GOAL 11 · TARGET 11.4 地域・文化・コミュニティ 4分 / 2324文字 土地の人と、聖地のそばの宿を営む #140

聖地のそばの宿を、土地の人とともに営む:ウルルの「エアーズロック・リゾート」が、文化と自然を守る方法

オーストラリアの中央、赤い砂漠の真ん中に、巨大な一枚岩ウルルがある。ウルルとカタ・ジュタの国立公園は、1994年に、自然と文化の両方の価値で世界遺産に登録された。その国立公園のすぐ外、ユララの町にあるのが「エアーズロック・リゾート」だ。ホテルやアパート、キャンプ場がまとまった、町そのもののようなリゾートだ。

公式サイトの歴史のページによると、1970年代に、宿と飛行場を国立公園の外へ移すことが決まり、今の町がつくられた。1985年には、国立公園が土地の伝統的な持ち主、アナングの人たちに返された。2011年、先住民のための政府系の機関がリゾートを買い取り、運営会社ボヤージズを立ち上げた。2026年には、ボヤージズは国内の旅行会社グループ、ジャーニー・ビヨンドに加わっている。

名前を残したのも、アナングの希望

公式サイトによると、リゾートの名前に「ウルル」ではなく「エアーズロック」を使い続けているのは、アナングの人たちの希望だ。ウルルは、彼らにとって深い意味を持つ家族の名前だからだという。

リゾートの運営には、アナングの人たちの声が正式な形で入る。アナングの助言グループや、文化の体験をつくる作業部会があり、文化の扱い方や地域の優先事項が、決定に反映される仕組みだ。

働く人の4分の1が、先住民

公式サイトによると、リゾートで働く人のおよそ4分の1は、アボリジニやトレス海峡諸島の人たちだ。そのうち25%を超える人が、現場のリーダーや管理職を務める。2026年1月の時点では、24人のアナングの人たちが、庭の手入れ、冷凍機の整備、飲食、客の体験の案内などの部署で働いていた。

働く人を育てる仕組みもある。リゾートの中には先住民の若者のための研修校があり、給料を受け取りながら、飲食や客室の仕事を学ぶ。これまでに770人を超える研修生が、国が認める資格を得て巣立った。歴史のページによると、2010年に2人だった先住民の職員は、2013年には研修生60人を含む204人に増えた。

さらに、3つの州にまたがる先住民の地域の学校と組み、毎年およそ20の学校のグループをリゾートに迎えている。職員が遠くの学校に出向き、教室や土地の上で、働く準備のための授業も行う。

物語の使い方にも、決まりがある

2023年に始まった「ウィンジリ・ウィル」は、ドローンやレーザー、光の投影で、アナングの物語を伝える体験だ。公式サイトは、先住民の文化を知的財産として守る決まりについて、国内のお手本になっているとしている。収入は長い期間にわたって、アナングが率いる作業部会を通じて地域に戻る。2021年に開いた美術館では、砂漠の25の先住民の美術センターの作品を扱い、これまでに500件を超える作品が売れた。売り上げは、作家とその家族に届く。

2003年に当時の運営会社が立ち上げた財団は、これまでに300万豪ドルを超えるお金を、地域の保健や教育の事業に投じてきた。ボヤージズは財団の運営費を負担し、客の寄付と同じ額を、年に20万豪ドルまで上乗せする。ウルルのふもとの集落にきれいな飲み水を届ける設備や、リゾートに置いたレントゲンの機械も、この財団の事業だ。レントゲンのおかげで、遠くの集落の人たちは、467キロ離れたアリススプリングスまで行かずに済むようになった。

砂漠の生き物と、太陽

リゾートの庭づくりも、土地に合わせている。周りに生える植物の種を集めて、リゾートの庭で育てる。動物の餌やすみかになるうえ、苗や種を遠くから運ばずに済むので、炭素も減らせる。

リゾートは、2001年から毎年、絶滅のおそれのある生き物の調査を続けている。2022年の調査では、小さな肉食の有袋類「マルガラ」の記録が、22年間で最も多かった。雨に恵まれたことに加え、野良猫の対策と火の管理が効いたという。2023年3月には、アナングの人たちやレンジャー、研究者とともに、砂漠にすむ大型のトカゲ「ジャクラ」の巣穴を、リゾートの6か所で68個見つけた。

2016年には、太陽光発電所「ジントゥ」が完成した。ジントゥは土地の言葉で「太陽」を意味する。出力は1.8メガワットで、5,770枚のパネルを、空港の敷地やホテルの屋根など5か所に分けて置いた。完成時の説明では、リゾートが使う電気の約15%、オーストラリアの家庭およそ150軒分をまかなう。今の公式ページは、日差しが強い時間帯には、最大30%をまかなえると説明している。

ごみも、砂漠の真ん中では運び出すだけで大きな手間になる。2025年5月には、州政府の助成を受けて、車で乗りつけて資源ごみを出せる回収所を町に開いた。住民や近くの先住民の集落の人たちも使える。

客にも、守ってほしいことを伝えている。決められた道を歩くこと、岩や植物、砂を持ち帰らないこと、写真を撮る前に許しを得ることだ。アナングの言葉で「こんにちは」「ありがとう」を表す「パリャ」を覚えるよう、すすめてもいる。

日本の宿に置き換えると

エアーズロック・リゾートから学べるのは、土地の人を「お客に見せる文化」の担い手としてだけでなく、雇用、意思決定、収入の分け方の中に位置づけていることだ。日本でも、地域の祭りや工芸を宿で紹介するとき、誰が語り、収入がどこへ戻るかを先に決めておくことができる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%の宿を考える。年に5,110室泊で、1室泊あたり平均500円分の地元の工芸品が売れ、その7割を作り手に戻すとすると、売り上げは年に255万5,000円、作り手に戻るのは178万8,500円になる。

持ち帰れる知識

  • 土地の人の声を、決定の仕組みの中に入れる
  • 文化を紹介するときは、語り手と収入の戻り方を先に決める
  • 雇うだけでなく、育て、管理職へ進む道をつくる
  • 同じ設備の数字でも、時点と条件をそろえて伝える

宿で考えられること

  • 地域の文化を紹介するとき、誰に相談しているか確かめてみる
  • 地元の作り手の作品を、宿で売れるか考えてみる
  • 地元の学校の職場体験を、受け入れられるか調べてみる

事業・予約への接続

エアーズロック・リゾートは、ウルルの景色と、アナングの物語にふれる体験を、宿の魅力として伝えている。客は、泊まることが土地の人の仕事と地域の事業を支えると知って、ここを選ぶ。

Sources / 参考情報

  • Ayers Rock Resort(英文) - アナングとのパートナーシップ(公式サイト)
    裏付け: 名前はアナングの希望で、ウルルは意味の深い家族の名前、アナングの助言グループと作業部会、働く人のおよそ4分の1が先住民でその25%超がリーダーや管理職、2026年1月時点で24人のアナングが庭・冷凍機の整備・飲食・案内などで働く、研修校から770人超が資格を得た、毎年およそ20の学校のグループを迎え遠くの学校にも出向く、ウィンジリ・ウィルは先住民の文化の知的財産のお手本で収入はアナングが率いる作業部会を通じて地域へ、美術館で25の美術センターの作品と500件超の販売、財団は300万豪ドル超・運営費を負担し年20万豪ドルまで寄付と同額を上乗せ、飲み水の設備とレントゲンの機械
  • Ayers Rock Resort(英文) - 歴史と事実(公式サイト)
    裏付け: 1970年代に宿と飛行場を国立公園の外へ、1985年に国立公園を返還、1994年に自然と文化の両方で世界遺産、2011年に先住民の機関が買い取りボヤージズを設立、2013年に先住民の職員が2010年の2人から研修生60人を含む204人へ、2016年にジントゥ完成で電気の約15%・家庭およそ150軒分、2021年に美術館、2023年にウィンジリ・ウィル、2026年にジャーニー・ビヨンドに加わる
  • Ayers Rock Resort(英文) - 赤い大地をもっと緑に(公式サイト)
    裏付け: 州政府の助成で資源ごみの回収所、ジントゥは「太陽」の意味、空港やホテルの屋根など5か所、2001年からの毎年の調査、2022年に小さな肉食の有袋類の記録が22年間で最多(雨・野良猫の対策・火の管理)、2023年3月に大型のトカゲの巣穴を6か所で68個
  • Ayers Rock Resort(英文) - 旅を持続可能にするためのヒント(公式サイト)
    裏付け: ジントゥは日差しが強い時間帯に最大30%をまかなえる、周りの植物の種を集めて庭で育てる、2025年5月1日に車で乗りつける資源ごみの回収所を開き住民と先住民の集落の人も使える、決められた道を歩く・岩や植物や砂を持ち帰らない・写真の前に許しを得る、「パリャ」
  • Voyages Tourism Australia(英文) - ジントゥ太陽光発電所(公式サイト)
    裏付け: 1.8メガワット、5,770枚のパネル、5か所に分けて設置
  • Voyages Tourism Australia(英文) - アナング・コミュニティーズ財団(公式サイト)
    裏付け: 2003年に当時の運営会社が前身の財団を設立、運営費を負担し年20万豪ドルまで寄付と同額を上乗せ、レントゲンの機械で467キロ離れたアリススプリングスまで行かずに済む
  • National Indigenous Training Academy(英文) - 研修校(公式サイト)
    裏付け: 給料を受け取りながら学ぶ研修、飲食・客室・フロントなどの仕事

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