GOAL 15 · TARGET 15.2 自然・生物多様性・保全 3分 / 2022文字 木を切らずに建て、森と村を守る #121

木を1本も切らずに、森の中にテントを張る:バリのカペラ・ウブドが、熱帯の森と村を5年かけて守ってきた方法

インドネシアのバリ島。芸術の村として知られるウブドの近くに、ケリキという村がある。宿の発表によると、ケリキは昔ながらのバリの芸術家の村だ。ここを流れる聖なるワス川の谷に、テントの宿「カペラ・ウブド」がある。熱帯の森と棚田のあいだ、9エーカー(約3.6ヘクタール)の土地に、1寝室のテント22張と、2寝室の「ロッジ」1棟が建つ。どのテントにも専用のプールがある。

設計は、建築家ビル・ベンスリーが手がけた。1800年代にやってきたヨーロッパの開拓者たちの、冒険の心をたたえる宿として考えられた。

たとえば、朝のテラス。テントの布ごしに、鳥の声と川の音が聞こえる。目の前の木々は、宿が建つ前からここにあった木だ。

木を切らず、土地の形も変えない

宿の発表によると、ベンスリーの設計は、はじめから環境を考えたものだった。まわりの森には手をつけず、木を1本も切らず、土地の形も変えなかった。テントは、段々になった土地の、森と棚田と川のあいだに置かれている。

部屋や共用の場所は、修理した古い家具や美術品で飾られている。昔、バリの不思議を見つけた商人や探検家たちの物語を伝えるためだ。新しく作るのではなく、古いものを直して使うことは、ごみを減らすことにもつながる。

5年かけて、外の基準で確かめる

宿は、環境をこの先も健やかで清潔に保つために、環境の管理の仕組みを取り入れた。この仕組みは、持続可能な観光の認証を行う団体「アースチェック」の会社向けの基準を満たしている。アースチェックは、1987年から、旅行や観光の持続可能性を科学的な物差しで評価し、助言してきた団体だ。

2024年12月、カペラ・ウブドはアースチェックの「ゴールド」に認められた。宿の発表は、この認証を、ケリキ村の隠れた楽園を守る役目を担ってきた5年の歩みの証だと説明している。公式サイトでは、2025年もゴールドの認証を受けたことを紹介している。

水を宿で詰め、ごみを土に戻す

宿の取り組みの一つが、飲み水だ。宿の発表によると、宿にはバイオシステム社の瓶詰めの設備があり、とても細かい膜でこした飲み水を、ガラスの瓶に詰める。この水は、食品の安全を守るための国際的な管理の考え方「HACCP」の水の基準を満たしている。水を外から運ぶときに出る炭素を減らし、使い捨てのペットボトルもいらなくなる。

敷地では、土地にもとからある有機の野菜や香辛料、ハーブを手で収穫する。料理人だけでなく、癒やしの施術をする人も使い、伝統の施術の中で植物の力を生かしている。庭の草や食べ物のくずは堆肥にして、庭の土に戻す。

客も、この庭を体験できる。たとえば、インドネシアに伝わる薬草の飲み物「ジャムウ」をつくる体験では、客が宿の有機の庭で材料を自分で摘み、歴史や材料の効き目を学びながら仕上げる。ジャムウは、1300年ほど前のマタラム王国の時代に始まったと言われている。ワス川の寺で、水で身を清めるバリの儀式を体験するプログラムもある。土地の自然と文化を、客が体で知るための工夫だ。

村と、ごみを減らす

宿の取り組みは、村にも広がっている。宿の発表によると、宿は村の小学生に英語の授業を開き、その代わりに、捨てられたペットボトルを持ってきてもらう。子どもたちの学びになり、村の人がリサイクルや環境について考えるきっかけにもなる。ケリキ村には、村のリサイクルの拠点と地域で進める、プラスチックのごみをなくす取り組みもあり、宿はこれを支えている。

使い終わった石けんも、ごみにしない。宿は、地元の団体ロール財団の「ゼロ・ウェイスト・ソープ」の取り組みを支え、毎月、使い残しの石けんを集めて、ヌサドゥアの作り直しの工房に送る。工房では、地元のサワンガン村で研修を受けた女性たちが、石けんを新しく作り直す。作り直した石けんは、孤児院や人道支援の団体、困っている家族に届けられる。

料理の部門は、近くの学校「グリーン・スクール」の「バイオバス」も支えている。使い終わった食用油からつくるバイオディーゼル100%で走るバスで、生徒や職員を運びながら、ごみを燃料に変える学びの教室にもなっている。

日本の宿に置き換えると

カペラ・ウブドの工夫は、建てるときに森を残し、開業してからも、外の基準で何年も確かめ続けてきたことにある。日本の宿でも、庭木を切らずに生かす改装を考えたり、地域の認証や環境の管理の仕組みに参加したりできる。使い残しの石けんや食用油のように、宿から出るものを、地域の団体と組んで次の使い道につなげることもできる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%の宿を考える。年に5,110室泊で、1室泊あたり10グラムの石けんが使い残されているとすると、年に51.1キロになる。これを作り直しに回せれば、年に約51キロの石けんが、ごみではなく、誰かの手に届く石けんになる。

持ち帰れる知識

  • 建てるときに木と土地の形を残すと、宿そのものが森の一部になる
  • 外の基準で毎年確かめることが、取り組みを続ける支えになる
  • 宿から出るものは、地域の団体と組めば次の使い道が見つかる
  • 村の子どもとの交換の仕組みは、学びとリサイクルを同時に進める

宿で考えられること

  • 改装のときに、残せる庭木や地形がないか、先に調べてみる
  • 使い残しの石けんや食用油を引き取る団体を探してみる
  • 環境の管理の仕組みや認証について、資料を取り寄せてみる

事業・予約への接続

カペラ・ウブドは、木を切らずに建てたことや、アースチェックのゴールドを、宿の魅力として伝えている。客は、森と村を守る宿だと知って、ここを選ぶ。

Sources / 参考情報

  • Capella Hotels(英文) - カペラ・ウブドがアースチェックのゴールドに(2024年12月12日の発表、PDF).pdf)
    裏付け: ケリキ村のワス川の谷、9エーカーの森と棚田、ビル・ベンスリーの設計、森に手をつけず木を1本も切らず土地の形を変えない、修理した古い家具と美術品、アースチェックの会社向けの基準を満たす環境の管理の仕組み、アースチェックは1987年から、5年の歩み、バイオシステム社の瓶詰めの設備・細かい膜でこす・ガラス瓶・HACCPの水の基準・運ぶときの炭素と使い捨てのボトルを減らす、土地の有機の野菜・香辛料・ハーブを手で収穫し料理人と施術者が使う、庭の草と食べ物のくずを堆肥に、ペットボトルと引き換えの英語の授業、ロール財団のゼロ・ウェイスト・ソープ(毎月・ヌサドゥアの工房・サワンガン村の女性・孤児院など)、グリーン・スクールのバイオバス(使った食用油のバイオディーゼル100%)、庭で材料を摘むジャムウづくり(マタラム王国の時代、約1300年前)、ワス川の寺の水の儀式、ケリキ村のリサイクルの拠点との取り組み、1800年代のヨーロッパの開拓者、昔ながらのバリの芸術家の村ケリキ、テント23張
  • Capella Hotels(英文) - カペラ・ウブド公式サイト
    裏付け: 1寝室のテント22張と2寝室のロッジ1棟、どれも専用のプール、1800年代のヨーロッパの開拓者に学んだベンスリーの設計、アースチェックのゴールド(2025年)

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