丘の上の小さな農場から、卵と野菜と炭を島に返す:タイのシックスセンシズ・サムイが、宿の資源を回す方法
タイのサムイ島。その北の端、人目につかない岬の上に「シックスセンシズ・サムイ」がある。2004年に開業した宿で、67棟のヴィラが、自然の植物に溶け込むように建ち、タイ湾を見渡す。60棟には専用のプールがある。
公式サイトによると、宿は開業のときから、持続可能性を大切にしてきた。日々の運営や仕入れの考え方から、地域の清掃、島の市場への参加まで、取り組みは多い。その中心にあるのが、丘の上の小さな農場「ファーム・オン・ザ・ヒル」だ。
小さな農場の、大きな役目
公式サイトは、この農場を「小さいけれど、大きな保全の役目を持つ」と紹介している。農場には、ヤギの群れや鶏、アヒルがいる。客は動物にえさをあげ、朝ごはんのために、産みたての卵を自分で集めることもできる。
農場では、ごみを減らし、資源を回し、自然に逆らわずに育てる農業の考え方を学べる。宿の工作の場「アース・ラボ」では、農場や宿のあちこちから出た材料を、新しいものに作り替える工夫を学べる。宿の「アルケミー・バー」では、タイに伝わる薬草の知恵を、手を動かしながら学ぶ教室を開いている。
たとえば、朝の農場。客がかごを手に鶏小屋へ向かい、産みたての卵を拾う。その卵が、その日の朝ごはんの皿にのる。
数字で見る、2025年の農場と宿
公式サイトは、2025年の取り組みを数字で示している。
農場では、宿の運営や食事に使う野菜を1,233キロ育てた。鶏とアヒルは、2万7,375個の卵を産んだ。農場とアース・ラボの活動には、419人の客が参加した。
宿全体では、2万6,062キロのごみをリサイクルに回した。浜辺やまわりの地域から、1,424キロのごみを拾った。2025年3月に新しく屋根に付けた太陽光パネルは、それから4万700キロワット時の電気をつくった。
ごみを減らすため、仕入れ先と一緒に、いらない包装を減らしている。繰り返し使えるものを選び、ごみは分けてリサイクルに回す。
農場のものを、島の市場へ
農場でとれたものは、島にも届く。公式サイトによると、宿は毎月最後の日曜日、フィッシャーマンズ・ビレッジで開かれる「サムイ・グリーン・マーケット」に、地域の人やほかの宿と一緒に参加している。
市場では、農場でとれたタイのハーブや野菜、アヒルと鶏の卵、そして再生した木材でつくった炭を並べる。料理人がつくる体にやさしい料理や飲み物も出す。利益の10%は、地域の取り組みに寄付している。
使った量を、目に見える場所に
シックスセンシズのグループの説明によると、アース・ラボは、宿の持続可能性の取り組みを見せる場所だ。海の保全や農業、再生可能エネルギーなどの取り組みを伝え、水やエネルギー、ごみの使用量のデータも示す。グループは、ごみを出さない考え方をとり、材料を作り替えて使ったり、運ぶ影響を減らすために宿の中でものをつくったりしている。
グループの説明は、宿で行う取り組みの例も挙げている。食べ物のくずは堆肥にして有機の菜園に使い、菜園でとれた果物や野菜を客の食事の土台にする。ミツバチの巣箱を置いて、はちみつをとり、まわりの作物の受粉を助ける。リサイクルができない場所では、ガラスを砕いて植木鉢や敷石、照明の器具に作り替える。
シックスセンシズ・サムイでは、案内付きの散歩で、ファーム・オン・ザ・ヒルやアース・ラボを巡れる。客は、宿が何をどれだけ使い、どう回しているかを、自分の目で確かめられる。
学校の落ち葉を、堆肥に
宿は、地域の学校とも資源を回している。2025年、近くのバーン・プライ・レム学校の「落ち葉銀行」の取り組みで、宿は堆肥をつくるタンクづくりを手伝った。宿の働き手が学校と一緒に、落ち葉などの生ごみを栄養たっぷりの堆肥に変えた。ごみと費用を減らし、生徒にとっては、ごみを減らすことや堆肥づくりを、手を動かして学ぶ機会になる。
宿は、島の病院も支えている。2025年と2026年には、サムイ島の病院に、血圧計や、医療用の加湿器3台、呼吸を助ける機械3台を贈った。
2025年には、1,194人の地域の人が、宿の環境を学ぶ活動に参加した。宿で働く人は、ほぼ全員が地元で雇われた人で、100人を超える人が気候変動について学ぶ研修を受けている。
日本の宿に置き換えると
シックスセンシズ・サムイの工夫は、小さな農場を、食べ物をつくる場だけでなく、ごみを資源に戻し、客と地域が学ぶ場として使っていることにある。日本の宿でも、小さな菜園や鶏小屋を、客の体験と結びつけたり、とれたものを地域の朝市に出したりできる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、宿で鶏を10羽飼うと考える。1羽が年に250個の卵を産むとすると、年に2,500個になる。1個30円とすれば、年に7万5,000円分の卵を、宿の中でまかなえる。野菜くずを鶏のえさにすれば、生ごみも減る。
持ち帰れる知識
- 小さな農場でも、食べ物・学び・ごみ減らしの3つの役目を持たせられる
- 農場の体験は、客にとって宿の思い出になる
- とれたものを地域の市場に出すと、宿と地域がつながる
- 毎年の数字を出すと、取り組みが続いていることを示せる
宿で考えられること
- 敷地の中に、小さな菜園や鶏小屋を置ける場所がないか探してみる
- 地域の朝市やマルシェに、宿として参加できないか調べてみる
- 近くの学校と、落ち葉や生ごみの堆肥づくりを一緒にできないか考えてみる
事業・予約への接続
シックスセンシズ・サムイは、農場の体験や毎年の数字を、公式サイトで伝えている。客は、島の自然と暮らしに触れるために、この宿を選ぶ。
Sources / 参考情報
- Six Senses(英文) - シックスセンシズ・サムイの持続可能性の取り組み(公式サイト)
裏付け: 2004年の開業から持続可能性を大切に、サムイ・グリーン・マーケット、アース・ラボで農場などの材料を作り替える、アルケミー・バーのタイの薬草の教室、ファーム・オン・ザ・ヒルでごみを減らし資源を回し自然に逆らわない農業、2025年の数字(野菜1,233キロ、参加した客419人、卵2万7,375個、リサイクル2万6,062キロ、地域の人1,194人、浜辺などのごみ1,424キロ、2025年3月からの屋根の太陽光4万700キロワット時)、仕入れ先と包装を減らす、繰り返し使えるもの、ごみの分別、バーン・プライ・レム学校の落ち葉銀行の堆肥のタンク、ほぼ全員が地元の雇用、100人超が気候変動の研修、2025年と2026年に病院へ血圧計・加湿器3台・呼吸の機械3台、毎月最後の日曜日・フィッシャーマンズ・ビレッジの市場でハーブ・野菜・卵・再生した木材の炭・料理、利益の10%を寄付 - Six Senses(英文) - シックスセンシズ・サムイ(公式サイト)
裏付け: サムイ島の北の端の岬、67棟のヴィラ、タイ湾の眺め、60棟に専用プール、自然の植物に隠れたヴィラ、小さいけれど大きな保全の役目を持つ農場、ヤギと鶏、動物にえさをあげ朝ごはんの卵を集める、ファーム・オン・ザ・ヒルやアース・ラボを巡る案内付きの散歩 - Six Senses(英文) - アース・ラボで足あとを軽くするには(グループの説明)
裏付け: アース・ラボは取り組みを見せる場所、海の保全・農業・再生可能エネルギーなどを伝え、水・エネルギー・ごみの使用量のデータを示す、ごみを出さない考え方、作り替えと宿の中でつくる、食べ物のくずを堆肥に・菜園の果物や野菜・ミツバチの巣箱・ガラスを砕いて植木鉢や敷石や照明に