GOAL 15 · TARGET 15.5 自然・生物多様性・保全 4分 / 2122文字 宿を、湿地から外せる形でつくる #146

建物の下を、動物が通れるように:ボツワナの「ベインズ・ロッジ」が、20年後に跡を残さず外せる宿に建て直した理由

アフリカ南部のボツワナに、オカバンゴ・デルタという大きな湿地がある。カラハリ砂漠のはずれに、川の水が広がってできた、世界でいちばん大きな内陸のデルタで、ユネスコの世界遺産にもなっている。その中を流れるボロ川の氾濫原、モレミ動物保護区のすぐそばに、ベインズ・ロッジが建つ。

客室はわずか6室で、泊まれるのは最大12人。サファリの宿を運営するアバクロンビー&ケント(A&K)の宿の中で、いちばん小さい。名前は、南部アフリカの自然を水彩画で初めて世界に伝えた、19世紀の探検家で画家のトーマス・ベインズにちなむ。宿は2025年に、すべてを建て直して再び開業した。建て直しで大切にされたのは、湿地の自然をなるべく傷つけないことだった。

動物の通り道と、シロアリの塚を残す

宿があるのは、約26万エーカー、およそ1,050平方キロメートルの私有の保護区の中だ。A&Kによると、この保護区の豊かな動植物は、隣のモレミ動物保護区から地続きで広がっている。宿からも、ゾウやバッファローの姿が見えるという。A&Kによると、デルタの草原は季節ごとに水につかり、5月から9月には、水路と潟と森の島がつながる、約5,800平方マイル(約1万5,000平方キロメートル)の水の世界に変わる。宿は、その水が行き来する土地の上に建っている。

旅の雑誌ビジネス・トラベラーの2026年9月の記事によると、新しい宿は、もとからある生き物の動き方に合わせて建てられた。動物が移動する通り道や、シロアリの塚を残し、その周りに建物を置いている。6つのスイートと共用の建物は、支柱で地面から持ち上げられ、木の通路でつながる。A&Kの公式サイトによると、スイートは、室内が61平方メートル、屋外のデッキが58平方メートルと、外の広さが内とほぼ同じで、湿地を間近に感じられる。ラウンジや売店などの共用の場所は、今は使われていないシロアリの塚を囲むように配置されている。

20年後に、跡を残さず外せる木

建て直しで選ばれた材料にも、考え方が表れている。A&Kの発表によると、宿全体に使われた木材は、持続可能な方法で調達された熱処理木材(ルナウッド)だ。軽くて丈夫で、20年後には跡を残さずに取り外せるという。ビジネス・トラベラーは、この木材がFSC認証の熱処理木材であり、建物はコンクリートを使わない軽い構造で、湿地を傷めずに分解して運び出せると伝えている。

古い建物も、ごみにはしなかった。もとのロッジの木材は回収され、新しい宿のあちこちで使い直されている。屋根の大きな張り出しや、地元でふいた草ぶき屋根が日陰をつくり、自然に風を通す設計が、使うエネルギーを減らす。電気は太陽光で、A&Kの公式サイトは、建て直し後は100%太陽光で動いているとしている。ビジネス・トラベラーによると、排水も宿の中で処理している。

職人の手と、地元のガイド

宿の内装は、ラグジュアリー・フロンティアーズという設計会社と組んでつくられた。考え方は「アフリカのパビリオン・ギャラリー」で、壁ではなく柱で空間を区切り、窓から見える湿地の景色を、絵のように見せる。

A&Kの発表によると、バーの天井は、南アフリカの職人集団ダリウェが手で編んだもので、シロアリの塚の内側を写し、紺色の糸がデルタの水の流れを表す。彫られた木の模様は、ゾウの皮膚の質感を思わせる。家具のほとんどは、この宿のための特注だ。ビジネス・トラベラーによると、地元の職人を育てて雇い、内装の一部をつくってもらった。

自然を学ぶ場所もある。「探検家のラウンジ」には、顕微鏡や望遠鏡、地図、本がそろい、客にはチェックインのときに双眼鏡が渡される。部屋のデッキからも、動物や鳥を観察できる。

案内役も地元の人だ。A&Kの公式サイトによると、客には滞在中ずっと同じガイドがつく。ガイドは、デルタに暮らす民族の一つ、バイエイの人だ。サファリの車は、ふつうの6人乗りではなく4人乗りにしている。私有の保護区なので、歩いて動物を探すサファリや、夜のサファリもできる。

こうした取り組みは、外からも評価された。2026年の「サステナビリティ・イン・デザイン賞」で、ベインズ・ロッジは新しいブティックホテルの部門で最優秀に選ばれ、設計を担ったラグジュアリー・フロンティアーズは、その年のデザインスタジオに選ばれた。

日本の宿に置き換えると

ベインズ・ロッジから学べるのは、建て替えを、自然と古い建物の両方を生かす機会にすることだ。木を切らずに済む場所に建て、もとの建物の木材を使い直し、将来は外して土地を元に戻せる形を選ぶ。日本の宿でも、離れや客室を建て替えるときに、敷地の古い木や、生き物の通り道を残せないか考えられる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、客室棟の建て替えで、古い建物から再利用できる木材が10立方メートルあり、同じ量の新しい木材を買うと1立方メートルあたり10万円かかるとする。使い直せば、新しい木材の購入を100万円減らせる。実際の額は木の状態や加工の手間で変わるため、解体の前に、使える木材を職人と一緒に確かめておくとよい。

持ち帰れる知識

  • 建物は、生き物の通り道を避けて置く
  • 将来、外して土地を元に戻せる形を選ぶ
  • 建て替えのとき、古い建物の木材を使い直す
  • 地元の職人やガイドに、宿づくりの役割を任せる

宿で考えられること

  • 敷地の中で、生き物が通る場所や古い木を書き出してみる
  • 次の建て替えで、使い直せる木材や建具がないか確かめてみる
  • 内装の一部を、地元の職人に頼めないか相談してみる

事業・予約への接続

ベインズ・ロッジは、6室だけの小さな宿であることと、湿地の自然を傷つけない建て方を、合わせて伝えている。動物が建物の下を通る宿に泊まることは、自然を大切にする客にとって、この宿を選ぶ理由の一つになる。

Sources / 参考情報

  • Abercrombie & Kent(英文) - ベインズ・ロッジ、すべてを建て直して開業(報道発表)
    裏付け: 6室でA&Kの宿でいちばん小さい、トーマス・ベインズにちなむ、ボロ川の氾濫原でモレミ動物保護区のそば、ラグジュアリー・フロンティアーズと組む、「アフリカのパビリオン・ギャラリー」、柱で区切る、支柱で持ち上げ木の通路でつなぐ、バーの天井はダリウェの職人が編みシロアリの塚の内側を写す、ゾウの皮膚の模様、もとのロッジの木材を使い直す、家具のほとんどが特注、ルナウッドは軽く丈夫で20年後に跡を残さず外せる、自然の換気と太陽光、私有の保護区で歩くサファリと夜のサファリ
  • Abercrombie & Kent(英文) - ベインズ・ロッジ(公式サイト)
    裏付け: 2025年にすべてを建て直し100%太陽光、世界遺産で世界最大の内陸のデルタ、26万エーカーの私有の保護区、共用の場所は使われていないシロアリの塚を囲む、地元の工芸品の売店、大きな張り出しと地元の草ぶき屋根、4人乗りの車、滞在中ずっと同じバイエイのガイド、最大12人
  • Business Traveller(英文) - 「グリーンウォッシュ」ではない、持続可能なホテル8選(2026年9月)
    裏付け: もとからある生き物の動き方、動物の通り道とシロアリの塚に合わせて建てる、送電網につながず太陽光・排水処理・自然の冷却、前のロッジの木材とFSC認証の熱処理木材、コンクリートを使わない軽い構造で湿地を傷めず分解して運び出せる、地元の職人を育てて雇う、2026年サステナビリティ・イン・デザイン賞で新しいブティックホテル部門の最優秀とデザインスタジオ・オブ・ザ・イヤー

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