GOAL 7 · TARGET 7.2 エネルギー・脱炭素 4分 / 2106文字 熱をためない建物と、太陽の電気を組み合わせる #147

砂漠のリゾートの電気を、太陽だけで:サウジアラビアの「シックスセンシズ・サザン・デューンズ」が、石とコンクリートを避けた理由

サウジアラビアの紅海沿岸で、「レッドシー」と呼ばれる大きな観光地の開発が進んでいる。開発を担うのは、政府系の開発会社レッドシー・グローバルだ。その中で、2023年に最初に開業したリゾートが、シックスセンシズ・サザン・デューンズだ。

海から内陸に入った、砂丘と涸れ谷(ワジ)を見渡す場所に、客室とスイートが36室、プール付きのヴィラが40棟ある。設計はイギリスの建築事務所フォスター+パートナーズで、この地にかつて暮らしたナバテア人の文化に敬意を払った形にしている。暑い砂漠で、このリゾートは電気をすべて太陽光でまかなう。

砂漠で、熱をためない建物にする

砂漠の建物というと、厚い石の壁を思い浮かべるかもしれない。だが、このリゾートは逆を選んだ。レッドシー・グローバルの説明によると、フォスター+パートナーズは、石やコンクリートのように熱を吸ってためこむ重い材料を避け、シンプルで軽い材料を使った。熱をためこむ材料は、日が沈んだあとも熱を放ち続けるため、冷房に頼る時間が長くなりやすい。目的は、人工的な冷房への依存を減らすことだった。

軽い材料は組み立てやすく、部材は現場の外でつくってから運び込んだ。そのぶん工事が早く進み、建てる過程そのものも、エネルギーの効率がよくなったという。ヴィラは周りの砂丘を生かすように2列に並ぶ。

リゾートの中心は「オアシス」と呼ばれる建物で、砂漠の花をかたどった屋根が、自分の下に日陰をつくる。シックスセンシズの2023年の開業の発表によると、客室は地元で調達した材料でつくられ、布の色や柄は、ベドウィンの伝統的な衣装から取っている。

電気は、太陽の発電所から

シックスセンシズの発表では、リゾートの電気は、すべて自前の太陽光発電所でまかなわれる。ホテル業界誌ホテリエ・ミドルイーストの2024年9月の記事も、レッドシーで新たに認証を受けた建物は、観光地全体の再生可能エネルギーの設備につながり、すべて太陽光で動いていると伝えている。

その設備の規模は大きい。レッドシー・グローバルの担当者が2023年9月に業界誌リニューアブル・エナジー・マガジンに語ったところでは、開発の第1期のために5つの太陽光発電所が完成し、76万枚の太陽光パネルが並ぶ。国の送電網にはつながず、1,200メガワット時をためられる、世界でも最大級の蓄電の設備をつくっているという。昼の太陽の電気をためて、夜も使うためだ。観光地の中を走る乗り物も電気自動車にし、再生可能エネルギーで充電する計画で、専用の空港も再生可能エネルギーだけで動かすという。ホテリエ・ミドルイーストによると、第1期だけで、年に57万5,000トンの二酸化炭素の排出を防ぐ見込みだ。

サウジアラビアで初めてのLEEDプラチナ

建物の環境性能は、外の認証でも確かめられた。レッドシー・グローバルの最高経営責任者ジョン・パガーノは、開発や建設の担当者が、あらゆる段階で持続可能性の担当者と組み、設計の図面を細かく確かめ、工事の間も協力してきたと話している。ホテリエ・ミドルイーストによると、このリゾートは、アメリカの環境認証LEEDで、ホテルの部門の最高ランク「プラチナ」を取得し、2023年の開業時に、サウジアラビアで初めてLEEDプラチナを取ったホテルになった。認証を受けた建物には、建物の形で暑さをしのぐ工夫や、効率のよい設備、水を節約する工夫などがあり、処理した下水は庭の水やりに使われているという。2024年7月には、アメリカのグリーンビルディング協会が、LEEDに強く取り組む開発会社の一覧にレッドシー・グローバルを選び、アメリカ以外の開発会社はレッドシー・グローバルだけだった。

運営の工夫も重ねている。シックスセンシズの発表によると、飲み水は、炭酸のあるものもないものも、敷地の中の設備で瓶に詰め、プラスチックを使わない方針をとる。料理には、シェフの菜園で育てた野菜や、地元の食材を使う。「アース・ラボ」と呼ばれる場所では、自然を守ることを、遊びながら学べるワークショップを開いている。サドゥと呼ばれる伝統の織物や、地元の漁や料理を体験でき、敷地の中の「職人の村」では、この地の工芸や踊り、音楽を紹介している。

日本の宿に置き換えると

このリゾートから学べるのは、電気を太陽でつくる前に、まず使う電気を減らす建物にしていることだ。熱をためない材料を選び、日陰をつくる屋根を設け、そのうえで太陽光でまかなう。日本の宿でも、夏の西日が当たる窓にひさしやすだれを足す、屋根の断熱を見直す、といった工夫で冷房の負担を減らしてから、太陽光パネルを考える順番がとれる。

InnBuddyシミュレーション(以下はすべて仮定)として、20室の宿の屋根に30キロワットの太陽光パネルを載せ、1キロワットあたり年に1,100キロワット時を発電するとする。年に3万3,000キロワット時で、電気を1キロワット時30円で買っているなら、99万円分の電気を自分でつくれる計算になる。先に冷房の負担を減らしておけば、同じパネルでまかなえる割合が大きくなる。

持ち帰れる知識

  • 電気をつくる前に、使う電気を減らす建物にする
  • 暑い土地では、熱をためない材料と日陰を組み合わせる
  • 昼の太陽の電気を、ためて夜に使う
  • 外の認証で、建物の性能を確かめる

宿で考えられること

  • 夏に暑くなる部屋と、その原因になっている窓や屋根を調べてみる
  • ひさしやすだれ、断熱で、冷房の負担を減らせないか考えてみる
  • 屋根に太陽光パネルを載せられる面積を、測ってみる

事業・予約への接続

シックスセンシズ・サザン・デューンズは、太陽の電気で動くことと、ナバテアやベドウィンの文化を映した建物を、合わせて伝えている。砂漠の暑さの中でも、環境に負担をかけずに過ごせることは、このリゾートを選ぶ理由の一つになる。

Sources / 参考情報

  • Six Senses(英文) - シックスセンシズ・サザン・デューンズ、サウジアラビアで正式に開業(報道発表、2023年)
    裏付け: 客室36室とプール付きヴィラ40棟、砂丘とワジの眺め、地元で調達した材料、フォスター+パートナーズ、ベドウィンの衣装の色と柄、サウジアラビアで初めてのLEEDプラチナのリゾートを目指す、電気はすべて自前の太陽光発電所、飲み水を敷地の設備で瓶に詰めプラスチックを使わない、アース・ラボ、シェフの菜園と地元の食材、サドゥの織物・漁・料理、職人の村
  • Red Sea Global(英文) - シックスセンシズ・サザン・デューンズ(公式サイト)
    裏付け: 2023年にレッドシーで最初に開業、36室と40棟、フォスター+パートナーズ、ナバテアの文化、ヴィラは砂丘を生かして2列、オアシスは砂漠の花の形で自分に日陰をつくる屋根、熱をためる石やコンクリートを避け軽い材料で人工の冷房への依存を減らす、部材を現場の外でつくり工事を早める
  • Hotelier Middle East(英文) - レッドシー・グローバルの7つの物件がLEED認証を取得(2024年9月)
    裏付け: LEED v4 BD+C ホテル部門でプラチナ、2023年の開業時にサウジアラビアで初めてLEEDプラチナのホテル、建物の形で暑さをしのぐ工夫・効率のよい設備・水の節約、処理した下水を水やりに使う、観光地の再生可能エネルギーの設備につながりすべて太陽光、第1期で年57万5,000トンの二酸化炭素を防ぐ見込み
  • Renewable Energy Magazine(英文) - 紅海のそばのクリーンなエネルギー:レッドシー・グローバルの担当者に聞く(2023年9月)
    裏付け: 第1期の5つの太陽光発電所が完成し76万枚のパネル、国の送電網につながない、1,200メガワット時をためられる世界最大級の送電網から独立した蓄電の設備、昼も夜も太陽の電気で動かす

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