GOAL 7 · TARGET 7.3 エネルギー・脱炭素 3分 / 2023文字 断崖の下で電気を切り替えて森を植え直す #097

映画の最後の場面の、崖の下で:ケニアのベイトルール・キャンプが、電気を切り替え、村と森を支える方法

アフリカ東部、ケニアのマサイマラ国立保護区。どこまでも続く草原を、毎年、数えきれないほどの動物が移動していく。宿の資料によると、その数は150万頭を超えるヌーに、50万頭のシマウマ、20万頭のトムソンガゼルなど。動物たちは雨を追って、タンザニアのセレンゲティとマサイマラの間を、800キロ以上も移動する。

この保護区の西の端、森に覆われたオロロロの崖の下に、アンドビヨンドの「ベイトルール・キャンプ」がある。公式サイトによると、ここは大地溝帯が始まる場所であり、映画『愛と哀しみの果て(原題:アウト・オブ・アフリカ)』の最後の場面が撮られた場所でもある。キャンプは、その崖のすぐ下にある。

宿は、保護区に接する「キチュワ・テンボ」という私有の土地にある。公式サイトによると、この土地はマサイの地主から借りたもので、ほぼアンドビヨンドの客だけが動物を見て回る。首都ナイロビの空港から小さな飛行機で1時間ほどで、近くの滑走路に着く。

たとえば、夕方。テントのデッキから草原をながめていると、遠くでキリンが木の葉を食べている。

1920年代の空気を、テントで

宿の資料によると、キャンプは1920年代から30年代のケニアのサファリの雰囲気を伝えている。2つのキャンプに9張ずつ、合わせて18張のテントがあり、泊まれるのは最大36人だ。テント1張の広さは87平方メートル。アンティークの家具が置かれ、屋外のシャワーや、星空をながめながら入れる浴槽もある。

公式サイトによると、館内には、地元のマサイの職人が手づくりした品が織り込まれている。マサイの花嫁の腰布を使ったいすや、ビーズを巻いた伝統のこん棒の形をしたドアの取っ手などだ。英国の旅行誌の記事によると、改装の時には、古い銀器やガラスの器、革のいす、ソファを、捨てずに直したり、使い回したりした。

電気と水を、少しずつ減らす

宿の資料には、アンドビヨンドのケニアの宿の取り組みがまとめられている。資料の時点では、ベイトルール・キャンプと、隣のキチュワ・テンボ・テンテッド・キャンプの2つの宿だ。資料によると、2つの宿で使うエネルギーのうち、67%を再生可能なきれいなエネルギーでまかなった。客1人あたりの二酸化炭素は、2016年から毎年4.7キロずつ減らしてきた。

水も、客1人あたり1日に使う量の目標を、2017年から毎年下回り続けてきた。2つの宿には、どちらも高度な排水の処理設備がある。飲み水は宿の設備でびんに詰め、年に7万6,757本のペットボトルを使わずにすんでいる。

客1人あたりの量で目標を決めれば、客が多い月も少ない月も、同じものさしで比べられる。毎年少しずつでも減らし続けることが、大きな差になる。

森を植え直し、村を支える

宿のそばには、ニェクウェリの森がある。宿の資料によると、宿は地元の人と一緒に、この森を守り、元に戻す取り組みを進めている。米国の旅行誌の2025年の記事によると、宿と協力団体ワイルド・インパクトは、近くのマサイの村の、荒れた森を元に戻すための団体をつくった。森にカメラを置いて今ある木を守り、苗を育てる場所には、この土地の木の苗がおよそ3万5,000本ある。

同じ記事によると、働く人の70%は近くのマサイの村から雇われている。宿と協力団体は、マサイの子どもたちのための学校をいくつも開き、いちばん大きな学校では600人近くが学ぶ。どの学校でも、自然を守る授業が行われている。近くの病院はケニア政府と一緒に運営し、2024年8月には、お産のための病棟が開いた。

宿の資料によると、ケニアの宿では、2018年から2020年に、562人の子どもや若者が自然を守る授業を受けた。宿は、マサイマラの5万1,000ヘクタールの保全も支えている。客は、協力団体が支える村の取り組みを訪ねたり、宿の人と一緒にニェクウェリの森について学んだりできる。キャンプでは、1日おきにマサイの踊りも披露される。

また、アンドビヨンドはライオンを守る活動を支える「ライオンスケープ連合」の立ち上げに加わり、2万5,000ドルを出した。

日本の宿に置き換えると

ベイトルール・キャンプの工夫は、電気や水の使い方を、客1人あたりの目標で測り、毎年減らし続けていることにある。日本の宿でも、電気やガス、水の使用量を毎月記録し、1室1泊あたりで比べることができる。照明をLEDに替えたり、使わない部屋の空調を止めたりすれば、少しずつでも確実に減らせる。古い家具を捨てずに直して使うことも、資源を大切にすることにつながる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%の宿を考える。年に5,110室泊で、1室1泊あたり10キロワット時の電気を使っているとすると、年に5万1,100キロワット時になる。これを1割減らせれば、年に5,110キロワット時の電気を使わずにすむ。

持ち帰れる知識

  • 客1人あたりで目標を決めると、毎年の変化を比べやすい
  • 毎年少しずつ減らし続けることが、大きな差になる
  • 古い家具を捨てずに直すことも、資源を大切にすることになる
  • 森や学校、病院など、宿のまわりの暮らしを長く支えることができる

宿で考えられること

  • 電気、ガス、水の使用量を、1室1泊あたりで毎月記録してみる
  • 照明や空調で、すぐに減らせるところを書き出してみる
  • 古い家具を、捨てずに直して使えないか考える

事業・予約への接続

ベイトルール・キャンプは、映画の舞台の景色と、昔のサファリの雰囲気、そして村と森を支える取り組みを、宿の魅力として伝えている。客は、マサイの土地と人を大切にする宿だと知って、宿を選ぶ。

Sources / 参考情報

  • andBeyond(英文) - ベイトルール・キャンプ(宿の資料、PDF)
    裏付け: 150万頭を超えるヌー・50万頭のシマウマ・20万頭のトムソンガゼル、800キロ以上の移動、1920年代から30年代のサファリの雰囲気、映画の最後の場面が撮られた場所の下、2つのキャンプに9張ずつの18張で最大36人、テント87平方メートル、屋外のシャワーと星空の浴槽、ケニアの2つの宿でエネルギーの67%が再生可能、2016年から客1人あたり毎年4.7キロの二酸化炭素を削減、2017年から客1人1日あたりの水の目標を下回り続ける、2つの宿の高度な排水の処理設備、年に7万6,757本のペットボトルを削減、ニェクウェリの森を地元と守り元に戻す、ライオンスケープ連合の立ち上げに加わり2万5,000ドル、2018年から2020年に562人が授業、マサイマラの5万1,000ヘクタールを支える、村の取り組みの訪問とニェクウェリの森の学び、1日おきのマサイの踊り(数字は2020年度)
  • andBeyond(英文) - ベイトルール・キャンプ
    裏付け: 森に覆われたオロロロの崖の下、大地溝帯が始まる場所、映画の最後の場面、2つのキャンプに9張ずつ
  • andBeyond(英文) - ベイトルール・キャンプについて
    裏付け: マサイの職人が手づくりした品(花嫁の腰布のいす、ビーズのこん棒のドアの取っ手)、キチュワ・テンボの私有の土地、マサイの地主から借りた土地、ほぼアンドビヨンドの客だけ、ナイロビの空港から飛行機で1時間弱
  • Travel + Leisure(英文) - ベイトルール・キャンプの宿泊記(2025年)
    裏付け: 働く人の70%が近くのマサイの村から、マサイの子どもの学校と600人近くが学ぶいちばん大きな学校、すべての学校で自然を守る授業、ケニア政府と運営する病院と2024年8月のお産の病棟、荒れた森を戻す団体、森のカメラ、およそ3万5,000本の苗
  • Condé Nast Traveller(英文) - ベイトルール・キャンプの宿泊記(2018年)
    裏付け: 改装の時に古い銀器・ガラスの器・革のいす・ソファを直したり使い回したりした

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