屋根が足りないなら、海に浮かべる:モルディブのラックス・サウス・アリ環礁が、太陽の光を海の上で集める方法
インド洋の島国モルディブ。南アリ環礁の島に、「ラックス・サウス・アリ環礁」がある。客室のヴィラは193棟。モルディブでも大きなリゾートの島の一つだ。
モルディブの多くのリゾートは、ディーゼルの発電機で電気をつくっている。太陽の光はたっぷりあるのに、小さな島には太陽光パネルを並べる場所が少ない。ラックス・サウス・アリ環礁は、この壁を、海の上で越えようとした。
屋根を使い切ったあと、海へ
業界誌の記事によると、宿は、オーストリアとモルディブの会社「スイムソル」と組んで、まず屋根に太陽光パネルを載せた。使える屋根をすべてパネルで覆ったあと、宿は海岸線の外へ広げることにした。
2019年8月、宿の沖に、海に浮かぶ太陽光発電「ソーラーシー」の台12基が動き出した。モルディブの新聞エディションによると、当時、海に浮かぶ太陽光発電として世界最大と伝えられた。スイムソルは、波や嵐、塩水に耐えるよう設計した、特許を持つ浮かぶ太陽光発電の技術を持つ。
宿の発表によると、12基を加えたことで、太陽光の発電能力は40%増え、678キロワットピークになった。日差しの強い時間には、すべてのヴィラの電気をまかなえる量だ。発電機で同じ量の電気をつくる場合に比べて、年に26万リットルを超えるディーゼルを節約できる。
総支配人のヨナス・アムスタッドさんは、「本当の持続可能性には、新しい工夫が欠かせない」と話している。
魚のすみかにもなる台
海に浮かべると、海の生き物への影響が心配になる。宿の説明では、台はサンゴ礁から離れた、砂の海底の上に置いた。台は、小さな魚や、背骨のない小さな生き物の隠れ家になり、魚を集める役目も果たす。台に付いて育ったサンゴの幼生は、大きな群れに育ったあと、海底に植え直せるという。
たとえば、晴れた日の昼。沖の台の上ではパネルが光を受け、その下の日陰には、小さな魚が集まっている。
発電機の数を減らす
2019年10月のエディションの特集記事によると、宿はそれまで、電気をまかなうのに5台の発電機に頼っていた。太陽光が増え、発電所の設備も効率の良いものに替えたことで、晴れた日には、2台の発電機で足りるようになった。
いまの宿の資料によると、海の上と屋根の太陽光は、晴れた日に、宿のエネルギーの最大30%をまかなっている。資料は、2025年に、2,020キロワットの太陽光と、送電網につながない蓄電池を加える計画も伝えている。これにより、1日に最大8時間、すべての発電機を止められるようになるという。
海に浮かぶ太陽光は、その後も広がっている。スイムソルの報道向けページによると、同社は2012年にオーストリアで生まれ、2014年に世界で初めて海に浮かぶ太陽光の台を海に置いた。いまでは50を超えるリゾートの島に、合わせて50メガワットピークを超える太陽光を設置している。モルディブで最大の海に浮かぶ太陽光は、別のリゾートの2.4メガワットの設備になった。2019年の記事で、スイムソル・モルディブの代表フセイン・シマドさんは「私たちの目標は、すべての島が太陽の光だけで動けるようにすることです」と語っていた。
海に囲まれた宿として
宿は、海の保全にも力を入れている。宿の資料によると、宿は、モルディブで最大の海洋保護区「南アリ海洋保護区」の境目にある。広さは42平方キロメートルだ。宿の海洋生物学のチームは、ジンベエザメやマンタ、ウミガメのデータを集め、研究団体に提供している。海に捨てられた漁具を取り除いたり、浜辺の清掃を支えたりもしている。
宿は、モルディブ・ジンベエザメ研究計画や、オリーブ・リドリー・プロジェクト、マンタ・トラストといった国際的な保全団体と長く組み、データを共有している。
毎週のサンゴを植える教室では、客がサンゴの再生に参加できる。サンゴを植えた枠の「里親」になった客には、育っていくサンゴの写真が定期的に届く。
食事では、すべてのレストランで、植物を中心にした料理やベジタリアン、ビーガンの料理を出す「キーン・オン・グリーン」の考え方をとる。宿は、モルディブで初めて「ビーガンにやさしいホテル」に認められた。工作の場では、ふだん捨てるものを集めて作り替え、作品にする方法を客に教えている。
宿は、2011年12月から島で飲み水をつくっている。1日に平均6,000リットルの水をつくり、氷や、コーヒーをいれる機械にも使う。資料によると、これまでに約81万本のペットボトルを減らした。
日本の宿に置き換えると
ラックス・サウス・アリ環礁の工夫は、太陽光パネルを置く場所が足りないという壁を、屋根から海へと場所を広げて越えたことにある。日本の宿でも、屋根だけでなく、駐車場の屋根や、使っていない土地などに太陽光パネルを置けないか、考えることができる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、宿の駐車場の屋根に10キロワットの太陽光パネルを載せたとする。1キロワットあたり年に1,200キロワット時の電気をつくれるとすると、年に1万2,000キロワット時になる。1キロワット時30円として、年に36万円分の電気を自前でつくれる。
持ち帰れる知識
- パネルを置く場所が足りなくても、場所を広げる工夫で越えられる
- 太陽光を増やすときは、発電機の設備の効率も一緒に見直すと効果が大きい
- 海の生き物への影響は、置く場所を選ぶことで小さくできる
- 発電機を止められる時間は、取り組みの成果として伝えやすい
宿で考えられること
- 屋根以外に、太陽光パネルを置ける場所がないか書き出してみる
- いま使っている発電機やボイラーの効率を確かめてみる
- 太陽光の電気で、晴れた日の昼にどれだけまかなえるか試算してみる
事業・予約への接続
ラックス・サウス・アリ環礁は、海に浮かぶ太陽光や海洋保護区での活動を、宿の魅力として伝えている。客は、海を守る取り組みに参加するために、ここを選ぶ。
Sources / 参考情報
- The Edition(英文) - ラックス・サウス・アリが海に浮かぶ世界最大の太陽光発電を始める(2019年8月25日)
裏付け: 12基、スイムソル、特許を持つ浮かぶ太陽光発電、波・嵐・塩水に耐える、先に屋根の太陽光、40%増えて678キロワットピーク、日差しの強い時間にすべてのヴィラ、年に26万リットルを超えるディーゼルを節約、魚を集める台・小さな魚の隠れ家、砂の海底の上でサンゴ礁から離れる、サンゴの幼生を植え直す、アムスタッド総支配人の言葉、さらに増やす計画、シマド代表の言葉 - The Edition(英文) - 再生可能な未来への持続可能な一歩(2019年10月23日)
裏付け: 193棟のヴィラ、以前は5台の発電機、太陽光と発電所の改良で晴れた日は2台 - Hotelier Middle East(英文) - ラックス・サウス・アリ環礁が持続可能なエネルギーに投資
裏付け: モルディブでも大きなリゾートの島の一つ、使える屋根をすべて覆ったあと海岸線の外へ12基 - Swimsol(英文) - 報道向けページ
裏付け: 2012年にオーストリアで創業、2014年に世界で初めて海に浮かぶ太陽光、50を超えるリゾートの島に50メガワットピーク超、モルディブで最大の海に浮かぶ太陽光は別のリゾートの2.4メガワット - The LUX Collective(英文) - ラックス・サウス・アリ環礁の持続可能性の取り組み(資料、PDF)
裏付け: 晴れた日に最大30%、2025年に2,020キロワットと蓄電池を加え最大8時間すべての発電機を止める計画、南アリ海洋保護区(42平方キロメートル、モルディブで最大)、ジンベエザメ・マンタ・ウミガメのデータ、捨てられた漁具の除去、モルディブ・ジンベエザメ研究計画・オリーブ・リドリー・プロジェクト・マンタ・トラストとデータを共有、毎週のサンゴの教室と里親、キーン・オン・グリーンとモルディブで初めてのビーガンにやさしいホテル、捨てるものを作品にする工作の教室、2011年12月からの飲み水づくり(1日平均6,000リットル、氷とコーヒーの機械にも、約81万本)