GOAL 15 · TARGET 15.5 自然・生物多様性・保全 3分 / 2024文字 草屋根で建ててライオンを守る #095

マサイの家とヴェルサイユが出会う、火口の縁の宿:タンザニアのンゴロンゴロ・クレーター・ロッジが、ライオンと人の暮らしを支える方法

アフリカ東部、タンザニアの北部。ンゴロンゴロ・クレーターは、火山が崩れてできた大きなくぼ地「カルデラ」だ。形がそのまま残るカルデラとしては、世界最大とされる。くぼ地の底には、たくさんの野生の動物が暮らしている。

そのカルデラの縁に建つのが、アフリカで自然の中の宿を営むアンドビヨンドの「ンゴロンゴロ・クレーター・ロッジ」だ。宿の資料によると、宿はよく「マサイとヴェルサイユの出会い」と表される。このあたりで暮らしてきた牧畜の民マサイの家の形に着想を得ながら、部屋の中にはアンティークの家具や、大きなシャンデリアが並ぶ。

部屋は、3つの小さなキャンプに分かれた30のスイートで、泊まれるのは最大60人だ。どのスイートも柱の上に建ち、土と草ぶきの屋根を、人の手でつくっている。寝室にも、居間にも、浴室にも、床から天井までのガラス窓があり、眼下にカルデラが広がる。

スイートには、それぞれ専属の世話係がつき、ベッドにお茶を運び、暖炉の火を整え、泡の風呂を用意する。

宿からは、高地の森を抜けて、カルデラの底へ車で下りていく。浅いマガディ湖のほとりには、ピンクのフラミンゴが群れをなす。宿の資料によると、近くには、人類のゆりかごと呼ばれる遺跡オルドバイ峡谷もあり、日帰りで訪ねることができる。保護官の案内で、カルデラの縁を歩くこともできる。近くのエンパカイ火口を一日かけて歩く道もあり、深い森の中で野生の動物に出会える。

たとえば、夕暮れ。赤い布をまとったマサイの人たちの歌声が響く中、客はカルデラに沈む夕日をながめる。

ライオンと、マサイの暮らし

ンゴロンゴロでは、マサイの人たちが、昔から野生の動物のすぐそばで、牛やヤギを飼って暮らしてきた。ライオンは、マサイの人たちにとって、家畜をおそうおそれのある動物でもある。人とライオンが、どうすれば一緒に暮らしていけるのか。それが、この土地の大きな課題だ。

宿の資料によると、客は、ライオンを守る団体「コペライオン」のチームと半日を過ごすことができる。チームの毎日の仕事を間近で知り、マサイの人たちが野生の動物と隣り合って暮らすとはどういうことなのかを、より深く理解するための体験だ。この体験は前もって予約が必要で、参加すると、どの回もコペライオンへの寄付になる。

宿は、ライオンを守る活動を支える基金を通じて活動する団体の集まり「ライオンスケープ連合」にも加わっている。一つの宿だけではできない保全を、ほかの団体と力を合わせて支えている。

草ぶきの部屋と、ガラスのびんの水

宿の資料によると、宿では、炭酸の入らない水と炭酸の入った水を、敷地の中の設備できれいにしてつくっている。水は、くり返し使うガラスのびんに詰めて出している。これによって、宿ではペットボトルの水を一切使わなくなった。

プラスチックやガラス、古いエンジンオイルなどは、すべて宿の外に送って、再び使ったりリサイクルしたりしている。エネルギーの使い方も、毎月記録して報告している。対象は、まき、ガソリン、軽油、電気、ガス、灯油、炭と幅広い。水も、使う量を細かく見張り、節約に努めている。宿の地図には、木の苗を育てる場所も描かれている。スパでは、アフリカでとれた自然の材料だけでつくった品を使う。何にどれだけ使っているかを毎月知れば、減らす手立ても見えてくる。

村の人と、一緒に

宿は、まわりの村ともつながっている。宿の資料によると、協力団体ワイルド・インパクト(以前のアフリカ財団)を通じて、2006年から42万ドルを超えるお金を、近くの村の教育と医療に投じてきた。大学などで学ぶ学生への奨学金では、42人を支えた。

働く人の79%は、地元の地域から雇っている。宿が買うものの79%は、タンザニアの国内で仕入れている。

客が村の暮らしにふれる体験もある。マサイの女性たちとビーズ細工をつくったり、マサイの村を訪ねたりできる。カルデラの外の湖のそばで、昔ながらの狩りと採集の暮らしを続けるハッザベの人たちと一日を過ごすこともできる。

日本の宿に置き換えると

ンゴロンゴロ・クレーター・ロッジの工夫は、野生の動物と地元の人の暮らしの両方を、客に伝えていることにある。日本でも、シカやイノシシ、クマが畑や人里に出て、暮らしとの折り合いが課題になっている地域は多い。宿が地元の猟師や農家、保護の団体と組んで、その課題を客に伝える体験をつくることもできる。体験の料金の一部を、地元の団体に寄付する形にもできる。客が地域の課題を知れば、宿に泊まることが、その地域を応援することにもつながる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%の宿を考える。年に5,110室泊で、1室1泊あたり100円を地元の自然を守る団体に寄付するとすると、年に51万1,000円になる。宿が毎年決まった額を寄付できれば、団体は先の計画を立てやすくなる。

持ち帰れる知識

  • 野生の動物と人の暮らしの両方を伝えると、保全の意味が客に届きやすい
  • 体験の料金を、保全の団体への寄付につなげることができる
  • ほかの団体と力を合わせれば、一つの宿ではできない保全を支えられる
  • エネルギーや水を毎月記録すると、減らす手立てが見えてくる

宿で考えられること

  • 地域の野生の動物と暮らしの課題に取り組む団体を探してみる
  • 体験の料金の一部を、地元の団体に寄付する形を考える
  • 電気やガス、水の使用量を、毎月記録して見比べてみる

事業・予約への接続

ンゴロンゴロ・クレーター・ロッジは、カルデラの景色と、ライオンを守る活動を知る体験を、宿の魅力として伝えている。客は、野生の動物と地元の人の暮らしを守る宿だと知って、宿を選ぶ。

Sources / 参考情報

  • andBeyond(英文) - ンゴロンゴロ・クレーター・ロッジ(宿の資料、PDF)
    裏付け: 形が残るカルデラとして世界最大のンゴロンゴロ・クレーター、マサイとヴェルサイユの出会い、マサイの家の形に着想、アンティークとシャンデリア、3つのキャンプに30のスイートで最大60人、柱の上に建つ手づくりの土と草ぶきのスイート、寝室と居間と浴室に床から天井までのガラス窓、マサイの歌声と夕日、コペライオンのチームと半日を過ごす体験・マサイが野生の動物と隣り合って暮らす実際を知る・前もって予約・どの回も寄付になる、ライオン回復基金を通じて支えるライオンスケープ連合に参加、敷地の設備で炭酸なしと炭酸入りの水をきれいにしてくり返し使うガラスのびんに詰めペットボトルを一切使わない、プラスチック・ガラス・古いエンジンオイルを外に送って再利用とリサイクル、まき・ガソリン・軽油・電気・ガス・灯油・炭のエネルギーを毎月記録して報告、水の使用量を細かく見張る、ワイルド・インパクト(以前のアフリカ財団)を通じて2006年から42万ドルを超える教育と医療への投資、42人の学生への奨学金、働く人の79%が地元、仕入れの79%がタンザニア国内、ビーズ細工の体験、マサイの村の訪問、専属の世話係、高地の森を抜けてカルデラの底へ下りるサファリ、マガディ湖のフラミンゴ、人類のゆりかごオルドバイ峡谷への日帰り、保護官の案内でカルデラの縁を歩く、エンパカイ火口を一日歩く、宿の地図の木の苗を育てる場所、アフリカの自然の材料のスパの品、エヤシ湖の近くのハッザベの人たちと一日を過ごす体験

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