宿に、海洋生物学者が2人いる:フィジーのジャン=ミシェル・クストー・リゾートが、守られた海「タブー」を客と守る方法
フィジーで2番目に大きな島、バヌアレブ島。サブサブ湾に突き出た半島に、「ジャン=ミシェル・クストー・リゾート」がある。17エーカー(約6.9ヘクタール)の敷地に、フィジーの伝統的な形の小屋「ブレ」が並ぶ。
宿の名前は、海洋探検家ジャン=ミシェル・クストーさんにちなむ。公式サイトは、この宿を「フィジーで初めての高級なエコ・リゾート」と紹介している。海の保全と、フィジーの文化、もてなしを大切にする宿だ。
この宿には、ほかの宿にはあまりいない仲間がいる。海洋生物学者だ。
守られた海「タブー」
宿の前の海は、地元で「タブー」と呼ばれる、守られた海だ。公式サイトは、タブーを命にあふれた海の保護区と説明している。客は、色とりどりのサンゴ礁を巡り、マングローブを植えたり、サンゴを再生させたりする活動に参加できる。サンゴ礁の状態を調べる方法を学び、保護区の中で育つ、絶滅のおそれがある生き物にも出会える。
宿に住む海洋生物学者
公式サイトによると、宿には、オファさんとジョニーさんという2人の海洋生物学者が住み込んでいる。2人は、サブサブ湾の海の生き物について話をし、客をシュノーケリングに案内する。隠れたサンゴ礁には、色とりどりの魚やウミガメ、マンタが泳ぐ。
2人は、サンゴ礁の状態の調査を指揮し、サンゴやマングローブの再生の取り組みを管理している。地元の村の人たちとも関わり、教育の活動を通じて、フィジーの自然と文化を守る力を育てている。宿の持続可能性の活動は、賞を受けたもので、客は無料で参加できる。
たとえば、朝のシュノーケリング。海の中で、生物学者が水中で書けるボードに生き物の名前を書いて見せる。客は、目の前の魚の名前を、海の中で知る。
サンゴ、シャコガイ、カキ、マングローブ
2023年5月の宿の発表は、海と島を守る取り組みを詳しく伝えている。マングローブを植える取り組みは、大事な生き物のすみかをつくり、海岸が波で削られるのを減らす。客は、ジョニー・シンさんたちと一緒にサンゴを植えられる。
宿は、絶滅のおそれがあるシャコガイの子どもを育て、まわりの海で4種類のシャコガイを増やそうとしている。シャコガイの保護区では、遺伝に配慮した方法で、貝が育ち、増えられるようにしている。
近くのサブサブ湾では、真珠の会社「J・ハンター・パールズ」と組んでカキを育てている。カキは水のきれいさを示す生き物で、発表によると、1つのカキが1日に1,400リットルの水をこす。海の窒素やリンを減らし、サンゴ礁の健康を支える。地元の仕事にもなる。
食べ物と建物でも、海を守る
食べ物にも、海を守る考えがある。発表によると、レストランでは、サンゴ礁の魚や、養殖のエビを出さない。宿の有機の菜園は、宿で出す果物や野菜、ハーブの20%以上をまかない、運ぶ食べ物を減らしている。宿のとなりの約10エーカーの畑でも、食べ物を育てている。
建物の木材は、認証を受けた森から仕入れた。宿はリサイクルと堆肥づくりを行い、省エネの照明を使い、一部のブレでは湯を太陽光の熱でわかす。洗濯と厨房では、環境にやさしい薬剤を使う。
宿は、子どもたちの学びも大切にしている。宿の子どもクラブ「キッズ・ブラ・クラブ」は、宿の客なら無料で、5歳までの子にはナニー(子守り)が付き、6歳から12歳の子は、子ども6人に1人の割合で付き添う仲間(バディ)と過ごす。2023年には、子どもたちが土を育てる農業を学ぶ「土の学校」も始めた。
発表によると、土の学校では、台所のくずや海藻、鶏のふん、茅、わらで堆肥をつくる方法や、庭の畑に置いたミミズの飼育場を学ぶ。宿の池のティラピアから肥料をつくり、サンゴの砂の上でティラピアとハーブを一緒に育てる「アクアポニックス」もある。宿では4つの巣箱でミツバチを飼い、まわりの植物や野菜の実りを助けている。マホガニーやチークなど、何百本もの木が炭素をたくわえる。
総支配人のバーソロミュー・シンプソンさんは、発表の中で「島のいちばん大切な資源を守り、まわりの自然への影響を減らすために、最良のやり方を取り入れることがとても大切です」と話している。宿は、バヌアレブ島にしか生えない、とても絶滅のおそれが高いハイビスカスの一種「ハイビスカス・ベネッティ」の植え直しも進めている。
日本の宿に置き換えると
ジャン=ミシェル・クストー・リゾートの工夫は、海の専門家が宿に住み込み、客を海に案内しながら、保全の活動も進めていることにある。日本の海辺の宿でも、地元の漁師や研究者、ダイビングの案内人と組んで、海の学びの時間をつくれる。献立で、減っている魚を使わないと決めることもできる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%の宿を考える。年に5,110室泊で、1室泊あたり50円を地元の海の保全の活動にあてると、年に25万5,500円になる。藻場や浜辺を守る地元の団体を、毎年支える元手になる。
持ち帰れる知識
- 海の専門家が宿にいると、客の体験と保全の活動を一緒に進められる
- 守られた海は、宿にとって何よりの魅力になる
- 献立で出さない魚を決めることも、海を守る取り組みになる
- 子どもの学びの場をつくると、家族の客に選ばれやすい
宿で考えられること
- 地元の海や川に詳しい人と組んで、案内の時間をつくれないか考えてみる
- 献立の魚が、減っている種類でないか調べてみる
- 海辺の清掃や藻場の保全の活動に、客と参加できないか探してみる
事業・予約への接続
ジャン=ミシェル・クストー・リゾートは、住み込みの海洋生物学者と無料の保全の体験を、宿の魅力として伝えている。客は、海を学び、守る旅をするために、ここを選ぶ。
Sources / 参考情報
- Jean-Michel Cousteau Resort(英文) - ホーム(公式サイト)
裏付け: フィジーで初めての高級なエコ・リゾート、海の保全・文化・もてなし、サブサブ湾に囲まれた半島、フィジーの伝統的な形のブレ - Jean-Michel Cousteau Resort(英文) - エコ・プログラム(公式サイト)
裏付け: 守られた海「タブー」、マングローブを植える・サンゴの再生、サンゴ礁の調査を学ぶ、絶滅のおそれがある生き物、オファさんとジョニーさん、ウミガメとマンタ、賞を受けた無料の持続可能性の活動、ハイビスカス・ベネッティの保全 - Jean-Michel Cousteau Resort(英文) - 海洋生物学者の紹介(公式サイト)
裏付け: 住み込みの海洋生物学者、サンゴ礁の調査とサンゴ・マングローブの再生を管理、村の人たちへの教育の活動 - Jean-Michel Cousteau Resort(英文) - キッズ・ブラ・クラブ(公式サイト)
裏付け: 宿の客は無料、5歳までのナニー、6歳から12歳のバディ(子ども6人に1人) - For Immediate Release(宿の発表、英文) - ジャン=ミシェル・クストー・リゾートが土を育てる農業の学びを始める(2023年5月)
裏付け: バヌアレブ島の17エーカー、土の学校、となりの約10エーカーの畑、タブー、リサイクルと堆肥・省エネの照明・一部のブレの太陽熱の湯・洗濯と厨房の薬剤、認証を受けた森の木材、サンゴ礁の魚と養殖のエビを出さない、マングローブで海岸が削られるのを減らす、ジョニー・シンさんとサンゴを植える、4種類のシャコガイを増やす保護区、J・ハンター・パールズとカキ(1日1,400リットル)、菜園で20%以上、堆肥の材料(台所のくず・海藻・鶏のふん・茅・わら)、ミミズの飼育場、ティラピアの肥料とアクアポニックス、4つの巣箱、何百本ものマホガニーとチーク、シンプソン総支配人の言葉、バヌアレブ島だけのハイビスカス・ベネッティの植え直し