GOAL 7 · TARGET 7.2 エネルギー・脱炭素 4分 / 2143文字 木くずの熱と水の力で暖める #113

木くずで、宿を暖める:スイスのシックスセンシズ・クラン・モンタナが、山の再生エネルギーで冬を越す方法

スイス南西部、アルプスの山々に囲まれたヴァレー州。スキーと散策の町クラン・モンタナに、「シックスセンシズ・クラン・モンタナ」がある。

宿の資料によると、宿はクランの主要なゴンドラのすぐ上にあり、スキーのコースに面している。部屋は、客室とスイートが77室と、4つの寝室がある独立した山小屋が1棟だ。外壁には石英質の岩「珪岩」を張り、地元のカラマツとオークの木を使い、屋根は粘板岩でふいた。床や造り付けの家具、布には、できる限り再生材や再生できる素材を使った。エネルギーと水を節約することも、設計の大切な柱だ。飲み水は、ろ過したアルプスの水を宿の中で瓶に詰めて出す。料理人は、責任ある仕入れと季節を大切にする地元の生産者と組み、地元の肉や魚、季節の野菜を、皆で取り分ける形で出している。

暖房は、木くずの熱で

寒さの厳しい山の宿では、暖房にたくさんのエネルギーを使う。木質ペレットは、製材などで出るおがくずを固めた小さな粒の燃料だ。木は育つ間に二酸化炭素を吸っているため、森を守りながら使えば、石油やガスに比べて炭素を増やしにくい。宿の公式サイトによると、シックスセンシズ・クラン・モンタナでは、回収した木くずを燃料に暖房を動かし、暖房は100%、炭素の少ない木質ペレットでまかなう。厨房とスパで出る余分な熱も、捨てずに使い直す。

電気は、スイスの再生可能な水力発電を使い、それを太陽光パネルが支える。プールの水は、紫外線、活性炭、塩の電気分解できれいにし、薬品を使う量を減らしている。宿は、持続可能な観光の国際的な基準「GSTC」の認証をグループとして受け、スイスの観光の持続可能性の認証「スイステナブル」で最も高いレベル3「リーディング」を得ている。

収入の一部を、山の自然と暮らしへ

宿の公式サイトによると、宿は「再生インパクト基金」に、宿の収入の0.5%と、ぬいぐるみのマスコットの売上のすべてを入れ、地域の環境と社会の活動を支える。

その一つが、果樹の種を守る活動だ。ヴァレー州は、日差しと水と肥えた土に恵まれた果物の産地だが、昔ながらの品種の多くは失われてきた。宿は地元の果樹の専門家ニコラ・ロレタンと組み、2023年から2025年にかけて、93の昔の品種を見つけて遺伝子を調べた。そのうち54品種は、それまで記録のないものだった。これらは国の研究機関のデータベースに加えられ、37品種が、スイスの国の種子銀行に戻された。次は、苗を増やして受け継いでいく段階だ。

花畑を守る活動もある。スキーや夏の山のスポーツは、まわりの草原を傷めることがある。宿は虫のすみか「昆虫ホテル」を2つ、ミツバチの巣箱を5つ置き、地元の養蜂家が世話をしている。センサーや花粉を集める仕掛けで、ハチの動きと受粉の様子を調べる。夏には、ヴァレー州の象徴でもある、鼻の黒い羊「ヴァレー・ブラックノーズ」が敷地の草を食べ、機械の草刈りを減らしている。

山を歩き、ごみを拾う

宿の働く人たちは、まわりの森でごみを拾いながら山を歩く活動を続けている。宿の公式サイトによると、たばこの吸い殻から建築の資材まで、2023年から211キロを超えるごみを取り除いた。標高2,927メートルの「プレーヌ・モルト氷河」にも、凍ったごみを探しに2度登った。

山の暮らしを守る活動もある。山にオオカミやオオヤマネコが戻ったことは、自然が健やかなしるしだが、羊飼いの暮らしをおびやかす。宿は、羊の群れを夜に見守るボランティアを育てる団体「オパル」を支えている。宿が支えるこの活動の見守りは、2万6,186時間にのぼる。2023年からは、1,000人を超えるボランティアの育成を支えた。その間、大型の肉食の動物は100回以上目撃されたが、命を奪う襲撃は一度もなかった。

学びの場もある。宿の「アース・ラボ」では、ろうそくづくりや、種を土で包む「シードボム」づくりなど、ごみを出さない講座に客が加われる。スイスのホテルの学校が近いことを生かし、2023年から1,000人を超える学生が、持続可能性の話し合いや授業に加わった。2025年には、280人の学生がアース・ラボでの話し合いに加わった。使い終えた制服や布105キロは、近くの町シエールの服飾の学校に贈った。

たとえば、冬の夕方。スキーから戻った客が、暖かいロビーで、この温もりが森の木くずから生まれていると聞き、窓の外の森を眺めている。

日本の宿に置き換えると

シックスセンシズ・クラン・モンタナの工夫は、山の資源である木と水で宿を暖め、動かし、その恵みを地域の自然と暮らしに返していることにある。日本の雪国の宿でも、地元の製材所の木くずやペレットで暖房をまかなったり、厨房や浴場の排熱をお湯づくりに回したりできる。地元の果樹や在来の作物を守る人と組めば、宿の料理や体験にもつながる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%の宿を考える。年に5,110室泊。1室1泊のお湯をわかす燃料代を250円とし、厨房や浴場の排熱を使ってその1割を減らせたとすると、1室1泊25円、年に12万7,750円の節約になる。排熱を回収する設備の費用は別にかかる。

持ち帰れる知識

  • 暖房の燃料は、地域の木の資源に切り替えられる
  • 捨てていた排熱も、宿の中で使い直せる
  • 収入の一定の割合を基金にすると、地域の活動を続けやすい
  • 昔の作物を守る活動は、土地の個性を伝える

宿で考えられること

  • 暖房やお湯の燃料を、地元の木の資源にできないか調べる
  • 厨房や浴場の排熱を、どこで使えるか探す
  • 地元の在来の作物を守る人と、料理や体験をつくる

事業・予約への接続

シックスセンシズ・クラン・モンタナは、山の資源で動く宿と、地域の自然を守る活動を、宿の魅力として伝えている。客は、木の温もりの中で過ごし、山の暮らしを知る講座に加わることを楽しみに、宿を選ぶ。

Sources / 参考情報

  • Six Senses(英文) - シックスセンシズ・クラン・モンタナの持続可能性
    裏付け: 回収した木くずで暖房、厨房とスパの余分な熱を使い直す、スイスの水力発電と太陽光パネル、プールの紫外線・活性炭・塩の電気分解、収入の0.5%とマスコットの売上の基金、アース・ラボのろうそくとシードボムの講座、GSTCのグループ認証、スイステナブルのレベル3、暖房は100%木質ペレット、2025年の280人、制服と布105キロをシエールの服飾の学校へ、37品種を国の種子銀行へ、オパルの見守り2万6,186時間、ニコラ・ロレタンと2023~2025年に93品種を調べ54品種が記録のないもので国の研究機関のデータベースへ、昆虫ホテル2つと巣箱5つとセンサー・花粉の仕掛け、ヴァレー・ブラックノーズ、2023年から211キロを超えるごみ、プレーヌ・モルト氷河2,927メートルに2度、2023年から1,000人を超える学生、1,000人を超えるボランティアの育成と100回以上の目撃と命を奪う襲撃なし
  • Six Senses(英文) - シックスセンシズ・クラン・モンタナの資料
    裏付け: クランの主要なゴンドラのすぐ上でコースに面する、客室とスイート77室と4寝室の山小屋1棟、珪岩の外壁・地元のカラマツとオーク・粘板岩の屋根、床・造り付けの家具・布の再生材や再生できる素材、エネルギーと水の節約

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