GOAL 7 · TARGET 7.2 エネルギー・脱炭素 4分 / 2149文字 海に浮かべた太陽光で、発電機を休ませる #141

養殖いけすの技術で、海に太陽光を浮かべる:モルディブの「ソネバ・シークレット」が、発電機を止める時間をつくる方法

モルディブの北の端、ハー・ダール環礁に、ソネバ・シークレットというリゾートがある。近くの島の空港から、スピードボートでおよそ1時間。地元の報道によると、2024年4月に開業した。ヴィラの数は、開業時の発表では14棟、今の公式サイトでは13棟。ソネバが構想に30年をかけたという、ごく小さな宿で、ボートでしか行けない水上のヴィラもある。

このリゾートの沖には、海に浮かぶ太陽光発電所がある。2026年1月、ノルウェーの会社オーシャン・サンが、完成を発表した。島の宿の電気を、ディーゼル発電機から太陽の光へ切り替えていく試みだ。

島の電気は、運んできた燃料から

モルディブのリゾートの多くは、それぞれが一つの島にある。設備を手がけたシンガポールの会社キャノピー・パワーの社長は、業界誌の取材に、こう話している。島で電気をつくる方法はディーゼル発電機しかなく、排出が多いうえ、燃料は高く、運ぶのも大変だ。燃料の値段が上がり下がりする影響から、できるだけ離れたいという思いもあった、と。

ソネバは、ほかの2つのリゾートで先に太陽光を増やしてきた。キャノピー・パワーの2025年2月の発表によると、ソネバ・フシとソネバ・ジャニの2か所に、合わせて5.2メガワットの太陽光パネルと、4.7メガワット時の蓄電池を、6か月で設けた。電気の50%を太陽光でまかなう計画で、ディーゼル燃料を年に200万リットル、二酸化炭素を年に5,000トン減らせるとしている。2026年の業界誌の記事では、この2か所の太陽光と蓄電池が、今は電気のおよそ40〜45%をまかなっていると紹介されている。

屋根が足りないから、海の上へ

では、新しいリゾートでは、どこにパネルを置くか。社長によると、いちばんの悩みはそこだった。ヴィラの屋根の形と、限られた土地では、意味のある量を置けない。そこで、海の上に浮かべることにした。

選ばれたのは、オーシャン・サンの技術だ。円い浮きの中に、水の動きに合わせてしなる膜を張り、その上にパネルを平らに並べる。2024年の計画時の発表では、直径74メートルの輪を3つ浮かべるとされた。オーシャン・サンの社長は、この浮きの形は、ノルウェーのサケの養殖いけすで50年以上積み重ねた経験がもとになっている、と業界誌に語っている。

パネルが膜の上に平らに置かれるので、下の海水で冷やされる。社長は、モルディブのような場所では、冷える分だけ発電の効率が最大で10%上がると説明する。平らで目立ちにくく、海の景色になじみやすいことも、景観を大切にするリゾートには大事な点だった。社長は、パネルが膜の上に寝かせてあるため、輪は大きな波や台風なみの強い風にも耐えられると説明している。

2メガワットの発電所と、3メガワット時の電池

オーシャン・サンの2026年1月の発表によると、完成した設備は、2メガワットの浮かぶ太陽光発電所と、3メガワット時の蓄電池の組み合わせだ。発電機の代わりに使うことで、リゾートは電気の最大90%を再生可能エネルギーでまかない、ディーゼル燃料を年に最大100万リットル、二酸化炭素を年に2,000トン以上減らせるとしている。蓄電池と電気の制御の機器はファーウェイが納めた。オーシャン・サンにとっては、岸に近い海で使う、メガワット級の初めての商業用の設備になる。同社の社長は、この技術は高級リゾートだけでなく、ディーゼルより安くてきれいな電気を求めるあらゆる島の課題を解決できる、と述べている。

キャノピー・パワーの社長は、この設備で発電機を1日16〜18時間止められるように設計した、と業界誌に話している。かけたお金は4〜5年で回収できる見込みで、設備は20年以上使える設計だという。

ただし、目標の数字には幅がある。2024年のソネバの発表では「約90%を見込む」とされ、2026年の業界誌の取材では、社長がソネバの目標を75〜80%と説明している。数字は、時点や条件をそろえて読む必要がある。

氷で冷やす、雨をためる

ソネバの2024年6月の発表では、このリゾートに、冷房のための氷をためる仕組みを組み込むとしている。電気を使う時間をずらす工夫や、雨水をためる取り組みも進め、寿命の長い蓄電池や、熱をためる仕組みも検討しているという。

太陽の光は、昼にしか届かない。電気が余る時間に、使い道をずらしてためておく。浮かぶ発電所だけでなく、こうした仕組みを重ねることで、発電機を止められる時間を延ばしていく。

日本の宿に置き換えると

ソネバ・シークレットから学べるのは、置く場所がないから無理だとあきらめず、別の場所と、ため方を探すことだ。日本の宿でも、屋根の太陽光が余る昼の時間に、お湯を沸かしてためておけば、夜や朝に買う電気を減らせる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿を考える。屋根の太陽光の電気のうち、昼に使い切れない分が1日平均20キロワット時あるとする。これを給湯器に回してお湯をためれば、その分だけ買う電気が減る。1キロワット時を30円とすると、1日600円、1年で21万9,000円になる。実際の効果は、設備や季節、料金の契約によって変わる。

持ち帰れる知識

  • 置く場所がないときは、場所の考え方を変えてみる
  • つくる設備と、ためる仕組みを組み合わせる
  • 電気を使う時間をずらすだけでも、使える量は増える
  • 目標の数字は、発表した時点と条件をそろえて読む

宿で考えられること

  • 屋根の太陽光が、昼にどれだけ余っているか調べてみる
  • お湯や冷たさを「ためる」ことで、電気を使う時間をずらせるか考えてみる
  • 設備を入れる前に、何年で元が取れるか試算してみる

事業・予約への接続

ソネバ・シークレットは、ボートでしか行けない隠れ家の滞在を、宿の魅力として伝えている。その静かな海の景色を守りながら電気をまかなう工夫は、自然を大切にする客にとって、ここを選ぶ理由の一つになる。

Sources / 参考情報

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