ぶ途中で捨てられる食べ物も減らしやすい。食べ物を近くから買うことは、地域の経済を支え、食品ロスを減らすことにもつながる。
レストランでは、バリの料理と、畑から食卓へという考え方でつくる西洋のコース料理を、伝統的な草ぶきの屋根の下で出している。料理教室は、地元の市場で材料を選ぶところから始まり、宿の有機の畑で料理して終わる。客は、食べ物がどこから来るのかを、自分の目で確かめられる。
せっけんも、村でつくる
地元から買うのは、食べ物だけではない。公式サイトによると、客室のせっけんやシャンプー、スリッパ、宿の店で売る品やスパの品の多くは、バリでつくられている。その多くは、アリラが支える村の協同組合の手によるものだ。
宿が買うものを村でつくれば、村に仕事が生まれる。客が気に入った品を店で買えば、そのお金も村に戻る。
かつての公式サイトでは、取引先にまとめて注文することで、届く品の包装やごみを減らすよう求めていると紹介していた。持続可能なやり方を取る取引先を、優先して選んでいるとも書いていた。
働く人は、となりの村から
公式サイトによると、働く人のおよそ92%はバリの人だ。およそ70%は、宿から12マイル(約19キロ)以内に住んでいる。採用では、宿のまわりの「バンジャール」と呼ばれる集落の人を、いちばんに優先している。
宿は、地元の水路の取り組みや、リサイクル、貧しさをなくす取り組みにも加わっている。かつての公式サイトでは、田んぼに水を分け合うバリの伝統的な仕組み「スバック」の集まりや、地元のリサイクルの施設、学校への環境の授業、東バリの貧しさをなくす活動などと協力していると紹介していた。バリやウブドのホテルの協会、地元の環境の団体、お産と母子の健康を支える団体とも手を組んでいた。宿の体験を通じて、地元の店や人の仕事を支えるという考え方も示していた。
村の暮らしを、客に開く
宿の体験も、村の暮らしにつながっている。公式サイトによると、客は、農家の人と一緒に田んぼに入り、米を育てる1日を過ごすことができる。地元の職人の横で銀の装身具をつくる体験や、田んぼや寺、村の家々の間を自転車で走る体験もある。米づくりの体験はおよそ5時間で、バリの軽い朝食と昼食がつく。ぬかるんだ田んぼを、はだしで歩く。バラモンの家の寺を訪ね、高位の僧から祈りを受ける体験もある。客は、宿の外の村で、バリの暮らしにふれる。
日本の宿に置き換えると
アリラ・ウブドの工夫は、食べ物から日用品まで、宿が買うものを地元に向けていることにある。日本の宿でも、朝食の野菜を近くの農家から直接買ったり、地元の店でつくったせっけんや手ぬぐいを客室に置いたりできる。仕入れ先と相談して、必要な量だけを、まとめて届けてもらうこともできる。地元の農家と組んで、田植えや収穫を客が手伝う体験をつくれば、宿の外の田畑も、宿の大切な魅力になる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%の宿を考える。年に5,110室泊で、1室1泊あたり0.2キロの食べ物が、仕込みや食べ残しで捨てられているとすると、年に1,022キロになる。近くの農家から必要な分だけ仕入れる工夫などで、これを3割減らせれば、年に約307キロの食べ物を捨てずにすむ。
持ち帰れる知識
- 食べ物を近くから買うと、地域の経済を支え、運ぶ途中のロスも減らしやすい
- 客室の品を地元でつくれば、村に仕事が生まれる
- まとめて注文すると、包装やごみを減らせる
- 働く人を近くの集落から採ることも、地域への貢献になる
宿で考えられること
- 朝食の食材のうち、近くの農家から直接買えるものを書き出してみる
- 客室の備品を、地元の店の品に替えられないか考える
- 仕入れ先と、包装を減らす届け方を相談してみる
事業・予約への接続
アリラ・ウブドは、地元の食べ物や村の品、村の暮らしにふれる体験を、宿の魅力として伝えている。客は、バリの村とつながる滞在ができる宿だと知って、宿を選ぶ。
Sources / 参考情報
- Alila Hotels(英文) - アリラ・ウブドの持続可能性(2023年2月の保存版)
裏付け: 働く人のおよそ92%がバリの人、およそ70%が12マイル以内に住む、まわりのバンジャールの人を優先、水路・リサイクル・貧しさをなくす取り組みに参加、新鮮な果物と野菜をすべて地元から買う、せっけん・シャンプー・スリッパ・店とスパの品の多くがバリ製で村の協同組合がつくる - Alila Hotels(英文) - アリラ・ウブドについて(2023年2月の保存版)
裏付け: ヤシやバナナの小道、アユン川の上、ウブドから5キロ、バリの丘の村にならった配置、谷の上に柱を立てて建つ、ウブドは100年以上バリの芸術の中心、草ぶきの屋根の下でバリ料理と畑から食卓へのコース、市場で材料を選び有機の畑で料理する教室、地元から買うと運ぶ時の温室効果ガスが少ない - Alila Hotels(英文) - アリラ・ウブドの持続可能な観光(2012年4月の保存版)
裏付け: まとめて注文して包装やごみを減らすよう取引先に求める、持続可能なやり方の取引先を優先、体験を通じて地元の店や人を支える、バリとウブドのホテルの協会・IDEP・ヤヤサン・ブミ・セハット・スバック・リサイクルの施設・学校での環境の授業・東バリの貧しさをなくす活動などとの協力、部屋はスーペリア・デラックス・谷の眺めのヴィラ・プール付きのヴィラの4種類 - Alila Hotels(英文) - アリラ・ウブドの設計(2009年5月の保存版)
裏付け: 世界的に知られるケリー・ヒル・アーキテクツの設計、バリの伝統的な形を今の形に、部屋とヴィラが木の上の家のように谷に柱で建つ、段々の森へ流れていくように見えるプールの水面 - Hyatt(英文) - アリラ・ウブド
裏付け: 聖なるアユン川の上、農家と米を育てる体験(およそ5時間、軽い朝食と昼食つき、ぬかるんだ田んぼをはだしで歩く)、バラモンの家の寺で高位の僧から祈りを受ける体験、職人と銀の装身具をつくる体験、田んぼや寺や村の家々を自転車で走る体験