GOAL 12 · TARGET 12.3 食品・フードロス・堆肥 3分 / 2006文字 車で1時間の食材を、残さず使う #123

食材は車で1時間以内から、何も残さない台所で:バリのブアハン・バンヤンツリー・エスケープが、食べ物を使い切る方法

インドネシアのバリ島、ウブドの北。観光客の少ない、手つかずの土地に「ブアハン・バンヤンツリー・エスケープ」がある。2022年6月13日、ホテルグループのバンヤンツリーが開業を発表した、大人だけが泊まれる宿だ。

宿は、田んぼと森に囲まれた静かな場所にある。そばにはアユン川と滝が流れ、7つの山の峰を見渡せる。泊まる建物は、バリの言葉で「バレ」と呼ばれる16棟の東屋だ。

この宿の特徴は、「壁も扉もない」ことにある。公式サイトによると、バリの村の集会所「バレ・バンジャール」に学んだ開かれた建物で、壁も扉もエアコンもない。客と自然を隔てるのは、薄い布1枚だけだ。そして、この宿のもう一つの柱が、食べ物を残さない台所である。

食材は、車で1時間の範囲から

宿の中心には、開かれた台所と居間がある。2022年の開業の発表によると、客はここで、宿が食べ物と飲み物の基本をどう考え直したかを学ぶ。ごみを出さない「畑から食卓へ」の考え方、地元から仕入れる考え方、そして昔から伝わる調理の技だ。

献立の7割は植物を中心にした料理で、食材は宿から車で1時間以内の地元から仕入れる。この考え方は、地元のコンサルタント集団「エージェンシーX」と一緒につくった。エージェンシーXは、評判のレストラン「ロカボア」などを持つ集団だ。

宿の酒場「ボタニスト・バー」は、地元で育てた自然の材料や植物を飲み物に生かしている。

何も残さない台所

公式サイトによると、宿の「ゼロ・ウェイスト・キッチン(ごみを出さない台所)」は、植物を中心にした考え方に沿っている。どの食材も意図をもって使い、何も残さない。仕入れでは「仕入れ先の行動規範」を設け、公正さや、どこから来たかをたどれること、環境への配慮を大事にしている。

たとえば、厨房で野菜を切るとき。皮や芯を捨てる前に、別の料理や飲み物に使えないかを考える。台所の名前が、毎日の作業の物差しになる。

畑と家畜で、ごみを資源に

宿は、まわりの農家とも組んでいる。地元の団体「ドゥクー・アスリ」を通じて、地元の農家と持続可能な農業を育てている。野草を摘む体験や、畑での昼食の催し、放し飼いの鶏の卵の仕入れなどだ。宿の卵は、すべて鶏をかごに入れずに育てた卵を使う。

「ンガダス・プロジェクト」は、まわりを回る農業のしくみだ。宿が地元の農家に家畜を渡し、利益を分け合う。このしくみで、生ごみなどの有機のごみが資源に変わり、土地と地域の両方を豊かにする。

ホタルが戻る夜

宿の取り組みは、食べ物だけではない。地元の団体「テガル・ドゥクー」と、自然を守る活動家ワヤン・ワルディカさんと組んで、「光を取り戻そう」という活動を進めている。化学薬品を使わない有機の農業を広め、生き物の多様さを取り戻し、かつて夜を照らしていたホタルを呼び戻す活動だ。

宿の中でも、明かりを暗くしたり、時間で消したりして、ホタルや夜の生き物を守っている。害虫の対策には、化学薬品を使わず、水を使う方法をとる。客の使う場所では、使い捨てのプラスチックを使わない。

客は、夕暮れの「サンディカラの散歩」で、ホタルが舞う時間を歩ける。

土地の知恵を、客が学ぶ

宿の考え方の土台には、バリに伝わる「トリ・ヒタ・カラナ」がある。人と自然と神々の調和を大切にする考え方だ。

公式サイトによると、客は地元の野草摘みの名人と歩き、食べられる植物や、昔から伝わる薬草の知恵を教わる。「イブ・ワークショップ」では、ココナッツ油やヤシの砂糖づくりを体験できる。地元の植物で、伝統の薬草の飲み物「ジャムウ」や「ロロ」をつくる体験もある。農家や癒やしの人、職人こそが、この宿の本当のもてなし手だと、宿は説明している。

建物と人も、土地のものを

建物にも、土地のものが生かされている。宿の8割を超える部分は、再生した木材で建てられた。手彫りの木のベッドや鏡、地元の陶芸家の洗面台、植物で染めた手織りの布など、地元の職人の手仕事が使われている。

開業の発表によると、宿を建てる前には、地元の建築家ゲデ・クレスナさんのチームが、宿から1時間の範囲で、社会や建築、文化を4か月かけて調べた。働く人は100%インドネシアの人で、8割を超える人がバリと近くの村の出身だ。

日本の宿に置き換えると

ブアハンの工夫は、「車で1時間」という分かりやすい線を引き、その中の農家と組んで、食材も生ごみも地域の中で回していることにある。日本の宿でも、仕入れの範囲を決めて客に伝えたり、野菜くずを農家の堆肥や家畜のえさに回したりできる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%の宿を考える。年に5,110室泊で、1室泊あたり0.4キロの食材のくずが出るとする。そのうち3割を別の料理やまかないに使えれば、年に613.2キロの食材が、捨てられずに料理になる。

持ち帰れる知識

  • 「車で1時間」のような分かりやすい線は、仕入れの方針を伝えやすくする
  • 台所の名前に目標を入れると、毎日の作業の物差しになる
  • 農家と組めば、生ごみが土や家畜を通じて資源に戻る
  • 明かりを減らす工夫は、夜の生き物を守ることにつながる

宿で考えられること

  • 食材をどこから仕入れているか、距離で地図に書き出してみる
  • 野菜くずを引き取ってくれる農家がないか、地域で探してみる
  • 夜の外の明かりを、暗くしたり時間で消したりできないか考えてみる

事業・予約への接続

ブアハンは、壁も扉もない建物と、ごみを出さない台所を、宿の体験そのものとして伝えている。客は、土地の食べ物と自然を味わうために、この宿を選ぶ。

Sources / 参考情報

  • Banyan Tree(英文) - バンヤンツリーがバリで初めての「バンヤンツリー・エスケープ」を開業(2022年6月13日の発表、PDF)
    裏付け: 2022年6月13日に開業を発表、ウブドの北の手つかずの土地、16棟のバレ、壁も扉もない、大人だけ、開かれた台所と居間、ごみを出さない畑から食卓へ・地元の仕入れ・昔の調理の技、献立の7割は植物中心で車で1時間以内から仕入れる、エージェンシーX(ロカボアなど)、ゲデ・クレスナさんのチームによる4か月の調べ
  • Hotel News Resource(英文) - バンヤンツリーがブアハンを開業(2022年6月30日)
    裏付け: ボタニスト・バーの地元の植物、田んぼと森に囲まれる、アユン川と滝、7つの峰の眺め、薄い布1枚で自然と隔てる
  • Banyan Tree(英文) - ブアハンの持続可能性の取り組み(公式サイト)
    裏付け: バレ・バンジャールに学んだ建物、壁も扉もエアコンもない、8割を超える部分を再生した木材で、手彫りのベッドや鏡・地元の陶芸家の洗面台・植物で染めた布、トリ・ヒタ・カラナ、野草摘みの名人と歩く体験、イブ・ワークショップ(ココナッツ油・ヤシの砂糖)、ジャムウとロロづくり、農家や癒やしの人や職人が本当のもてなし手、サンディカラの散歩、テガル・ドゥクーとワヤン・ワルディカさんの「光を取り戻そう」、ドゥクー・アスリと地元の農家(野草摘み・畑の昼食・放し飼いの卵)、ンガダス・プロジェクト(家畜を渡し利益を分け合い有機のごみを資源に)、ゼロ・ウェイスト・キッチン、仕入れ先の行動規範、明かりを暗く・時間で消す、水を使う害虫対策、卵はすべてかごに入れない鶏、客の場所で使い捨てのプラスチックなし、働く人は100%インドネシア人で8割超がバリと近くの村の出身

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