使い終えた油を、ろうそくに:カリブ海のシックスセンシズ・ラサジェスが、売上の0.5%で子どもに本を届ける方法
カリブ海の南東に浮かぶ島国、グレナダ。香辛料の産地として知られ、「スパイスの島」と呼ばれる。その南東の海岸、緑の丘に囲まれた場所に、リゾート「シックスセンシズ・ラサジェス」がある。宿の資料によると、宿は、浅くて温かい海のラサジェス湾と、大きな波が寄せる外海の浜、そして広い潟の間にある。宿の公式サイトによると、島の山の熱帯雨林には、国の鳥グレナダバトがすむ国立公園もある。
宿は、カリブ海の村を思わせるつくりだ。宿の資料によると、建物は地域の昔ながらの建築に学び、土地の起伏に沿って置かれた。庭の小道には、地元の植物と材料を使った。部屋は、専用のプールがある56のスイートと、15棟のヴィラ。自然の材料や、再生できる材料、使い直した材料でつくられている。
太陽でお湯をわかし、水は宿でつめる
宿の公式サイトによると、カリブ海の太陽を生かして、すべてのヴィラと客室に、お湯をわかすための太陽のパネルをつけた。その数は71枚。電気をつくるのではなく、太陽の熱で直接お湯をつくり、炭素の少ない方法でお湯をまかなう。
飲み水は、宿の中でびんにつめている。客室に置く水を自分たちでつめれば、プラスチックのボトルを買う必要がなくなる。
庭は、自然の循環に学ぶ「パーマカルチャー」の考え方でつくった。生ごみを堆肥にして土に返し、その土で、厨房で使う食べ物を育てる。宿の敷地には、240種の植物と木が育つ。宿の資料によると、庭の野菜は「発酵の部屋」で漬けものにもする。できるだけ宿で育て、地元から仕入れることで、運ぶための炭素も減らす。
潟に、海の生き物を呼び戻す
宿の資料によると、宿は、海辺の自然をよみがえらせるための「海辺の庭」づくりも進めている。まわりの土地に、3,000本の木と低い木を植え、潟のほとりには新しくマングローブを植えている。やがて、鳥や魚など多くの生き物のすみかになる。潟は深く掘り直され、いまは潮の満ち引きに合わせて、海の水が自然に出入りする。小さな海の生き物が、潟の安全な水の中に入ってこられるようになった。
厨房の油が、ろうそくになる
宿の中心には、客が環境について学ぶ場所「アースラボ」がある。公式サイトによると、グレナダの香りやハーブ、香辛料に満ちたこの場所で、客は自然の材料で品物をつくる体験をしたり、ものを使う量を減らす方法を学んだりできる。
人気の体験の一つが、ろうそくづくりだ。宿のレストランで使い終えた油を集め、手づくりのろうそくに変える。捨てるはずだった油が、客が持ち帰れる品物になる。宿の資料によると、薬草や植物の力を学びながら、自分だけのスパの品をつくる講座もある。子どもには、自然やまわりの人とのつながりを取り戻す、基本に返った遊びを用意している。
島の暮らしに触れる体験もある。宿の資料によると、客は地元の漁師の船に乗り、漁の技を間近で見ながら、海の資源を守る考え方に沿った釣りを楽しめる。釣った魚は、宿の料理人が夕食や翌日の昼食に料理する。カカオを育てる農家と一緒に、島の食べ物や歴史、音楽を学ぶ旅もある。
たとえば、夕方のアースラボ。家族連れの客が、型に流した油が固まるのを、待ちきれない様子でのぞきこんでいる。
売上の0.5%で、子どもに本を
公式サイトによると、宿は、地元の人を雇い、地元から買う。宿で働く人の44%は、宿のある地元のセントデイビッド地区の出身だ。
宿は、売上の決まった割合、0.5%を、地域の再生のための基金に回している。基金には、客の寄付や、宿のマスコットのアオウミガメ「カリボ」のぬいぐるみの売上も加わる。基金の最初の取り組みは、島の子どもの読み書きを支えることだった。
公式サイトによると、基金は、カリブ海の東部で子どもの読み書きの力を高める活動を続ける団体「ハンズ・アクロス・ザ・シー」の取り組み「アーリー・ページズ」と組み、2024年と2025年に、地元の地区の4つの学校で、その活動を広げる。新しい本を届け、幼い子どもの読み書きを教える先生を支え、本を家に貸し出して、家族みんなで読めるようにする。本は、子どもの文化に合ったものを選んでいる。
日本の宿に置き換えると
ラサジェスの工夫は、厨房のごみを客の体験に変え、売上の一部を地域の子どもに回す流れをつくったことにある。日本の宿でも、使い終えた天ぷら油を回収する地域の業者に渡したり、ろうそくや石けんをつくる体験に使ったりできる。屋根に太陽の熱の温水器をつければ、お湯をわかす燃料を減らせる。宿泊1泊ごとに決まった額を積み立て、地域の図書館や学校に本を贈ることもできる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%の宿を考える。年に5,110室泊。1室1泊のお湯をわかす燃料代を150円とし、屋根の太陽の熱の温水器でその3割をまかなえたとすると、1室1泊45円、年に22万9,950円の節約になる。
持ち帰れる知識
- 太陽の熱は、電気にせず、直接お湯をわかすのに使える
- 厨房のごみも、客の体験の材料になる
- 売上の決まった割合を回すと、地域への支えが続く
- 基金の最初の使い道を一つに絞ると、成果が伝わりやすい
宿で考えられること
- 使い終えた油の行き先を調べ、体験に使えないか考える
- 屋根に、太陽の熱の温水器をつけられないか調べる
- 地域の学校や図書館に、本を贈る仕組みを考える
事業・予約への接続
シックスセンシズ・ラサジェスは、家族で楽しめる環境の体験と、地域の子どもを支える仕組みを、宿の魅力として伝えている。客は、子どもと一緒にろうそくをつくり、泊まることが島の子どもの本につながると知って、宿を選ぶ。
Sources / 参考情報
- Six Senses(英文) - ラサジェスの持続可能性
裏付け: すべてのヴィラと客室にお湯のための太陽のパネル、71枚、飲み水を宿でびんにつめる、パーマカルチャーの庭と堆肥と厨房の食べ物、240種の植物と木、アースラボ(自然の材料の品物づくり・ものを減らす学び)、レストランの使い終えた油からろうそく、地元の雇用と仕入れ、44%がセントデイビッド地区の出身、売上の0.5%と客の寄付とアオウミガメ「カリボ」のぬいぐるみの売上を基金に、最初の取り組みは子どもの読み書き、2024年と2025年に地元の地区の4つの学校で本・先生の支援・家への貸し出し・文化に合った本、ハンズ・アクロス・ザ・シーの「アーリー・ページズ」 - Six Senses(英文) - ラサジェス(宿の資料、PDF)
裏付け: 南東の海岸の緑の丘、ラサジェス湾と外海の浜と潟の間、カリブ海の村を思わせるつくり、地域の昔ながらの建築、土地の起伏に沿う、地元の植物と材料の小道、「スパイスの島」、56のスイートと15棟のヴィラ、自然・再生できる・使い直した材料、発酵の部屋、宿で育てて地元から仕入れ炭素を減らす、3,000本の木と低い木と潟のほとりのマングローブを植える海辺の庭、潟を深く掘り直し潮の満ち引きで海の水が出入り、小さな海の生き物、薬草の講座、子どもの基本に返った遊び、地元の漁師の船での海の資源を守る釣りと宿の料理人の調理、カカオ農家と食べ物・歴史・音楽を学ぶ旅 - Six Senses(英文) - ラサジェスの立地
裏付け: 南東の海岸、潟のまわり、浅く温かいラサジェス湾と大きな波のランスペールの浜、グランエタン国立公園の熱帯雨林と国の鳥グレナダバト