GOAL 14 · TARGET 14.2 海洋・沿岸保全 4分 / 2100文字 減っている海の幸を、育てる現場で学ぶ #116

減ってしまったアワビを、育てる現場で味わう:オマーンのアリラ・ヒヌ・ベイが、海の恵みの今を客に伝える方法

アラビア半島の南東にあるオマーン。その南のドファール地方に、リゾート「アリラ・ヒヌ・ベイ」がある。ハイアットの発表によると、2021年6月に開業した。サムハーン山とアラビア海のあいだにある、人の手があまり入っていない浜に建つ。部屋は112で、そのうち16はプール付きのヴィラだ。いちばん近いサラーラ国際空港からは、87キロ離れている。

公式サイトによると、敷地は45ヘクタールあり、南ドファールの町ミルバトの海岸や史跡を訪ねる入り口にあたる。この海の恵みの一つに、アワビがある。

たとえば、夕方のレストラン。皿に、薄く切ったアワビが並んでいる。客は、このアワビがどこで、どのように育ったのかを、料理人から聞いている。

オマーンだけのアワビが、減っている

オマーンの新聞マスカット・デイリーによると、オマーンのアワビは南の海岸だけにすむ種類で、中東でただ一つのアワビだ。潜って獲る漁師の暮らしを支え、海外にも売られる大切な海の幸である。

しかし、その数は減り続けている。2011年には、30日の漁で149トンが獲れた。その後は、漁を止める年が続いた。2020年から2023年までは、獲ることも売ることも禁じられた。2024年11月に10日間だけ漁が開かれ、76トンが獲れた。この年の漁の許可は、ミルバトが全体の47%を占めた。ミルバトは、アワビの漁と深く結びついた町だ。

2025年の漁の季節は、再び禁止になった。オマーンの農業・漁業・水資源省は、決まりを守らない獲り方や、許された期間の外での違法な漁が、アワビを追い詰めていると説明している。省は、獲ってよい大きさや季節、許可の決まりを定めて、アワビを守ろうとしている。2025年11月の同じ紙の記事によると、いまの1年の漁獲は50から55トンほどで、2011年の149トンから大きく減った。

海の農場を訪ね、育てたアワビを味わう

アリラ・ヒヌ・ベイは、このアワビを客の体験の題材にしている。公式サイトによると、客は料理人と一緒に、中東でただ一つアワビを育てている会社「オマーン・アクアカルチャー・カンパニー」の養殖場を訪ねる。宿は、ここを「オマーンでただ一つのアワビの農場」と紹介している。

養殖場では、育てる人の案内で、海の水からアワビが育ち、収穫されるまでの流れを見る。客は水槽から自分でアワビを選び、宿に戻ると、料理人が目の前で刺身やグラタンに仕上げる。持ち帰れるのは、磨いたアワビの殻だ。

宿はこの体験を、自然のつり合いを知るための物語と位置づけている。公式サイトは、持続可能な方法で育てたりとったりした魚介を選ぶことが、海の生き物を守ることにつながると説明している。野生のアワビが減っているいま、客は、海の幸がどこから来るのかを、育てる現場で学ぶことができる。

地形に合わせて建て、食べ物を近くから

公式サイトによると、アリラ・ヒヌ・ベイは、設計と建設の両方で自然の地形に合わせ、まわりの生き物への影響を小さくした。炭素の排出を減らすために、地元の自然の材料を使っている。ハイアットの発表でも、部屋の内装に地元の材料を取り入れたと紹介されている。オマーンの伝統的な建物に学んだ造りで、部屋は土地の起伏に沿って並び、広さは60から175平方メートルある。

食べ物も、近くから集める。宿は敷地の果樹園や菜園で作物を育て、レストランは食材の多くを地元の業者から仕入れる。海辺のレストラン「シーソルト」は、近くの海でとれたその日の魚を使う。さらに宿は、食べ物のごみをなくす「ゼロ・フード・ウェイスト」の取り組みを始めている。

湾の外にも、守りたい自然がある

宿のまわりには、守りたい自然が多い。公式サイトによると、近くのワディ・ダルバットの谷には滝があり、ホール・ローリはこの地域で最大の自然保護区だ。ハイアットの発表は、近くの海に、世界でも見事で、よく残ったサンゴ礁があると紹介している。歴史を知る場所として、ミルバトの城や古い商人の家、スムフラム遺跡公園も挙げている。海と山と歴史が、宿のまわりに重なっている。

宿の中にも、土地のものを生かす工夫がある。スパ「スパ・アリラ」は自然の材料だけを使い、ドファールで大切にされてきた乳香「ホージャリ」を使った施術もある。乳香は、この地方の木からとれる香りの樹脂だ。

日本の宿に置き換えると

アリラ・ヒヌ・ベイの工夫は、減っている海の幸を、ただ皿に出すのではなく、その背景ごと客に伝えたことにある。日本の海辺の宿でも、漁の期間や大きさに決まりがある魚介を出すとき、その理由を献立や会話で伝えられる。地元の漁協や養殖の現場と組んで、見学と食事を合わせた体験をつくることもできる。海の幸の今を知った客は、その一皿を、土地の海を守る話として持ち帰る。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%の宿を考える。年に5,110室泊で、1室泊あたり0.3キロの食べ残しが出ているとすると、年に1,533キロになる。献立の量の見直しで2割減らせれば、年に約307キロの食べ残しが減る。

持ち帰れる知識

  • 減っている海の幸は、その背景ごと伝えると、客の学びになる
  • 育てる現場を訪ねる体験は、海の資源の今を知る入り口になる
  • 地形に合わせて建てることは、まわりの生き物への影響を小さくする
  • 食材を近くから集めることは、土地の海と畑を支える

宿で考えられること

  • 漁の決まりがある魚介について、献立に短い説明を添えてみる
  • 地元の漁協や養殖の現場と、見学できる体験を話し合ってみる
  • 食べ残しの量を一定の期間はかり、献立の量を見直してみる

事業・予約への接続

アリラ・ヒヌ・ベイは、アワビの養殖場を訪ねる体験や、地元の食材を使う料理を、宿の魅力として伝えている。客は、土地の海の今を知ることができる宿として、ここを選ぶ。

Sources / 参考情報

  • Hyatt(英文) - アリラ・ヒヌ・ベイ公式サイト
    裏付け: 45ヘクタールの敷地、南ドファールのミルバトへの入り口、96室と16のプール付きのヴィラ、広さ60から175平方メートル、土地の起伏に沿った配置、設計と建設で自然の地形に合わせ生き物への影響を小さくする、炭素を減らすため地元の自然の材料、敷地の果樹園と菜園、ゼロ・フード・ウェイストの取り組み、オマーンの伝統的な建物に学んだ造り、ワディ・ダルバットの滝、地域で最大の自然保護区ホール・ローリ、シーソルトはその日の地元の魚、スパ・アリラは自然の材料、乳香ホージャリの施術、オマーンでただ一つのアワビの農場
  • Hyatt(英文) - アリラ・ヒヌ・ベイの体験(アリラ・モーメンツ)
    裏付け: 中東でただ一つアワビを育てるオマーン・アクアカルチャー・カンパニーの訪問、育てる人の案内、水槽から自分で選ぶ、刺身とグラタン、磨いた殻を持ち帰る、自然のつり合いを知る物語、持続可能な魚介を選ぶことが海の生き物を守るという説明
  • Hyatt(英文) - アリラ・ヒヌ・ベイのホテル情報
    裏付け: サラーラ国際空港から87キロ
  • Hyatt Newsroom(英文) - アリラ・ヒヌ・ベイ開業の発表(2021年6月20日)
    裏付け: 2021年6月の開業、112室で16のヴィラを含む、ドファール地方、サムハーン山とアラビア海のあいだ、内装に地元の材料、食材の多くを地元の業者から、よく残ったサンゴ礁、スパは自然の材料だけ、ホール・ローリ、ミルバトの城と古い商人の家とスムフラム遺跡公園
  • Muscat Daily(英文) - ドファールで10日間に76トンのアワビ(2025年2月12日)
    裏付け: オマーンのアワビは南の海岸だけにすむ中東でただ一つの種類、暮らしと輸出を支える、2011年は30日で149トン、2020年から2023年は漁と取引を禁止、2024年11月に10日間で76トン、2024年の許可はミルバトが47%、大きさ・季節・許可の決まり
  • Muscat Daily(英文) - オマーンがアワビ漁を禁止(2025年11月1日)
    裏付け: 2025年の漁の季節は禁止、決まりを守らない獲り方と期間外の違法な漁が数を減らしているという省の説明、いまの1年の漁獲は50から55トンほど

関連する記事