サルの数が、109頭から211頭に:ベトナムのシックスセンシズ・ニンヴァンベイが、太陽の畑と森を守る方法
ベトナムの中部の南にある海辺の町、ニャチャン。その向かいの半島の入り江に、リゾート「シックスセンシズ・ニンヴァンベイ」がある。宿の資料によると、カムラン国際空港から車で1時間、さらに船で20分。金色の砂浜の背に、高い山がそびえる。62棟のヴィラは、どれにも専用のプールがあり、浜辺や水の上、岩の間、山の斜面に建つ。
この入り江を囲む森には、世界でも数の少ないサルがすむ。
森にすむ、絶滅の危険が高いサル
宿の公式サイトによると、宿のまわりの森は、「クロアシドゥクラングール」というサルの大切なすみかだ。国際的な基準で、絶滅の危険が最も高い段階の一つ「近絶滅種」とされている。宿の資料によると、宿はベトナムの保護団体「グリーンヴィエト」と組んで、このサルを守ってきた。
公式サイトによると、保護の取り組みを続けるなかで、宿の背後のヘオ山の一帯にすむサルの数は、2019年の109頭から、2025年には211頭に増えた。宿は、すみかを守り、サルの様子を見守るだけでなく、地域の人や学生に、このサルのことを伝えている。木を植える活動や学校への訪問などに、457人が参加した。
森そのものも調べている。2022年からの調査で、宿のまわりの森で150種の生き物を確認し、そのうち10種は、ベトナムや国際的な絶滅のおそれのある種のリストに載る珍しい植物だった。2022年には新しい種の植物が見つかり、「シックスセンシズ・ターメリック」と名づけられた。
太陽の畑で、電気と野菜をつくる
宿には、ベトナムで初めての、リゾートの中の太陽光発電所「ニンヴァン・グリーンズ」がある。宿の資料によると、800枚の太陽光パネルを並べ、2024年に432枚を足した。公式サイトによると、宿の電気の26〜28%ほどをまかない、2025年には73万9,782キロワット時を発電した。
パネルの下は、日陰の畑になっている。ハーブや果物、野菜を育て、宿のレストランで使う。2025年には、宿の3つの畑で、1万3,849キロの有機の果物と野菜がとれた。畑からは、4,200キロの堆肥もできた。蒸留の道具を使って、13.9リットルの精油もつくった。屋根の上だけでなく、地面の上の発電所でも、土地を二重に使うことができる。
プラスチックも減らしている。公式サイトによると、使い捨てのプラスチックのボトル15万6,288本を、何度も使えるガラスのボトルに替えた。
海のサンゴと、海辺の森
海でも、取り組みは続いている。公式サイトによると、2017年の嵐でサンゴが傷ついたあと、宿はベトナムの海の研究機関と組んで、サンゴを育て直してきた。2025年には、サンゴを育てる80の枠を手入れし、12の枠を新しく沈め、200のサンゴのかけらを植えた。その年の4月18日には、育て直した場所で、サンゴの自然の産卵が初めて記録された。
2025年には、海辺の森マングローブを植え直す取り組みも始めた。地元の役所と組み、150人を超える宿の人が、1万4,700本の苗を植えた。
地域の暮らしも支えている。公式サイトによると、宿のある省の、山あいの村や少数民族の村に、太陽の光で灯る明かりをつけた。暗くなってからの道が安全になり、嵐で停電したときにも明かりが使える。2024年と2025年で、1,330人を超える人の暮らしに届いた。2025年には、近くの小学校に水をきれいにする装置をつけ、200人の生徒と先生が安全な水を飲めるようにした。大きなプラスチックの水のボトルを運ぶ必要もなくなった。2025年には、1,000人を超える生徒が宿の学びの取り組みに加わり、138人の大学生が持続可能性を学ぶ講座に参加した。地元の学校には、400冊の本を贈った。毎月の浜の清掃などには、地域の人や宿の人、客の232人が参加し、1,961キロのごみを集めた。
宿の資料によると、宿は売上の0.5%と、宿の水の売上、サルのぬいぐるみの売上のすべてを基金に回し、こうした取り組みを支えている。
たとえば、朝の山道。客が、ガイドと一緒に、木の上のサルの群れを静かに見上げている。
日本の宿に置き換えると
ニンヴァンベイの工夫は、宿のまわりの一つの生き物を守ることを、宿の柱にしたことにある。数を毎年数えて公表すれば、取り組みの効果が、客にも地域にも見える。日本の宿でも、地域の保護団体や大学と組んで、宿のまわりの鳥やホタル、カエルなどを見守り、その数を客に伝えられる。駐車場や畑の上に太陽光パネルを置けば、日陰で野菜を育てながら、電気もつくれる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%の宿を考える。年に5,110室泊。1室1泊あたり2本のペットボトルの水を出していたとして、それをすべて詰め替えのガラスのボトルに替えると、年に1万220本のペットボトルが減る。
持ち帰れる知識
- 一つの生き物を守ることを、宿の柱にできる
- 数を毎年数えて公表すると、取り組みの効果が見える
- 太陽光パネルの下を、畑として使うことができる
- 売上の一部を基金に回すと、保護の取り組みが続く
宿で考えられること
- 地域の保護団体と組んで、宿のまわりの生き物を数えてみる
- 駐車場や畑の上に、太陽光パネルを置けないか調べる
- 客室のペットボトルを、詰め替えのボトルに替えてみる
事業・予約への接続
シックスセンシズ・ニンヴァンベイは、サルの森やサンゴの海を守る取り組みを、宿の体験として伝えている。客は、珍しいサルを見に山を歩き、その森を守る宿だと知って、宿を選ぶ。
Sources / 参考情報
- Six Senses(英文) - ニンヴァンベイの持続可能性
裏付け: ベトナム初のリゾートの中の太陽光発電所「ニンヴァン・グリーンズ」、電気の26〜28%ほど、パネルの下の畑、2025年に73万9,782キロワット時、3つの畑で1万3,849キロの有機の果物と野菜、4,200キロの堆肥、15万6,288本のプラスチックのボトルをガラスのボトルに、クロアシドゥクラングールは近絶滅種、ヘオ山の一帯で2019年の109頭から2025年に211頭、457人の参加、2022年からの調査で150種と10種の珍しい植物、2022年に「シックスセンシズ・ターメリック」、2017年の嵐のあと研究機関とサンゴの再生、2025年に80の枠の手入れ・12の枠・200のかけら、2025年4月18日に自然の産卵を初めて記録、2025年に150人を超える宿の人が1万4,700本のマングローブを植える、蒸留で13,900ミリリットルの精油、山あいと少数民族の村に太陽の明かりで2024〜2025年に1,330人超、2025年に小学校に浄水装置で200人の生徒と先生・20リットルのボトルが不要に、232人の参加で1,961キロのごみ、1,000人超の生徒・138人の大学生・400冊の本 - Six Senses(英文) - ニンヴァンベイ(宿の資料、PDF)
裏付け: ニャチャン、カムラン国際空港から車で1時間と船で20分、金色の砂浜と山、専用のプールつきの62棟のヴィラ(浜辺・水の上・岩の間・山の斜面)、800枚の太陽光パネルと2024年に432枚を追加、グリーンヴィエトとサルの保護、基金は売上の0.5%と水の売上とサルのぬいぐるみの売上のすべて - Six Senses(英文) - ニンヴァンベイの立地
裏付け: 浜辺・水の上・岩の間のヴィラ、2つの有機の畑と太陽光の下の畑、ヘオ山への山道でサルを見られる