壊さずに、取り出して次へ渡す:ハワイの1ホテル・ハナレイ・ベイが、古いリゾートの144.6トンをごみにしなかった方法
ハワイ州のカウアイ島。「ガーデン・アイランド(庭の島)」と呼ばれる緑の島の北の海岸に、「1ホテル・ハナレイ・ベイ」がある。2023年3月2日、ホテルブランド「1ホテルズ」が、旗艦となるこのホテルの開業を発表した。客室は252室で、そのうち51室がスイートだ。
このホテルは、新しく建てたものではない。もとからあったリゾートの建物を、建て直しではなく、つくり直してできた。古いホテルを新しく生まれ変わらせるとき、ふつうは中の家具や設備を壊して捨てる。1ホテル・ハナレイ・ベイは、それをしなかった。
壊すのではなく、「解体して取り出す」
開業の発表によると、1ホテルズの創業者バリー・スターンリヒトさんは、家族と何十年もこの地域で休暇を過ごしてきた。初めて訪れたとき、もとのホテルが自然の景色に合っていないと感じたという。
つくり直しでは、もとの建物の多くを取り除き、そこを小川や庭に置き換えた。新しく建てるのではなく、つくり直すことを選んだことで、リゾートを空に向かって開き、ごみを埋め立て地から遠ざけることができた。
公式サイトによると、改装では、地元の非営利団体「リユース・ハワイ」と組んだ。リユース・ハワイは、建物をただ壊すのではなく、使えるものを丁寧に取り出す「解体(ディコンストラクション)」を進める団体だ。この取り組みで、もとからあった家具や器具、設備など、144.6トンを超えるものが救い出され、埋め立て地に行かずにすんだ。
公式サイトは、建て直しをせずにつくり直したことで、144.6トンの資材を埋め立て地から守り、73.8トンの温室効果ガスが大気に出るのを防いだと説明している。
たとえば、改装の現場。古いベッドの枠や照明、洗面台が、一つずつ外され、トラックに積まれていく。行き先は、埋め立て地ではなく、次に使う人のもとだ。
古い材料と、島の材料で仕上げる
新しい内装にも、使い直した材料が生きている。開業の発表によると、使い直したチークの梁、溶岩の石「プカ」の壁、バナナの仲間の植物の繊維「アバカ」で手織りした天井など、地元で手に入れた材料を使った。客室にも、地元の黒い玄武岩や、使い直したチーク、アバカを使った。
公式サイトによると、館内の植物の70%は、島にもとからある種類だ。ハワイだけに生える植物や、昔からこの地にある植物、1,000年以上前にポリネシアの人々が持ち込んだ植物である。こうした植物は、生き物のすみかを取り戻し、文化の意味を伝え、ホテルの環境への負担を減らす。
浜辺の運動場は、島に広がって困りものになっている外来の木「アルビジア」で作った。地元の団体「アルビジア・プロジェクト」と組んだものだ。
雨水を使い、ごみを出さない
公式サイトによると、カウアイ島では雨水が豊かな資源だ。ホテルの7,400ガロン(約2万8,000リットル)の雨水をためるしくみで、庭に自然の水をまく。これにより、庭の水の使用を97%、年に350万ガロン減らしている。室内では、水の量をおさえた設備を使う。
公式サイトは、ホテルがLEEDの認証を受けていることも伝えている。LED照明、断熱の強化、熱を取り戻す空調などで、年間のエネルギーの費用を約20%節約するように設計されている。
食べ物も、島の中で回す。公式サイトによると、ホテルのレストラン「1キッチン」の野菜や肉、魚介は、すべてハワイの島々で育てたもの、ハワイの海でとれたものだ。ごみを出さない運営で、食べ物のむだを防いでいる。
開業の発表は、このホテルが、二酸化炭素の排出を実質ゼロにする認証と、ごみを出さない運営の認証「TRUE」を目指していると伝えている。客室には、繰り返し使えるアルミのボトルとステンレスの水筒を置いている。服をかけるハンガーも、使い終わった紙を再生したものだ。
海と浜辺を、客と一緒に守る
ホテルの取り組みは、敷地の外の海にも向いている。公式サイトによると、ホテルは地元の団体「サーフライダー財団カウアイ支部」の「海にやさしい旅行者」の取り組みに参加している。浜辺に行く客は、受付で浜辺のごみ拾いの道具を借りられる。毎週水曜日の午後には、団体が開く、海から流れ着いた網を拾う清掃にも参加できる。
サンゴ礁と海の生き物を守るため、客には、サンゴにやさしい日焼け止めだけを使うよう呼びかけている。ほかにも、ワイパ財団や、カウアイの野生生物保護区の友の会、海鳥を守る団体「セーブ・アワ・シアウォーターズ」など、島の非営利団体と組んで、催しを通じて活動を支えている。
日本の宿に置き換えると
1ホテル・ハナレイ・ベイの工夫は、改装を「捨てる工事」ではなく、「取り出して渡す工事」として計画したことにある。日本の宿でも、改装の前に家具や設備を一覧にし、地域の団体やリユースの業者、ほかの宿に引き取ってもらう道を探せる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿の改装を考える。1室あたりの家具や設備が200キロあり、その半分を取り出して引き取ってもらえるとする。すると、20室で2,000キロ、つまり2トンが、ごみではなく、次に使われるものになる。
持ち帰れる知識
- 改装は「捨てる工事」ではなく「取り出して渡す工事」にできる
- 取り出したものの重さを量ると、取り組みの成果を伝えられる
- 古い材料と土地の材料で、新しい内装にも物語が生まれる
- 困りものの外来の木も、使い道を見つければ資源になる
宿で考えられること
- 次の改装の前に、家具や設備を一覧にして重さを書き出してみる
- 古い家具を引き取ってくれる地域の団体や業者を探してみる
- 庭の水やりに、雨水をためて使えないか考えてみる
事業・予約への接続
1ホテル・ハナレイ・ベイは、つくり直しで救い出した資材の量を、公式サイトで伝えている。客は、島の自然を守るホテルだと知って、ここを選ぶ。
Sources / 参考情報
- PR Newswire(英文) - 1ホテル・ハナレイ・ベイが開業(2023年3月2日の発表)
裏付け: 2023年3月2日に開業を発表、旗艦、カウアイ島の北の海岸、252室のうちスイート51室、スターンリヒトさんの言葉(家族と何十年も休暇、もとのホテルが景色に合っていない)、もとの建物の多くを取り除き小川や庭に、新しく建てずにつくり直して空に開きごみを遠ざける、リユース・ハワイと組んで約150トンを救い出す、使い直したチークの梁・プカの石の壁・アバカの天井、地元の黒い玄武岩の床、カーボンニュートラルとTRUEの認証を目指す - 1 Hotels(英文) - 1ホテル・ハナレイ・ベイの持続可能性(公式サイト)
裏付け: 建て直しではなくつくり直して144.6トンの資材と73.8トンの温室効果ガス、リユース・ハワイ(解体を進める非営利団体)と144.6トンを超える家具・器具・設備を救い出す、LEEDの認証、LED・断熱・熱を取り戻す空調で年間のエネルギーの費用を約20%節約、植物の70%が島にもとからある種類(固有・在来・1,000年以上前のポリネシアの持ち込み)、アルビジア・プロジェクトと外来の木で浜辺の運動場、7,400ガロンの雨水のしくみで庭の水を97%(年に350万ガロン)減らす、水の量をおさえた設備、1キッチンの食材はすべてハワイ産、ごみを出さない運営、アルミのボトルとステンレスの水筒、再生紙のハンガー、サーフライダー財団カウアイ支部の「海にやさしい旅行者」の取り組み・受付のごみ拾いの道具・水曜日の網の清掃、サンゴにやさしい日焼け止め、ワイパ財団・野生生物保護区の友の会・セーブ・アワ・シアウォーターズなどとの協力