壁にも屋根にも、緑が育つ:バリ島のアリラ・スミニャックが、環境の国際基準に沿って建てられた方法
インドネシアのバリ島。南西の海岸には、クタやレギャンの町から北へ、5マイル(約8キロ)にわたって砂浜が続く。初心者向けの波と夕日で知られ、にぎやかなビーチクラブも並ぶ。その浜の、北の静かな端に建つのが、ビーチリゾート「アリラ・スミニャック」だ。すぐ近くには、バリでも独特な寺として知られるプラ・プティトゥンゲットがある。
公式サイトによると、建物を設計したのは、シンガポールの建築事務所URBNarc(アーバンアーク)のガウラン・ケムカだ。今の時代のすっきりした建物に、壁をはう植物や、植物が育つ屋根、緑のテラスが織り込まれている。緑の配置は、バリの自然の景色に着想を得て、その景色を尊重するように考えられた。廊下やロビーなど、客が使う場所のすみずみまで緑があり、海からの風が自然に通り抜ける。
たとえば、昼下がりの廊下。冷房の風ではなく、海からの風が、壁の植物の葉をゆらしていく。
建てる前から、環境の基準に沿う
公式サイトによると、宿は、建物の見た目だけでなく、環境への負担をできるだけ小さくすることにも取り組んできた。土地の形に逆らわない敷地の計画、地元の建築材料、環境とエネルギー、資源を効率よく使う設備。これらはすべて、設計と建設の段階から組み込まれた。その基準となったのが、国際的に知られる環境の評価と認証の仕組み「アースチェック」だ。
アースチェックは、宿や観光地の環境への取り組みを、決まった基準で測り、評価する仕組みだ。建ててから設備を後で付け足すより、設計の段階から考えておくほうが、無理なく、むだも少なく取り入れやすい。
一般に、建物を緑で覆うと、強い日ざしが壁や屋根に直接当たりにくくなり、建物が熱くなりにくい。風が通る廊下は、冷房にたよる場所を減らす助けにもなる。暑いバリでは、こうした工夫が、電気の使い方にもかかわってくる。
屋根の下の、水で育てる畑
宿の敷地には、土を使わず水で野菜を育てる畑もある。公式サイトによると、宿はこの畑で有機の野菜やハーブを育て、浜辺のレストラン「シーソルト」の料理や、ごみを出さないカクテルに使っている。
シーソルトは、地元の海でとれた天然の魚や、持続可能な方法でとった魚介の料理を出している。バリでは昔から、漁師が「ジュクン」と呼ばれる木の小舟で海に出てきた。宿は、こうした海の恵みとともに生きる伝統を大切にしている。
客室の備品も見直した。公式サイトによると、環境を守る取り組みの一つとして、一部の備品は置くのをやめたり、頼まれた時だけ出したりしている。宿は、必要なものを持ってくるよう、客に前もって知らせている。
近くの学校と、若い料理人を支える
宿は、地域の子どもたちも支えてきた。かつての公式サイトによると、宿は、宿があるクロボカンの2つの小学校を支援してきた。一つは1951年にできた、この地域の子どもの教育の先がけとなった学校だ。
奨学金もある。宿は、バリの子どもの教育を支える団体「バリ・チルドレン・ファウンデーション」と組んで、レストランや飲食の仕事を学ぶ学生を支える奨学金「フード・フォー・ソート」を続けている。学生は、宿で学び、指導を受け、働くことができる。2018年には、面接を受けた4人の中から2人が選ばれ、宿で働きながら学び始めた。
かつては、宿のレストランの一部の料理の値段に、子どもたちを支えるための寄付が含まれていた。2018年には、こうして集めたお金が、子どもを支える団体のための慈善の催しに全額寄付された。
寺の祭りと、島の手仕事
宿は、バリの暮らしに欠かせない寺の文化も、客に伝えている。公式サイトによると、近くのプラ・プティトゥンゲットでは、バリの暦に合わせた寺の祭りが開かれ、寺の向かいの建物では、伝統の踊りの練習も見られる。宿の体験では、寺の僧「マンク」の案内で、海の寺での儀式に加わることもできる。
今の宿の体験には、地域とのつながりもある。公式サイトによると、客は地域の食堂「ラガム・コミュニティ・キッチン」の食事を届ける体験に参加でき、その料金は寄付される。#089で紹介したアリラ・マンギスと同じバリ島東部の、伝統の塩づくりや、縦糸と横糸の両方を染めて織る珍しい織物にふれる体験もある。
日本の宿に置き換えると
アリラ・スミニャックの工夫は、環境への配慮を、建てる前の設計から組み込んだことにある。日本の宿でも、建て替えや改装の時に、壁や屋根に植物を育てる場所をつくったり、風が通る廊下の配置を考えたりできる。客室の備品も、本当に必要なものだけを置き、ほかは頼まれた時に出す形に変えられる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%の宿を考える。年に5,110室泊で、毎回1組の使い捨ての歯ブラシやかみそりなどを置いているとする。これを頼まれた時だけ出す形にして、客の6割が使わなかったとすると、年に3,066組の備品を使わずにすむ。
持ち帰れる知識
- 環境への配慮は、設計の段階から組み込むと無理なく取り入れやすい
- 建物を緑で覆うと、日ざしをやわらげ、建物を熱くしにくい
- 客室の備品は、頼まれた時だけ出す形にできる
- 宿の仕事を学ぶ場として、地元の若者を支えることができる
宿で考えられること
- 次の改装の時に、壁や屋根に植物を育てられないか考える
- 客室の備品のうち、頼まれた時だけ出せるものを書き出してみる
- 地元の専門学校の学生を、宿で受け入れられないか相談する
事業・予約への接続
アリラ・スミニャックは、緑に包まれた建物と、環境の基準に沿った設計を、宿の魅力として伝えている。客は、にぎやかな浜にありながら、自然に配慮した宿だと知って、宿を選ぶ。
Sources / 参考情報
- Alila Hotels(英文) - アリラ・スミニャックの設計と設備(2019年7月の保存版)
裏付け: シンガポールのURBNarcのガウラン・ケムカが設計、壁をはう植物・緑の屋根・緑のテラス、廊下やロビーなど客が使う場所に緑があり海の風が自然に通る、土地に配慮した敷地の計画・地元の建築材料・環境とエネルギーと資源を効率よく使う設備を設計と建設に組み込む、国際的に知られるアースチェックの評価と認証の基準に沿う - Alila Hotels(英文) - アリラ・スミニャックについて(2022年12月の保存版)
裏付け: バリ島の南西の海岸、クタやレギャンから北へ5マイル続く浜の静かな端、初心者向けの波と夕日とビーチクラブ、プラ・プティトゥンゲットの近く、バリの暦の寺の祭りと寺の向かいの建物での踊りの練習、バリの自然の景色に着想を得て尊重する緑、シーソルトの地元の天然の魚介、ジュクンの伝統、土地の形に逆らわない計画・水で育てる畑・地元の学校の支援 - Alila Hotels(英文) - アリラ・スミニャックの持続可能性(2022年12月の保存版)
裏付け: バリ・チルドレン・ファウンデーションと組んだ奨学金フード・フォー・ソート、学生が学び指導を受け雇われる機会、水で育てる畑で有機の野菜とハーブを育てシーソルトの料理とごみを出さないカクテルに使う - Alila Hotels(英文) - アリラ・スミニャックの持続可能な観光(2019年8月の保存版)
裏付け: クロボカンの2つの小学校を支援、1951年にできた地域の教育の先がけの学校、4人の候補から2人を選び2018年6月に奨学金の受け入れを開始、働きながら学ぶ、料理の値段に寄付を含む取り組み、2018年10月の慈善の催しに全額寄付 - Hyatt(英文) - アリラ・スミニャック
裏付け: 5つのインフィニティプール、一部の客室の備品を置かないか頼まれた時だけ出す、ラガム・コミュニティ・キッチンの食事を届ける体験と料金の寄付、寺の僧(マンク)の案内で海の寺の儀式に加わる体験、東部の塩づくりや縦糸と横糸を染めて織る織物にふれる体験、水で育てる畑と地元の学校の支援