GOAL 15 · TARGET 15.5 自然・生物多様性・保全 3分 / 2066文字 草の量を測って、動物の数を決める #137

動物の数は、草の量で決める:ニューメキシコの「ベルメホ」が、広大な土地に野生を取り戻す方法

米国ニューメキシコ州の北部、コロラド州との境に近い山あいに、「ベルメホ、ア・テッド・ターナー・リザーブ」がある。公式サイトによると、広さはおよそ56万エーカー、850平方マイルを超える。東京都の面積と同じくらいの土地に、草原、森、川、そして標高3,900メートルを超える高山の草地までが、途切れずにつながっている。

旅行誌エリート・トラベラーの2021年の記事によると、この土地を1996年に買い取ったのは、米国のメディア企業家テッド・ターナーさんだ。ターナーさんは、敷地にあった露天掘りの炭鉱を閉じた。それまでの100年、この土地は木を切られ、在来の生き物を減らされ、もともといない魚を放たれてきた。今はその傷を、宿の収入で治している。

草を測ってから、頭数を決める

ベルメホの考え方の中心にあるのは、「土地が養える動物の数」を先に調べることだ。公式サイトによると、2年をかけて、平年よりやや雨の少ない年に草がどれだけ育つかを測った。その結果をもとに、バイソン、エルク、シカ、プロングホーンなどの大きな草食動物を何頭までにするかを決めている。食べ過ぎを防ぐことで、草原や川辺の植物が目に見えて回復しているという。

2021年の記事で、運営会社の責任者ジェイド・マクブライドさんは、こう話している。「ベルメホでは、その数はバイソン1,400頭だ。2,800頭を放せば、もっと稼げる。でも、土地が支えきれない数のバイソンで埋め尽くすつもりはない」。

数を決めたあとも、確かめ続ける。職員は毎年、草原に27本の調査線を引いて、写真を撮り、雨の量を記録し、草を刈り取って量を測る。雑誌サンセットの2026年の記事によると、エルクは毎年決まった数だけ狩猟で減らし、バイソンも群れを健全な大きさに保つために数を調整して、その肉を売っている。

川辺を囲うと、ビーバーが戻った

草の調査と合わせて、川沿いの一部を柵で囲い、動物が入れないようにした。すると、ヤナギやハンノキ、ハコヤナギが育ち始めた。木が水面に日陰をつくり、魚がすみやすくなった。植物が岸を守ることで土の流出が減り、ビーバーも戻ってきた。

その一方で、敷地の中の柵はほとんど取り外した。境界や道路沿いに残る柵も、野生の動物が安全に越えられる形に替えている。森では、1998年からポンデローサマツの林の間伐を続け、これまでに4万エーカーを超える森に手を入れた。2005年からは、外来の植物を取り除く活動も続けている。

消えかけた魚と、純血に近いバイソン

ニューメキシコの州の魚、リオグランデ・カットスロートトラウトは、すみかを失ったり外来の魚と交雑したりして、もとの生息域の90%を失っていた。ベルメホは仲間の団体と15年かけて、コスティーヤ川の流域から外来の魚を取り除いた。隣の国有林での取り組みと合わせて、この魚がすめる場所は、山の川およそ120マイルと18の湖にまで広がった。

敷地には、「キャッスルロック」と呼ばれるバイソンの群れがいる。遺伝子を調べたところ、牛のミトコンドリアDNAを持たないことがわかった。職員は、動物に負担をかけない方法で群れを動かし、広い土地を移動させている。大学院生の調査では、1,000種を超える植物が見つかり、そのうち2種は新種だった。標高およそ3,350メートルを超える高山の草地には、オオツノヒツジやライチョウ、ナキウサギ、マーモットがすむ。

うまくいっていないことも、公式サイトは書いている。草原にはプレーリードッグがいるが、それを餌にするクロアシイタチは、もうここでは見られない。成果と一緒に、失ったものも記録しているのだ。

泊まることが、保全の費用になる

客は、敷地の中のロッジに泊まる。持続可能な宿のブランド「ビヨンド・グリーン」の紹介によると、そのひとつ「コスティーヤ・フィッシング・ロッジ」は太陽光の電気で動き、環境性能の認証「LEED」のシルバーを受けている。建物には、敷地でとれた木と石を使った。

公式サイトによると、宿泊料には3度の食事と、1日2回の半日の体験が含まれる。客は、19の湖で釣った魚を放す釣りや、乗馬、山歩きを楽しめるほか、川岸の再生を手伝うボランティアにも参加できる。子ども向けには、虫の一生を学ぶ体験などの学びも用意している。サンセットの記事は、ベルメホの考え方を「土地は、自分を守る費用を自分でまかなわなければならない」とまとめている。宿、案内付きの体験、管理された狩猟が、その収入源だ。

日本の宿に置き換えると

ベルメホから学べるのは、「何頭まで」「何人まで」という上限を、土地を測ってから決めていることだ。日本の宿でも、里山の散策や川遊びの人数を、草地や岸の傷み方を見ながら決めることができる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%の宿を考える。年に5,110室泊で、1室泊あたり400円を宿の周りの森や川の手入れに回すとすると、年に204万4,000円になる。

持ち帰れる知識

  • 上限の数は、土地を測ってから決める
  • 決めたあとも、毎年同じ方法で確かめ続ける
  • 柵は、囲う所と外す所を分けて使う
  • 宿の収入を、土地の手入れの費用に直接つなげられる

宿で考えられること

  • 散策路や川辺の傷み方を、季節ごとに写真で記録してみる
  • 体験の定員を、土地の様子を見て決めているか確かめてみる
  • 客が参加できる、草刈りや植樹の時間をつくってみる

事業・予約への接続

ベルメホは、野生の動物と広い土地の中で過ごす体験を、宿の魅力として伝えている。客は、泊まることがそのまま土地を守る費用になると知って、ここを選ぶ。

Sources / 参考情報

  • Ted Turner Reserves(英文) - ベルメホの保全の取り組み(公式サイト、ウェブアーカイブ)
    裏付け: およそ56万エーカーで850平方マイル超、2年かけた草の量の調査で頭数を決める、川辺の囲いでヤナギ・ハンノキ・ハコヤナギが回復しビーバーが戻る、毎年27本の調査線(写真・雨量・刈り取り)、1998年からのポンデローサマツの間伐で4万エーカー超、2005年からの外来植物の駆除、敷地内の柵のほとんどを撤去し境界は野生動物が越えやすい柵に、州の魚が生息域の90%を失った、15年でコスティーヤ川流域から外来の魚を除去、国有林と合わせて約120マイルの川と18の湖、キャッスルロックのバイソンは牛のミトコンドリアDNAを持たない、負担の少ない方法で群れを動かす、1,000種超の植物と2つの新種、最高峰は12,931フィート、1万1,000フィートより上の高山の草地にオオツノヒツジ・ライチョウ・ナキウサギ・マーモット、クロアシイタチはもう見られない
  • Vermejo(英文) - ベルメホ(公式サイト)
    裏付け: 3度の食事と1日2回の半日の体験を含む、滞在が保全を支える
  • Beyond Green(英文) - ベルメホ、ア・テッド・ターナー・リザーブ(ブランドの紹介ページ)
    裏付け: 太陽光で動きLEEDシルバーのコスティーヤ・フィッシング・ロッジ、敷地の木と石を使った建物、19の湖で釣った魚を放す釣り・乗馬・山歩き、川岸の再生のボランティア、子ども向けの虫の一生を学ぶ体験
  • Elite Traveler(英文) - すべてを守る:ベルメホのエコツーリズム(2021年12月)
    裏付け: 1996年にターナーさんが購入し炭鉱を閉じた、それまでの100年の土地の使い方、マクブライドさんの「その数はバイソン1,400頭。2,800頭なら稼げるが、土地が支えきれない数にはしない」
  • Sunset(英文) - 自分だけの国立公園のような、ぜいたくな原野の宿(2026年7月)
    裏付け: 「土地は自分を守る費用を自分でまかなわなければならない」、宿・案内付きの体験・野生動物の観光・管理された狩猟が収入源、エルクを毎年決まった数だけ狩猟で減らしバイソンも数を調整して肉を売る

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