1泊ごとに、浜のごみを約1キロ拾う:ハワイの「SCPヒロ・ホテル」が、泊まることと海の掃除をつなぐ方法
ハワイ島の東側、ヒロ湾のそばに、SCPヒロ・ホテルがある。今の客室は128室。ホテルを運営するソウル・コミュニティ・プラネット(SCP)は、健康と地域と地球への配慮を柱にしたホテルの会社で、2020年6月に、このホテルをSCPヒロ・ホテルとして開業した。
このホテルでは、客が1泊するごとに、ハワイ島の浜から、海のごみがおよそ2.2ポンド、約1キログラム取り除かれる。泊まることと、浜をきれいにすることが、一つの数字で結びついている。
太平洋のごみが、ハワイの浜に集まる
なぜハワイの浜なのか。SCPの2020年6月の発表によると、ハワイ諸島の一部の浜は、北太平洋の高気圧と海流の影響で、ふるいのように、漂うごみを受け止めてしまう。北太平洋には、太平洋の周りじゅうからごみが集まる「太平洋ごみベルト」と呼ばれる海域があり、そこから流れてくるごみが、ハワイ島の人里離れた南の浜に打ち上げられる。
SCPの共同創業者で最高経営責任者のケン・クルーズは、こうしたごみの8割以上は、島の外で出た日用品のごみだと話している。そのうえで、浜の掃除は症状の手当てであって、原因を断つことではないとも認めている。それでも、浜をきれいに保ちながら、使い捨ての暮らしが遠くの海にまで及ぼす影響を知ってもらい、変わるきっかけにしたい、という。
1泊のごみと、同じ重さを海から
この取り組みは「プリスティン・マカイ」と呼ばれる。マカイは、ハワイの言葉で「海のほう」を意味する。ホテルは、地元の自然保護団体ハワイ・ワイルドライフ・ファンドと組んでいる。
発表によると、1泊ごとに団体が回収する海のごみの量、2.2ポンドには理由がある。ふつうのホテルに泊まると、1日に出る日用品のごみが、およそそのくらいになるからだ。客が1泊で出すごみと同じ重さのごみを、海から取り除くという考え方になっている。
旅の雑誌コンデナスト・トラベラーによると、ホテルは客が1泊するごとに、団体に1ドルを寄付する。そのお金で、団体の職員やボランティアが、およそ2.2ポンドのごみを取り除く。団体は、ハワイ島の海岸から、年に推定15〜20トンのプラスチックなどのごみを回収する活動を続けていて、ホテルの寄付はその一部を支えている。団体の代表は、こうした協力があるからこそ、保全の仕事を続けられ、ごみをなくすという長い目標にも近づけると話している。
使い捨てを減らし、数字で確かめる
ホテルの中でも、ごみを出さない工夫を重ねている。コンデナスト・トラベラーによると、浴室の使い捨てのプラスチックをなくし、水を入れられる給水所を置いて、客に自分のボトルを使うよう呼びかけている。開放的なロビーには、古材でつくった椅子が並び、地元の食品を扱う売店がある。太陽光パネルは、10メガワット時を超える電気をつくるという。
取り組みを外の目で確かめる仕組みも取り入れた。SCPの2022年5月の発表によると、観光の環境への影響を測る国際的な認証機関アースチェックと組み、エネルギーや水の使用、ごみ、地域への貢献を数字で測り始めた。SCPヒロ・ホテルは、ハワイで初めてアースチェックの測定を受けたホテルになり、エネルギーの使用量や温室効果ガス、地域への貢献で、地域の先頭に立つと評価された。公式サイトでは、ハワイで初めてシルバーの評価を受けたとしている。
同じ発表では、使い捨てのペットボトルや、浴室のプラスチックの容器をなくすことも、SCPの約束として挙げている。ヒロでは460万ドルをかけた改装で、太陽光パネルや電気自動車の充電設備を取り入れるとしていた。
1泊ごとに、ほかの善いことも
ホテルは、土地の文化にふれる場も用意している。公式サイトによると、持続可能な農園を訪ねるツアーや、レイづくり、ココナッツの試食などの体験がある。館内のあちこちには、ハワイの言葉で「幸せとは、親切であること」といった言葉が掲げられている。
1泊ごとの寄付は、海のごみだけではない。2020年の発表によると、1泊ごとに、思春期の子どもの心の健康を支える団体、重い病気の子どもを看病する家族を支える団体、木を植える団体にも、それぞれ寄付をする。SCPは、会社の利益の5%を、考え方を同じくする活動に寄付するとしている。
日本の宿に置き換えると
SCPヒロ・ホテルから学べるのは、宿の取り組みを「1泊あたり」の単位に置き換えて、客に伝えることだ。「泊まるたびに、浜のごみが約1キロ減る」と言われれば、客は自分の滞在が何につながるかを思い浮かべやすい。日本の宿でも、地元の浜の清掃や、川の掃除をしている団体と組む形が考えられる。
InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室・稼働率70%の宿を考える。年に5,110室泊で、1室泊ごとに150円を、地元の浜の清掃を続ける団体に寄付するとすると、年に76万6,500円になる。寄付の額だけでなく、団体と相談して、そのお金でどれだけの浜を掃除できるかを数字にしておくと、客に伝えやすくなる。
持ち帰れる知識
- 宿の取り組みを「1泊あたり」の単位に置き換える
- その数字を選んだ理由も、あわせて伝える
- 掃除は対症療法だと認め、ごみを出さない工夫も続ける
- 外の認証で、取り組みを数字で確かめる
宿で考えられること
- 宿の近くで、浜や川の清掃を続けている団体を探してみる
- 1泊あたりで、どんな善いことにつなげられるか考えてみる
- 客室の使い捨ての品を、一つ減らせないか見直してみる
事業・予約への接続
SCPヒロ・ホテルは、「泊まるたびに善いことが起きる」ことを、ホテルの魅力として伝えている。自分の1泊が浜のごみ約1キロ分につながるとわかることは、自然を大切にする客にとって、このホテルを選ぶ理由の一つになる。
Sources / 参考情報
- SCP Hotels(英文) - SCPヒロ・ホテルが、ハワイ・ワイルドライフ・ファンドと組んで浜を守る(公式サイト、2020年6月4日)
裏付け: 開業を記念してプリスティン・マカイを開始、1泊ごとに団体が約2.2ポンドの海のごみを南の浜から回収、2.2ポンドはふつうのホテルの滞在で1日に出る日用品のごみの量、団体は年に推定15〜20トン、北太平洋の高気圧と海流で浜がふるいのように、太平洋ごみベルト、8割以上は島の外の日用品のごみ、掃除は症状の手当て(ケン・クルーズ)、団体の代表の話、1泊ごとに3つの団体へ寄付、利益の5%を寄付 - Condé Nast Traveler(英文) - SCPヒロ・ホテル(ホテル紹介)
裏付け: 1泊ごとに1ドルを団体に寄付し約2.2ポンドのごみを取り除く、浴室の使い捨てのプラスチックをなくし給水所、古材の椅子の開放的なロビー、地元の食品の売店、館内にハワイの言葉で「幸せとは、親切であること」、太陽光パネルで10メガワット時超 - SCP Hotels(英文) - SCPホテルズがアースチェックの認証を導入(報道発表、2022年5月)
裏付け: アースチェックと組み測定と認証の2段階、ハワイで初めて測定を受けたホテル、ブロンズの評価、エネルギーの使用量・温室効果ガス・地域への貢献で地域の先頭、使い捨てのペットボトルと浴室のプラスチックの容器をなくす、460万ドルの改装で太陽光と電気自動車の充電設備 - SCP Hotels(英文) - SCPヒロ・ホテル(公式サイト)
裏付け: 128室、1泊ごとに浜から2.2ポンドのごみ、農園のツアー・レイづくり・ココナッツの試食、ハワイで初めてアースチェックのシルバーの評価