GOAL 15 · TARGET 15.5 自然・生物多様性・保全 3分 / 2012文字 森の生き物を数えて、守る #131

宿の森で、鳥を540種数えた:ペルーのインカテラ・レセルバ・アマゾニカが、アマゾンの生き物を調べながら守る方法

南米ペルーの南東、アマゾンの熱帯雨林。ブラジルとボリビアの国境に近いマドレ・デ・ディオス川のほとりに、「インカテラ・レセルバ・アマゾニカ」がある。公式サイトによると、宿は「タンボパタ国立保護区」のとなりにあり、1万7,000ヘクタール(4万2,008エーカー)の私有の自然保護区の中心に位置する。古都クスコからは、飛行機で25分ほどだ。

宿には、この土地の先住民「エセエハ」の文化に学んだ、35棟の木造の小屋(カバーニャ)が並ぶ。屋根はヤシの葉でふいてある。公式サイトによると、宿の敷地では、これまでに540種の鳥が記録されている。

調べることから始めた宿

宿を運営するインカテラは、1975年に、ホセ・コッホリン・フォン・シュタインさんが立ち上げた。ペルーで、自然を楽しむ旅「エコツーリズム」を先がけて始めた会社だ。

会社の説明によると、インカテラは1978年から、宿のある土地で動物や植物の調査を続けてきた。最初に生き物を調べて記録しておけば、のちに宿が自然に与える影響を、その記録と比べて確かめられる。

調査は、多くの発見につながった。インカテラの宿の敷地とそのまわりでは、科学の世界で知られていなかった28の新しい種が見つかり、名前が付けられた。内訳は、ラン19種、両生類5種、チョウ1種、パイナップルの仲間の植物2種、熱帯のつる植物1種だ。アリは362種が記録された。創業者の紹介ページは、これをハーバード大学の生物学者E・O・ウィルソンさんが後押しした世界記録だと伝えている。

木の上から森を見る

生き物を守る取り組みは、非営利団体「インカテラ・アソシアシオン」が進めている。その一つが、森の上に架けた橋「インカテラ・キャノピー・ウォークウェイ」だ。会社の説明では、森の上の層(樹冠)にすむ生き物を調べるために設計された。

宿の案内によると、客は地面から29メートルの高さにある最初の塔に上り、8つの観察台を結ぶつり橋を、1時間半かけて歩く。オオハシやキツツキ、運がよければサルやナマケモノにも出会える。下りたあとは、季節によって水につかる湿地の上に延びる、200メートルの木の橋を30分ほど歩く。カエルなどの両生類や鳥、湿地の木々を間近に見られる。

となりの国立保護区にも足を延ばせる。宿の案内によると、エンジン付きのカヌーで30分ほど進み、3キロの小道を1時間半歩くと、サンドバル湖に着く。鏡のような湖には、絶滅のおそれがあるオオカワウソのほか、アカホエザルやコンゴウインコ、ツメバケイ、キボシヨコクビガメがすむ。客はカヌーで静かに湖をわたり、生き物を探す。

たとえば、夜の森の散策。ガイドが明かりを向けると、昼には見えなかった小さなカエルが、葉の上でじっとしている。

森を戻し、炭素をたくわえる

宿の近くには、森を元に戻すための30ヘクタールの区画「パルメトゥム」がある。インカテラ・アソシアシオンは、ここで最大19種の在来のヤシを記録した。宿のまわりの庭は、地元の人たちが10年以上前に始めたもので、在来の植物やランを育てている。有機の菜園では、堆肥づくりや、自然の肥料を使った育て方を客に伝えている。

会社の説明によると、インカテラは1989年、ペルーの企業として初めて、カーボンニュートラル(出す炭素と吸収する炭素の差し引きゼロ)を宣言した。ペルーで初めての「エコロジー・コンセッション(自然を守るための利用権が認められた土地)」として、1万ヘクタールを超える手つかずの森を守っている。英国リーズ大学のティム・ベイカー教授の調べでは、レセルバ・アマゾニカなどで守られた森は、1ヘクタールあたり200トンの炭素をたくわえている。

電気を控えめに、森の音を聞く

宿の旅行者向けの案内によると、小屋はランタンでやわらかく照らされ、扇風機とお湯はあるが、電気は限られている。エアコンとインターネットはない。客は、ハンモックのある網戸付きの部屋で、森の音を聞きながら過ごす。

会社の説明によると、インカテラは創業から4,000人を超える地元の人を育ててきた。宿の仕事や自然ガイド、カカオやブラジルナッツを育てる農林業の仕事が、森を守る取り組みとつながっている。

日本の宿に置き換えると

インカテラの工夫は、まず土地の生き物を調べて記録し、その記録を、守る取り組みと客の体験の両方に生かしてきたことにある。日本の宿でも、地元の研究者や自然保護の団体と組んで、敷地や近くの山・川の生き物を調べ、散策の案内に生かせる。記録が増えるほど、宿の自然の価値を言葉で伝えられる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%の宿を考える。年に5,110室泊で、1室泊あたり100円を地元の生き物の調査にあてると、年に51万1,000円になる。研究者と組んで、毎年の生き物の記録を続ける元手になる。

持ち帰れる知識

  • 生き物の記録は、守る取り組みと客の体験の両方に使える
  • 最初に記録を残しておくと、のちの影響を比べて確かめられる
  • 研究のための設備は、客の特別な体験にもなる
  • 電気を控えめにすることも、自然を感じてもらう工夫になる

宿で考えられること

  • 敷地や近くで見られる鳥や植物を、一覧にしてみる
  • 地元の研究者や自然保護の団体と、一緒にできることを話してみる
  • 夜や早朝の散策など、生き物に出会える時間の案内を考えてみる

事業・予約への接続

インカテラ・レセルバ・アマゾニカは、鳥の種類の数や新しい種の発見を、宿の魅力として伝えている。客は、研究に支えられた森を歩くために、ここを選ぶ。

Sources / 参考情報

  • Inkaterra(英文) - インカテラ・レセルバ・アマゾニカ(公式サイト)
    裏付け: マドレ・デ・ディオス川の前、エセエハの文化に学んだ35棟の木造の小屋、敷地で540種の鳥、30メートルの高さの橋、2013年にナショナル ジオグラフィック トラベラー誌の世界のエコロッジ25選、タンボパタ国立保護区のとなり、ペルーの生物多様性の首都、1万7,000ヘクタール(4万2,008エーカー)の私有の保護区の中心、クスコから飛行機で25分
  • Inkaterra(英文) - 小屋の案内(公式サイト)
    裏付け: エセエハの様式の木造の小屋、ヤシの葉の屋根、ハンモックのある網戸付きの部屋、懐中電灯と灯油ランプ、天井の扇風機
  • Inkaterra(英文) - 半日の散策(公式サイト)
    裏付け: 最初の塔の高さ29メートル、8つの観察台を結ぶつり橋を1時間半、オオハシ・キツツキ・サル・ナマケモノ、季節によって水につかる湿地の上の200メートルの木の橋を約30分、両生類・鳥・湿地の木々、カヌーで30分と3キロの小道を1時間半でタンボパタ国立保護区のサンドバル湖、絶滅のおそれがあるオオカワウソ・アカホエザル・コンゴウインコ・ツメバケイ・キボシヨコクビガメ
  • Inkaterra(英文) - 短時間の散策(公式サイト)
    裏付け: 地元の人たちが10年以上前に始めた庭、インカテラ・アソシアシオンの有機の菜園(堆肥と自然の肥料)、30ヘクタールのパルメトゥムで最大19種の在来のヤシ、夜の森の散策
  • Inkaterra(英文) - 会社の紹介(公式サイト)
    裏付け: 1975年創業、1978年からの調査と将来の影響を比べる基準、28の新しい種(ラン19・両生類5・チョウ1・パイナップルの仲間2・つる植物1)、アリ362種、インカテラ・アソシアシオン、樹冠の生き物を調べるための橋、1989年にペルーの企業で初めてカーボンニュートラル、ペルーで初めてのエコロジー・コンセッションで1万ヘクタール超の森、ティム・ベイカー教授の1ヘクタール200トン、4,000人を超える地元の人の育成、カカオとブラジルナッツの農林業
  • Inkaterra(英文) - 創業者の紹介(公式サイト)
    裏付け: ホセ・コッホリン・フォン・シュタインさんが1975年に創業しペルーのエコツーリズムを先がけた、アリ362種はハーバード大学の生物学者E・O・ウィルソンさんが後押しした世界記録
  • Inkaterra(英文) - タンボパタの旅行者向け案内(PDF)
    裏付け: 35棟の小屋はエセエハの伝統の様式、ランタンの明かり、ヤシの葉の屋根、扇風機とお湯、限られた電気、エアコンとインターネットはない

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