GOAL 14 · TARGET 14.2 海洋・沿岸保全 3分 / 2013文字 海草を守って珊瑚幼生を放流する #093

海草を抜かずに、守る:モルディブのシックスセンシズ・ラームが、100万を超えるサンゴの赤ちゃんを海に放つ方法

インド洋に浮かぶモルディブ。南にあるラーム環礁に、リゾート「シックスセンシズ・ラーム」がある。宿の資料によると、ラーム環礁でただ一つの5つ星のリゾートだ。部屋は、海の上と浜に建つ94棟のヴィラで、地元の持続可能な材料で建てられている。海の上の施設は、モルディブでも最大級の大きさだ。

公式サイトによると、ラーム環礁は、海を守るうえで特に大切な場所として、国際的な団体から「ホープ・スポット」に選ばれている。環礁全体が選ばれたのは、モルディブではここだけだ。宿のまわりには、6つの海洋保護区がある。

たとえば、昼下がりの浅い海。シュノーケルで顔をつけると、足もとの砂地に緑の草がゆれている。その草を、ウミガメがゆっくり食べている。

海草を、抜かずに残す

公式サイトによると、モルディブでは、多くのリゾートが浜の前の海草を取り除いてきた。一般に、白い砂だけの海のほうが、見た目がよいと考えられてきたためだ。しかし海草は、ウミガメやエイ、魚の大切な食べ物であり、すみかでもある。

シックスセンシズ・ラームは、海草を取り除かずに守っている。2025年には、およそ38万5,000平方メートル、サッカー場54面分の海草を、100%取り除かずに残した。この海草は、推定で6,396トンの炭素をたくわえている。海草は、海の中で炭素をため込む植物でもある。海草を残すことは、生き物のすみかを守り、気候の変化をやわらげることにもつながる。

海の大きな生き物を、数え続ける

宿の海洋生物学者は、海を守る3つの団体と組んで、研究のチームをつくっている。マンタを調べる「マンタ・トラスト」、海の保全団体「ブルー・マリン財団」、ウミガメを守る「オリーブ・リドリー・プロジェクト」だ。マンタ・トラストとは2014年から、オリーブ・リドリー・プロジェクトとは2018年から協力している。

公式サイトによると、チームは2025年に、1,928時間の調査を行い、マンタやウミガメ、サメなどの大きな生き物を3万4,966回確認した。そのうちマンタは579回。見分けたウミガメは1,206匹で、ウミガメの巣は26か所あった。ウミガメの調査では、写真で1匹ずつ見分け、巣を見守り、海に捨てられた網の回収にも取り組んでいる。公式サイトは、これをモルディブで初めての、地域の人と進めるウミガメの保全の取り組みと紹介している。

サンゴの赤ちゃんを、海に放つ

チームの拠点は、宿の中にある「シェル」という施設だ。研究室のほかに、映画を見られる部屋や子どものための場所があり、客も海のことを学べる。マンタが集まる場所は、宿から10分ほど、深さ20メートルの海の中にある。

公式サイトによると、シェルでは、1万個のサンゴの赤ちゃんを育てることができる。サンゴは、卵から生まれた小さな「幼生」の時期に、海の中をただよって、すみつく場所を探す。宿はこの幼生を育てて海に放ち、2025年には104万8,318の幼生を放した。これまでに放した幼生は、400万近くになる。

地元の海の幸と、地元の子どもたち

宿は、ごみの出し方も見直している。公式サイトによると、プラスチックは、まず断り、減らし、別の使い道に回すという順番で考える。包みは土にかえる素材を選び、ソースやチョコレートは宿の中でつくっている。買った品の容器が、ごみにならずにすむ。

食べ物も、地元の海とつながっている。公式サイトによると、2025年には、1万3,000キロを超える地元の魚介を仕入れた。ブルー・マリン財団などが進める「フィッシュ・フォー・トゥモロー」という取り組みでは、小さな舟で漁をする地元の漁師と協力している。

地元の人との活動も広い。2025年には、3,119人の地元の人が宿の活動に参加した。生徒向けの取り組み「ハロー・ハル」は、モルディブの言葉で「こんにちは、解決策」という意味で、944人の生徒が参加した。2024年には、180人の生徒をシェルに招いた。2016年からは、環礁の人が住む11の島すべて、およそ1万3,000人を対象にした地域の取り組み「エク・エキー」も続けている。

日本の宿に置き換えると

シックスセンシズ・ラームの工夫は、見た目のために取り除かれてきた自然を、あえて残したことにある。日本の宿でも、庭の一部の草を刈らずに残して虫や鳥のすみかにしたり、浜の海藻を観察する会を開いたりできる。残した理由を客に伝えれば、手入れをしていない場所ではなく、守っている場所として見てもらえる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%の宿を考える。年に5,110室泊で、1室に平均1.8人が泊まるとすると、年に延べ9,198人になる。そのうち5%の客が、1時間の自然の観察会に参加するとすると、年に約460人が、宿のまわりの自然を1時間かけて学ぶことになる。

持ち帰れる知識

  • 見た目のために取り除かれてきた自然を、あえて残すことができる
  • 海草は、生き物のすみかであり、炭素をため込む場所でもある
  • 海を守る団体と組めば、宿だけではできない調査ができる
  • 客が学べる場所を宿の中に持つと、保全が宿の魅力になる

宿で考えられること

  • 庭や敷地の一部を、刈らずに残す場所にできないか考える
  • 宿のまわりの自然を調べている団体や研究者を探してみる
  • 客に自然を伝える小さな観察会を、季節ごとに開いてみる

事業・予約への接続

シックスセンシズ・ラームは、海草やサンゴ、マンタを守る取り組みと、それを客が学べる場所を、宿の魅力として伝えている。客は、モルディブの海を守る宿だと知って、宿を選ぶ。

Sources / 参考情報

  • Six Senses(英文) - シックスセンシズ・ラームの持続可能性
    裏付け: 環礁全体が選ばれたモルディブで唯一のホープ・スポット、6つの海洋保護区、多くのリゾートが海草を取り除く、2025年におよそ38万5,000平方メートル(サッカー場54面分)の海草を100%残す、推定6,396トンの炭素、マンタ・トラスト(2014年から)・ブルー・マリン財団・オリーブ・リドリー・プロジェクト(2018年から)との研究のチーム、拠点のシェル、2025年に1,928時間の調査・大きな生き物3万4,966回・マンタ579回・ウミガメ1,206匹・巣26か所、写真で見分ける調査・巣・捨てられた網の回収・モルディブで初めての地域の人と進めるウミガメの保全、マンタの場所は宿から10分で深さ20メートル、プラスチックを断る・減らす・別の使い道に回す、土にかえる包み、ソースとチョコレートを宿でつくる、シェルで1万個のサンゴの赤ちゃんを育てられる、2025年に104万8,318の幼生、これまでに400万近く、2025年に1万3,000キロを超える地元の魚介、フィッシュ・フォー・トゥモロー、2025年に3,119人の地元の人、ハロー・ハル(「こんにちは、解決策」の意味)で944人、2024年に180人の生徒をシェルへ、2016年からエク・エキーで人が住む11の島すべてのおよそ1万3,000人
  • Six Senses(英文) - シックスセンシズ・ラーム(宿の資料、PDF)
    裏付け: ラーム環礁でただ一つの5つ星のリゾート、海の上と浜の94棟、地元の持続可能な材料で建てる、モルディブで最大級の海の上の施設

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