GOAL 12 · TARGET 12.5 エネルギー・脱炭素 3分 / 2091文字 畑と台所の残りものを、燃料にする #142

シナモンの木を燃やして、お湯を沸かす:スリランカの「ジェットウィング・ライトハウス」が、畑と台所の残りものを燃料に変える方法

スリランカの南西の海岸、古い城塞の町ゴールから北へ3.5キロメートル。インド洋に突き出た岩の岬に、ジェットウィング・ライトハウスというホテルが建つ。スリランカを代表する建築家ジェフリー・バワが、1990年代の終わりに手がけた建物だ。公式サイトによると、芸術家のラキ・セナナヤケやエナ・デ・シルヴァも、この建物づくりに力を注いだ。

このホテルのお湯は、シナモンの木でつくられている。スリランカはシナモンの産地として知られ、畑では、香りのよい樹皮をはいだあとの木が残る。ホテルは、その残りものを燃料にしている。

畑の残りものが、ホテルのお湯になる

公式サイトによると、ホテルの敷地には、シナモンの木を燃料にするボイラーがあり、1日24時間動いている。ボイラーがつくる蒸気は、主にお湯と洗濯に使われる。客室などに送るお湯は、このボイラーだけで、すべて再生可能な燃料でまかなっている。

なぜシナモンなのか。2026年にホテルを取材したイギリスの雑誌に、ホテルの技術者が答えている。主に使うのは、捨てられるシナモンの木だ。熱を出す力が強く、燃やしたあとの灰がとても少ないので、燃料に向いている。木は地元の農家から集めていて、ディーゼル燃料のボイラーは、もしものときの予備にとどめているという。

畑にとってはごみになるはずのものが、ホテルにとっては燃料になる。近くで手に入るので、遠くから燃料を運ぶ手間も減る。料理にも使われていて、プールのそばのピザ窯も、シナモンの木で焼いている。

台所の生ごみが、まかないの火になる

台所から出る食べ残しや調理くずも、捨てずに燃料に変える。公式サイトによると、厨房やレストランから出る生ごみは、毎日、バイオガスをつくる装置に入れられる。生ごみが分解されるときに出るメタンを多く含むガスを、職員の食堂のこんろで使っている。

雑誌の取材では、こうしてつくった燃料が、およそ260人の職員の食事づくりに使われていると紹介されている。客の目にふれない場所で、ホテルの残りものが、働く人の毎日の食事を支えている。

太陽光、水、庭も、ホテルの中で回す

屋根には、太陽光パネルもある。公式サイトによると、2017年に125キロワット分を設け、2024年に75キロワット分を加えた。合わせて、ホテルの電気の最大10%をまかなうとしている。一方、2026年の雑誌の取材では、総支配人が「太陽光は今、電気の約25%をまかなっている」と話している。数字は、時点や計算の仕方によって違って見える。総支配人は、お金の節約も大切だが、取り組みそのものがもっと大切だと考えている、とも語っている。

水も、ホテルの中で回している。敷地で出る排水はすべて処理して、庭の水やりに使う。処理のあとに残る泥や、庭の落ち葉や刈った枝は、土を豊かにする肥料に変えて庭に戻す。

飲み水は、敷地の中の小さな工場で、ガラスびんに詰めている。使い終えたコンテナを再利用した建物で、専用の太陽光パネルで動き、1日に最大2,000リットルを詰められる。びんは洗って何度も使う。ホテルの菜園で育てた野菜は、主に職員の食堂で使われる。

町の子どもたちと、海

ジェットウィングは、創業者ハーバート・クーレイの考えのもと、50年以上にわたって持続可能な観光に取り組んできたとしている。2004年の津波のあと、ホテルはほかの団体と協力して、地域の人が使えるプールをつくった。地元の子どもたちは、コーチから無料で泳ぎを習い続けている。総支配人は、雑誌の取材に、これまで1万人をはるかに超える子どもが泳げるようになったとの見方を示している。

ホテルの中には、クジラやイルカについて学べる場所もあり、客や地元の子どもたちに海の生き物のことを伝えている。近くの若者には、観光や接客、語学を無料で学べる研修の場を開き、研修を終えた人は、望めばホテルで働くこともできる。客の案内や送迎は、地元のトゥクトゥクの運転手たちが担っている。

食材も、なるべく近くから集める。ジェットウィングは、スリランカで初めて、果物や野菜、魚介をすべて地元産にしたホテルの会社だとしている。雑誌の取材でも、魚は近くの漁師から、野菜は地域の農家から仕入れていると紹介されている。

日本の宿に置き換えると

ジェットウィング・ライトハウスから学べるのは、「捨てるもの」と「買っている燃料」を、同じ表の上に並べて見ることだ。日本の地域にも、果樹の剪定した枝や、製材所の木くず、竹など、使い道を探している残りものがある。宿の厨房の生ごみも、堆肥やバイオガスに変えられれば、ごみの量そのものが減る。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%の宿を考える。年に5,110室泊で、1室泊あたり0.5キログラムの生ごみが出るとすると、年に2,555キログラムになる。処理を頼む費用を1キログラムあたり40円とすると、年に10万2,200円だ。このうち半分を敷地で堆肥にできれば、年に5万1,100円分の処理費と、同じだけのごみを運ぶ手間が減る。

持ち帰れる知識

  • 地域の「捨てるもの」が、宿の燃料になることがある
  • 燃料に向くかどうかは、熱の強さや灰の量で確かめる
  • 客の目にふれない場所でも、循環はつくれる
  • 同じ設備の数字でも、時点と計算の仕方をそろえて伝える

宿で考えられること

  • 宿の厨房から、1日にどれだけ生ごみが出ているか量ってみる
  • 地域の農家や製材所で、使い道のない残りものがないか聞いてみる
  • 生ごみを堆肥にして、宿の庭や近くの畑で使えるか考えてみる

事業・予約への接続

ジェットウィング・ライトハウスは、バワの建築とインド洋の眺めを、ホテルの魅力として伝えている。そのお湯や食事が地域の残りものでまかなわれていると知ることは、客にとって、この土地の暮らしにふれる体験の一つになる。

Sources / 参考情報

  • Jetwing Hotels(英文) - ジェットウィング・ライトハウスの持続可能性(公式サイト)
    裏付け: 創業者ハーバート・クーレイの考えで50年以上、太陽光は2017年に125キロワット・2024年に75キロワットを追加し合わせて電気の最大10%、シナモンの木のボイラーを24時間動かしお湯と洗濯の蒸気、お湯はすべて再生可能な燃料で、排水をすべて処理して庭の水やり・泥は土を豊かにする材料、庭の落ち葉や枝を堆肥に、生ごみを毎日バイオガスの装置へ入れ職員の食堂のこんろに、クジラやイルカの情報センター、津波のあとの地域のプールと無料の水泳教室、びん詰めの工場は1日最大2,000リットル・コンテナを再利用・専用の太陽光、菜園の野菜は主に職員の食堂へ、若者のための無料の研修、地元のトゥクトゥクの運転手、スリランカで初めて果物・野菜・魚介をすべて地元産にしたホテルの会社
  • Luxury Lifestyle Magazine(英文) - ホテル紹介:スリランカ・ゴールのジェットウィング・ライトハウス(2026年9月)
    裏付け: ゴールの城塞から北へ3.5キロメートル、岩の岬、バワの1990年代の終わりの代表作、総支配人「太陽光は今、電気の約25%」「節約も大切だが取り組みそのものがもっと大切」、技術者「捨てられるシナモンの木は熱を出す力が強く灰が少ない」、地元の農家から集める、ディーゼル燃料のボイラーは予備、生ごみからおよそ260人の職員の食事の燃料、びんの飲み水を繰り返し使う、魚は近くの漁師から・野菜は地域の農家から、ピザ窯もシナモンの木、1万人をはるかに超える子どもが泳げるようになった(総支配人の見方)
  • Jetwing Hotels(英文) - ジェットウィング・ライトハウス(公式サイト)
    裏付け: インド洋を見下ろす丘、ジェフリー・バワの代表作、ラキ・セナナヤケやエナ・デ・シルヴァも力を注いだ

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